Chapter6-3
◆
「ふぅ、断己くん、どうぞ座って」
「いや……その、さすがに……これは」
断己は普段から毅然とした態度は崩さないし我関せずと言ったマイペースな所もある天才だが目の前の光景には憐憫と同情の念が堪えなかった。
「何か問題が?」
目の前の洸は足を組み替え満足そうにしているが目が笑ってない。これは圧が強過ぎて断己でも口をつぐむ程だが、さらに問題なのは現在部室の端に正座をさせられている三人の少女達だった。
「まさか洸先生のだったなんて……本当にすいませんでした、それとメリアの感想は美味しかったそうです」
「迂闊でした……言葉も有りません」
「私は今日は涼子が良い物あるぞって言うから食べただけだもん悪くないよ!!」
一名を除いて反省はしているようだがステプレはチームで連帯責任だ。皆も一人も星の皆のためにがモットーなのだ。
「まだ反省が足りないようね……特に律果、選ばせてあげるわ、フェリチータの電撃とプリギエーラの氷、どっちが好きかしら~?」
「電撃はもういやぁ……いやです先生……」
「私は氷漬けの方が、あれで一週間はもう……」
どうやら想像以上に厳しい罰のようだ、こんな一般人に容赦が無いと良い感じで正体に気付いていない断己だった。そして怒りの業火が静まらない洸とステプレを見守る悪の幹部という凄まじい図式が出来上がっていた。
「先生、みんな、お待たせ、買って来ました!!」
ガラガラと帰って来たのは学校の裏のコンビニの袋を持ったメリアだった。その動きはパシリのようで洗練されていた。
「うんうん、これよこれ私のモンブラン……はい、断己くん食べてね、咲野お茶淹れてちょうだい」
「はいぃ~」
なぜか天文部なのにIHのクッキングヒーターが完備されている事に断己が激しく違和感を覚えながらも花音がテキパキとお茶を用意する。それが当たり前の光景のようで断己はさらに驚いた。
「この部室は二度目ですが、こんな設備有りましたか?」
「ま、ここは色々と不思議な部屋なのよ……それでね断己くんには、袖の下としてこのモンブランを……」
スッとモンブランのお皿をこちらに近付けてニヤニヤしている洸を見ると思わず呆れて断己も苦笑して答えていた。
「堂々と賄賂と言われて受け取るのは政治家と悪徳社長だけです、それより話すにしても落ち着かないので彼女らを解放してあげて下さい」
そして正座三人娘を見せられていると心が痛む普通の天才の断己は三人の解放を自然と頼んでしまっていた。
「ううっ、良い人だこのイケメン、ひかりんが連れてるから絶対に顔だけでロクでもない奴だと思ったのに~」
「やはり真ん中のうるさいのは正座続行でお願いします洸先生」
「私も同意見よ律果は徹底的に締める必要が有るって前からそう思ってたのよ」
偶然かはたまた必然か悪と正義の思考がピッタリ一致していた。しょうもない小悪党には悪と正義も共闘してしまうのかも知れない。
「何か先生が二人に増えた気がするんですけど~!!」
◆
「まさか先輩だったなんて……」
「すいませんでした、てか、こんな凄いイケメンが何でひかりんと一緒に?」
涼子と律果は年長者で先輩だと分かると色んな意味で恐縮していた。生徒会で副会長の涼子は特に礼儀に厳しく深々と頭を下げている。その一方でやはり律果は最初だけで基本的に彼女はすぐに化けの皮が剝がれていた。
「あんたね、ま~た正座したい?」
後ろでビリビリっと電撃の音がして一瞬だけ変身した洸を見ると律果は再び固まっていたが即座に頭を切り替えて最善の策を練る。
「洸先生ならイケメンとお似合いよね~メリア!!」
「うん、むしろ洸先生の方がイケメンまであるからな!!」
「確かにメリアの時の先生はカッコ良かったです」
チラチラと洸と断己の顔色を伺ってツインテールを揺らす姿は必死で断己は普通に許してしまいそうになるが洸は違った。隙あらば何か油断ならないのが森野律果という少女だったから警戒を解くわけにはいかないのだ。
「それで先生、何で夜剱先輩をここに?」
「そうです、それに先輩自身悩んでおられたように見えたんですけど……」
涼子と花音も席に着いて当然の疑問をぶつける。まず部室に部外者のそれも男性が入るなんて基本的に有り得ない事態なのだ。別に男子禁制という話ではなく関わることがほぼ無いからだ。
「そもそも今日は私と彼の二人きりで話す予定だったのよ?」
実はこれは本当で本格的に断己に頼むために色々と便利な部室を使ってある程度話がまとまったら四人を呼ぶ予定だった。もちろん断己と二人きりで話せたりデートの約束なんて出来ればという考えも八割強くらい有ったのだがそれは秘密だ。
「はぁっ!? ひかりんと二人きりなんて夜剱先輩が食べられ――――アゥ」
「話が進まなくなるから律果は静かにしているんだ、私も黙る」
メリアが律果の脳天にチョップを叩き込むと洸はナイスと言って話を続けた。メリアは花音とお世話になっている洸の言う事は割と聞く忠犬のような所が有ったのだが断己は少し驚いていた。
(最初は寡黙なやつだと思ったが……案外面白いな)
「と、まあ昼にも話したんだけどね断己くんには天文部に入ってもらって色々と手伝ってもらいたいのよ」
「具体的には? 先ほどの話だとアドバイスをすれば良いだけなのでは?」
昼のような雑談ならば上手く誘導してはぐらかす事も出来るが部室に長居するのは非常に危険だ正体がバレる可能性が高い。どんな天才でもミスをしないとは絶対に言い切れない、それは世の摂理だ。
「色々と頼みたいのよ、実戦的なアドバイスも欲しいし……何より私たちはステルスについて知りたいのよ、あの男のね」
「しかし話した通りでステルスとは大枠で意味は二つ、レーダーに反応しなくなるという本来の意味、もう一つはそこから派生した姿を消したりする似たような技術体系の別物です」
そして断己の鎧はそのどちらでも無い特別製だ。オーバーテクノロジー、実は俺も出所は知らないが祖父からの時代の謎のライブラリ端末にあった超化学の理論体系の一覧が本社の地下には在り、それを使って様々な超兵器を作りERRORはここまでの復興を果たした。
「そこで光学迷彩よ、あのスターダストナイトの二代目、あれのマントは正直反則なのよ……私の探知や妖精の索敵ですら反応が無かったんだから」
(そんな物で探索していたのかよ……てか妖精ってなんだ? マジでファンタジーなのか……虎穴に入らずんば虎子を得ずとは言ったものだ、もう少し聞き出すのも良いかもしれない)
「その、洸先生には言い出しにくいんですけど先生の索敵方法に穴が有ったんじゃないんですか?」
断己は慎重に相手の出方を見るように話しを聞き出そうとするが、それに対して洸は実にアッサリと答えていた。
「ええ、たぶんそうよ、悔しいけどね」
「「「「ええっ!?」」」」
これには他の四人も驚いていた。当然だ、断己は知らないがステラ・ドゥーエの探査や索敵は、あらゆる生物の生命の息吹を感じ取る事が出来る上位の精霊の力を借りて行っている。つまり生きている限りはレーダーに必ず引っかかるのだ。
「ならば尚更、俺がこの部活に入るのは意味が無いと思います、当時の状況や先生の話を伺って社のPCを使って解析した方が早いはずです」
お互いに気付いていないが実は意外と両方の利益に叶うことだった。断己はこの敵の本拠地に等しい場所に長居はしたくない。一方で彼女たちも断己という厄介な相手がスパイに居るのは本来は困るはずだ。
「それでも私は断己くんに天文部に入って欲しいのよ」
「それって先輩がイケメンだから?」
「それも有る!!」
力強く言うのは一切の迷いが無くて逆に堂々とし過ぎて怖いくらいだ。先日まで青少年健全育成条例にビクビクしていた姿はどこに行ったのかというくらいには堂々としていた。
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