Chapter6-2
「うん、まず昨日の大規模戦闘、知ってる?」
「ええっと駅前で起きたものですね、昨日のデートの途中で洸先生が急行したあれですよね」
よく存じておりますと内心呟く断己は昨日の状況を今更ながら思い出す。命からがら逃げ帰ったので昨日は歩に、またSKⅡの鎧を直すのが大変だと冗談交じりで怒られ逆に拡にはガチ説教をされてしまった。
「うん、そうだ……昨日は、ごめんねデートの途中で次はいつにしよっか?」
「いえ、あれはお礼で感謝の気持ちはじゅうぶん伝わったので……って次?」
いきなり次のデートとか何トチ狂った事を言ってるんだろうか我が宿敵と洸を見るが彼女は断己が昨日追い詰められた時と同じかそれ以上に真剣な顔をして目も血走っていた。
「いいえ全然、全然足りないわ!! 具体的にはあと七回くらいデートしないと足りないと思うの!! 次はいつにする!?」
そして洸は昨日、初代のメンバー二人に電話で愚痴った際にデートの事も少し話していて二人からそれぞれ次の約束を是が非でも取れとアドバイスされていた。だから今それを忠実に実行しているだけなのだ。
「あの、先生まずは天文部の話を……した方が」
「あっ、そうだった……逃がさないように必死で忘れてた、ごめんねデートの話は放課後じっくりしようね?」
どうやらデートの約束はほぼ確定のようだと断己は昔、歩に貸してもらったゲームを思い出していた。選択肢を選べるのに結果は変わらず主人公が頼み事されるというもので子供心に理不尽だと思ったのだが目の前の事象はそれに近いものだった。
「うん、お昼休みも短いから単刀直入に言うと断己くんにはえっと……光学なんちゃらっていうのを教えてもらいたいのよ」
「こうがく何ちゃら……高額請求でもされたんですか先生? それなら弁護士でも紹介しましょうか?」
いきなり何を言い出すかと思えば架空請求やデート商法にでも引っかかったのだろうかと少し心配になって思わず顧問弁護士の名刺を出していた。
「ありがと……って、ちっがうわよ!! えっと何だっけな、とにかく目の前で消えるやつで敵が使って来たのよ……」
「ゴホッゴホッ、うっ……」
あ、それ光学迷彩だ。その敵って絶対に俺だと全ての点と線が繋がって思わず断己は、むせ返って弁当を口から戻しそうになったが何とか気合で飲み込んで余計にひどい有様になっていた
「大丈夫!? 断己くん、お茶よ」
「ど、どうも……ふぅ、分かり、ました……それは恐らくですが光学迷彩ですね……ステルスの一種です」
秒の速さで紙コップにお茶を注いでくれる様子はもはや教師ではなく給仕のような感じで呆れつつも感謝して断己は答えると意外にも洸から答えが返って来た。
「聞いた事有るわ、飛行機が消えるやつね!!」
「いえ、あれは消えてるわけじゃないです、レーダーに映らなくなるだけで機体が消えてるわけでは……」
「だって!! あいつは消えてたわ、それと難しいことは分からないの!! だからなのよ……あなたに仕組みとか対抗策を教えて欲しいのよ!!」
それはつまり俺は俺自身の弱点を教えろとそう言う事なんですかねと言いたくなるのを頑張って我慢して専門外なのでとオブラートに包んで断りを入れる。
「だってMITよね!? 天才よね!!」
「MITだからって何でも出来ると思うなよ!!」
「でもウィンキーぺイディアに書いてあったもん、MITがアメリカ軍に光学迷彩作ってるって!!」
そこでスマホで検索したであろうWebページを見せつけて来る洸にたじろいで内容を黙読すると確かに断己は自分が博士課程を取得した母校に米軍が依頼をしている旨が書かれている事を確認した。
「でも俺は……」
「断己くん猫カフェの時に特殊素材の繊維とかスーツとかそう言う関係の新素材の研究してるって言ってたじゃない!!」
「いや、あれはその……」
見た事は有ったけど初めて触れた猫は凄い華奢で壊れてしまいそうでビクビク触っていたら緊張を解すためと言って洸が表の仕事について話を聞いて来た。そこで簡単にSKⅡの鎧の筋肉繊維にも使っている素材について話をしていた。
「私にもステルス付けて~!!」
「無理だろ原理が分からないんだから!!」
「な~んだ断己くんって天才なのにステルス分からないんだ~、もしかしてニワカ天才なの?」
ニワカ天才って何だという新たな疑問が湧きそうになった断己だが今はそんな事よりも目の前の宿敵で弁当を作ってくれた女教師を落ち着かせないといけない。
「分からないのはステルスじゃなくてステラ・ドゥーエの力の方!! 両方の親和性が分からないと、片方だけじゃ装着出来ないんですよ」
「それってステラ・ドゥーエの私の力の秘密が分かったらどうにかなるの?」
「少なくとも外付けで何とかなる……って、無理ですから、ダメですよ!?」
俺が敵に利する行為をするわけが無い。そんな一文の特にもならない事なんてするわけが無い。この時はそう思っていた。
◆
「とにかく一度だけ部室に来るだけ、ね?」
「分かりました」
そんな会話を最後にした上に、なぜか夜ご飯も作りに行くと言われて強引に頷かされて断己はこの天文部の部室の前に立っていた。
「どうして、なぜ俺は今、ここにいるのだろうか……誰か教えてくれ」
「えっと、ここは天文部なので占い同好会とかは別にありますよ?」
嫌に丁寧でどっかで聞いたことのあるような声に視線を下にズラすと茶に近い黒髪の少女がそこにいた。柔和な笑みにタレ目という優しそうな印象を受ける子だと断己は分析していた。
「俺はそんなに人生に悩んでいるように見えたのか?」
「割とガチめに死んだ魚のような目をしてましたよ……その、もしお疲れなら部室で休んでいかれますか?」
「いや、人を探していただけなんだ……失礼す――――「た~つ~きぃ~く~ん!! やっぱり来てくれたのね!!」
やはりダメだ逃げ出そうとした断己の退路は職員会議が終わったと同時に変身してダッシュでここまで来た洸によって封じられていた。
「先生!? 今日は随分と早いですね……」
「え? 咲野こそ何でいるの?」(今日は部活が無い日だから二人きりになれると思ったのに)
「えっと、それはその……」
その挙動不審な動きに直感で怪しさを感じ取った洸はガラガラと天文部のドアを全開にした。そこに居たのは部員の三人なのだが中で行われていたのは宴会だった。いや酒などは無いから宴会では無く女子会だった。
「カノちゃんおそ~い、ひかりんはどうせ一時間は来ない……え?」
「どうしたの今日は週に二回のきゅうけ……あっ」
ドアを開けた人物を見て固まった律果と涼子そして一番奥で美味しそうにローズヒップティーとクッキーを楽しんでいたのはメリアだった。
「うん、このクッキーも美味しいな、でも花音が作ってくれたのが一番美味しいと思う……あ、洸先生どうしたんですか?」
テーブルの上には各種ハーブティーのティーバッグが散乱し、どこから用意したのかお菓子は山盛りという、ある意味で花の女子高生のお菓子パーティーとも言える光景がそこには広がっていた。
「ごめんなさい……結界のせいで先生の声が聞こえなかったんですね」
「咲野……部長として説明して」
「えっと、週に二回だけお菓子パーティーを……その」
「なるほど……これが噂に聞く日本の女子高生による女子会、JPJKJKというやつか初めて見た」
断己が明後日の方に興味を示すのを女性陣が全員無視して話を進めるが問題は別に有った。本来なら洸は教え子たちが女子会をしていても少しくらい騒いでも結界が有るから簡単に注意するだけで終わらせようとしていた。
「でもね……そのテーブルに載ってる半分無くなってるモンブラン……名前、有ったわよね?」
「わぁ、本当だ……ひかりんって書いてハートマークになってるぅ……」
洸の笑みが余りにも怖くて固まった天文部員と、どうして部外者の自分がここにいるのか未だに状況が掴めない断己、天文部の部室は完全にカオスと化していた。
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