Chapter6-4
「ではお聞きしましょう、それ以外は?」
「さすが断己くんね……ズバリあなた自身よ!!」
この瞬間、断己は本気で焦っていた。遂に自分の正体がバレたのではないだろうかと、いくら察しの悪い洸でも自分の正体や胡散臭さに気付いたのかもしれないと、少なくとも逆の立場なら自分は気付く。
「まさか俺自身とは……バレたのですか?」
「ええ、バレバレよ、と言うよりも問い合わせて分かったわ!!」
そう、問い合わせて分かった……ん? 何に問い合わせた、いやいや問い合わせて俺の正体とか分からないし悪の秘密結社ERRORは世界の半分を手中に収めている組織だよ。今なら某有名RPGのドラゴンの王と同じで『世界の半分をやろう』とか言えるんだよと混乱しまくる断己だった。
「断己くん、君は私に友達以上恋人未満の関係の私にウソをついてる!!」
「はいダウト!! 勝手に友達以上恋人未満にしないで下さい!! 教師と生徒の関係です!!」
それはそれで禁断の関係よねPTAにチクってやると言う律果と、その頭をスパンと叩いてる涼子の動きが中々面白かったが洸のさらなる発言が追い打ちをかけて来た。
「ふっ、ウソの方は訂正しないのね!! そういう正直なとこ大好きよ」
「俺はハッキリしない所は好きじゃないですね……では答えをどうぞ!!」
「あなた……本当はNASOTOカンパニーの上級研究員なんですってね!! インターンの研究生なんて嘘だったのね!! まさかの年収800万!!」
◆
今さらながら断己の表向きの立場はNASOTOカンパニーのインターンとなっている、これは日本の高校に通わせるための配慮だと表向きにはなっている。米国では実際は上級研究員だけど日本の高校に通わせるためにという、その特殊性に目を向けさせる事でERRORとの関係性から目を反らす目的があった。
(そっちかぁ……俺のダミーの研究員の方か、てか父さん俺の給料そんなに高く設定してるんだ、もらってないぞ)
一瞬、800万、約7万ドルなんて貰っていないと思ったが、それ以上の金をかけて鎧を作ってるんだから当然かとも思ってしまう断己だった。
「えっ、先輩って凄いお金持ち……なんですね」
「キャー断己せんぱ~い、私、急に先輩が好きなってきたかも~」
お金の前にはJKだろうが最強の変身ヒロインだろうが平等に弱い。これが資本主義か、やっぱり凄いよマルクスとエンゲルスなんて思いながらメリアの方を見ると彼女にはそもそも謎が有った。
「花音、800万円とは何ドルなんだ? 分からないぞ」
「えっと1ドルが……今はいくらだっけ……え~っと」
花音がいつまでも悩んでメリアの質問に答えられないので思わず断己が答えてしまっていた。
「だいたい、アンチマテリアルライフル六丁分だ!!」
「おお、そんなに大金なのか……つまりM4A1が50丁近く……凄いな」
悲しいかな銃換算されていくのは育って来た環境ゆえなのかもしれない。メリアは向こうで銃と一緒に育ったと言っても過言では無いからだ。
「それにあなたの研究テーマって繊維とかなんでしょ? なら私たちのパワーアップも出来ると思うのよ、最悪の場合は戦い方とか敵の分析だけでも良いのよ」
「いやいや、確かに俺はそれなりの地位には居ますけど、さすがに正義のヒロインに協力なんて出来ませんよ俺はただの研究職で……」
ここで情報を得るために『喜んで協力しましょう』なんて有り得るだろうか、いやない。確かに断己は博士課程を飛び級で取った本物の天才だが逆に言えばそれだけだ。それ以外は普通の17歳で危険な戦闘に協力なんて普通はしないだろう。
「そこを何とか私たちのために!!」
「その前に先生……いいですか?」
「何かしら断己くん?」
「ここの部員は全員がステプレではないのですか?」
その瞬間、部室が完全に固まった。
◆
「なっ、なななななに言ってるんですか!? 夜剱先輩!!」
ただただバレバレで動揺するのが咲野花音、こいつは恐らくはステラ・フィオーレだろう喋り方が丁寧でさり気なくリーダーシップを取っているとこなんて、そのままだと断己は冷静に分析する。
「そ、そうよそうよ、私たちがあんな可憐で可愛くて誰からも好かれる正義のヒロイン、特に二番目のポジションの子が可愛いチームなんて有る訳ないじゃない!!」
そして次に森野律果、こいつは髪型も変わらないが髪の色だけ金髪に、目を緑色にすれば、そのままステラ・プロメッサだろう。何より戦闘時の言動から自分が一番可愛いなどと、のたまうのはコイツくらいだ。
「ちょっとプロメッサ、そんな事言ったら自分だって言ってるのがバレバレじゃないの!!」
そしてこうなると後は消去法だ。まず律果の事をプロメッサと言っている時点で違う。さらに、しっかり者ながらもボロを出しやすく油断もしやすいのは断己が初戦で戦った時と同じ印象で、だからステラ・アウローラは涼子だと推測した。
「そういう涼子もプロメッサと言っているがそれは良いのか……あっ!?」
そして一番驚いたのはこいつステラ・リコルド、そもそも元四天王でも断己はメリアの本名も顔も知らなかった。これも他の四天王に恣意的に隠された情報なのだが思わぬ形でゲット出来た情報だと断己は内心ニヤリと笑っていた。
「そして何よりですね……洸先生だ」
「私? 私が何なのよ断己くん……」
「少なくとも二回以上は『私たち』と言っています、ステプレを主語にするでもなく自分だけを主語にしないで何度も『私たち』という言葉使っているんです」
つまり洸自身が自分を含めた部室にいるメンバーが一人ないし最大四人が自分と同じステプレであると自白していたようなものなのだ。ここまでを一気に推理した断己は最後にこう言った。
「以上のことから推察するにあなた達メンバー四人、天文部は顧問も含めて全員がステプレであると考えました、違いますか?」
「ふっふっふ……さすが天才児ねMITね博士号ね……どうしよう困ったわ何も言い返せないわ!!」
そして敵の総大将は真っ先に敗北を認めていた。もう少し粘る気は無いのだろうかと本気で頭が痛くなったが、これが洸クオリティなのだと断己は頭のどこかで納得してしまっていた。
「ちょっと~、ひかりんマズイよ、ひかりんみたいなベテランは良いけど私たちみたいな新人は一人のとこ狙われたらお終いなんだよ!!」
「律果そんな弱気で……私は、いざとなったら一人でも!!」
自分達の正体バレほど恐ろしいものはない。彼女たちステプレが変身して自分の容姿を変えて戦うのは何も純粋な戦闘力を上げるだけでは無く律果が言ったように敵サイドから特定して攻撃されるという事態を防ぐ事にも繋がるからだ。
「ええ、そうね……困ったわね……どうしましょうか? 年収800万か17歳でこれなら将来は夢の八桁万円!!」
「うっわ、明らかに金に流れてるわこのアラサー女教師!! 生徒の安全と逆玉どっちが大事なのよ!!」
「そ~んなの将来の明るい家族計画に決まってんでしょ~!!」
凄まじい正論パンチが律果から飛び出すが洸はそれどころじゃない様子でニヤニヤしていた。アラサーは逆転劇がお好きなのだ。
「どうしましょうかじゃないです先生~!! このままじゃ私、私……」
そんな二人を尻目に急に花音ことフィオーレが声を詰まらせた。今さらながら自分の立場の危うさを知って恐怖がこみ上げて来たのかと同情した断己だったが彼女の懸念はもっと別な所に有った。
「私、この間の戦いで新聞にパンツ丸出しの写真撮られてしまったんです!! このままじゃパンツと一緒に私も特定されちゃいます!!」
断己は最初に彼女達を倒した時を思い出していた。今思えば自分が一番輝いていたのはあの時だった。あの時は洸の存在を知らず、正体が分かった目の前の四人を圧倒して来日と同時に世界征服出来ると短い夢を見た。
(それが、目の前で¥マークを浮かべて見ている八重樫洸と出会ってからというもの……俺の計画は狂いっぱなしだ)
「ふむ、ならば簡単だ皆、聞いてくれ」
「えっ? リコルド、もしかして何かいい案が思いついたのですか私のパンツは大丈夫なんですか!?」
リコルドが発言しようと瞬間、断己はニヤリと洸の口角が上がったのを見た。そして天才と言われながらも既に自分が逆王手をかけられている事に全く気付いていなかったのである。
「先輩に頼んで仲間になってもらおう、そしてアンチマテリアルライフル六丁分のお金も手に入れるんだ!!」
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