Chapter5-5
「断己くん!! 私、行かなきゃいけないから……」
「こちらも社から呼び出しです、最後がこんな形になって残念です」
「私も……でも楽しかった……最後は面倒な女だったのに話、聞いてくれて嬉しかった、じゃあね!!」
そう言って洸は無言で変身すると駅前に向かった。その後ろ姿を確認すると断己も走り出して手近な物陰に隠れてスマホを開いた。
「こちらスターダストナイト二世!! 拡、どうなってる!?」
『お疲れ様です断己様、今どちらに?』
「今は旧市街の公園にいる、それより俺の質問に答えろ!!」
『はっ、現在コングマン様がフル装備とそして独自の保有戦力を投入して単身で出撃されステプレ四人と交戦中です』
四天王にはそれぞれ特別な装備や人員そして戦力などの保有が許可されている。軽装備がC装備、通常装備がB装備、そしてA装備が最高装備で、よく有るS装備などという概念は存在していないのだが例外が有る。
「フル装備、日本本部でのみの呼称だったな……確か……」
断己が言う前にスマホにデータが送信されて来て確認すると送信者は歩だった。そこには大量破壊兵器という文字と添付ファイルには『金剛魔神ロボ』という文字が有った。
『はい、フル装備とは文字通り全ての装備で自爆装置などの決戦兵装を付けた状態で相手と同士討ちすら辞さないための装備です』
「つまりA装備に自爆装置付きってことだろ? よくそんな物を父さんが許可したな……まさか」
『はい、無許可で出撃しており、第一ラボには気絶させられていた研究員と構成員が多数で無事だった者らの通報が先ほど入った次第です』
ある意味で予想通りの命令無視だった。前回はギリギリセーフだったが今回は完全にアウトな状況だ。しかも文字通りの必殺、いや確殺の装備を持って出ている所を見るに生きて帰る気は無いと取れる。
「まったく……今週はもう落ち着いているかと思ったのに何で勝手に動くんだ」
『分かりません、ただラボのコングマン様の置手紙には一言、我が信念を貫くとだけ書いてあったそうです』
それを聞いてハッとした断己は数日前の幹部会で顔を合わせて話した時のコングマンの様子を思い出していた。他の二人は前向きだったが彼だけは何かを抱えていたような雰囲気だった。
「ええい仕方ない!! 命令無視になるがB装備で俺も出る!!」
『各種許可は既に取り付けてあり、社長も連れ戻すようにとの仰せです』
「なっ、お前どうやって……」
まず不可能だ。コングマンは誰にも相談などせずに出撃したはずで、それを聞いてから断己が動く所までを想定して許可を取り付けたという事になる。事前準備をしていなければ不可能なレベルだ。
『あなた様の右腕をあまり舐めないで下さい、なので雑事は私にお任せを断己様いえ、スターダストナイト二世さま!!』
「ふぅ、分かった、では出撃する!! 鎧をここに!!」
◆
断己がこのようなやり取りをする少し前に星守町の駅前の新市街は破壊の限りを尽くされていた。
「やれ金剛魔神よ!! 全てを破壊しERRORに勝利を!!」
その中心に居たのは全高約15メートル級の金ぴかの巨大ロボットだった。そしてその肩にはマネー・コングマンが仁王立ちしていた。
「くっ、攻撃が通らないです!!」
「なら今度こそ動きを止めてやるわよっ!! ステラ・リボン!!」
既に戦闘開始から十分弱、激しい戦闘が繰り広げられていたが勝負は今の所は五分五分で均衡を保ったままだった。フィオーレとプロメッサが数度に渡り必殺を放ったが足止めと一時的な拘束しか出来ていなかった。
「フィオーレ、プロメッサ離れて!! フルオートで貫く!!」
「私も同時に撃つわ!! 行くわよリコルド!!」
しかし足止めこそが狙いで本命は中・遠距離の高出力技を持つ二人のチャージを待つためだった。そして二人の準備は終わっていた。
「カノちゃん!!」
「はいっ!!」
フィオーレとプロメッサがジャンプで離れると同時に、その後ろから水色と紫の光が輝いて必殺技が一気に放たれた。
「ステラ・セプテントリオーネス・グラーチェス!!」
「ステラ・セプテントリオーネス・テーラー!!」
二人の裂帛の気合の声と同時にアウローラの弓からは人間大の巨大な氷の矢が放たれ、リコルドは前回の技よりさらに多くの岩石の弾薬をバラ撒いた。
「ぬうっ!! 耐えろよ金剛魔神よ!!」
そして金剛魔神が前に出ると目を光らせ何かビームのようなものを発射した。そして互いの攻撃が激しくぶつかり明滅し最後は大爆発が起きた。
「やったの!?」
「手応えはあったんだけど……嘘でしょ」
大爆発した爆心地の中心には表面の金の塗装が剥げて剥き出しになりながらも他はノーダメージでコングマンも無傷だった。
「今までの俺と同じと思うなよ小娘ども!! そして、ストレーガ!!」
「これが、コングマンの本気なの……」
「ふっふっふ、やれ金剛魔神よ蹂躙せよ!!」
そう言うと自らはロボットの肩から飛び降りてリコルドの前で巨大な黄金の刀を構えていた。
「コングマン、よくも町をこんなに!!」
「どうせ貴様らの親玉が直すのだろう!! 毎回壊しても直されて互いによく愚痴ったであろうが!!」
互いに睨み合う二人に対して残りの三人のステプレも援護しようとするが、それを阻むように巨大ロボ『金剛魔神ロボ』が三人に襲い掛かった。
「くっ、コイツ、リコルド今行きます!!」
「大丈夫!! コングマンは私が三人は巨大ロボを!!」
そう言ってコングマンとの戦闘を始めるリコルド、そして巨大ロボと戦う三人という図式に戦場は変わった。
◆
「これで最後か、やっとあの子達の方に行けるわ」
洸は変身して数十分後に、やっと戦闘中の四人の近くまで到着していた。学校から家までの距離を僅か数十秒で移動できるのになぜ時間がここまでかかったのか?
「おねーちゃん?」
「ん? どうしたの早くお母さんと逃げるのよ」
それは逃げ遅れた人々の避難誘導や瓦礫の撤去、さらには怪我をした人の治療などを行っていたからだ。目の前の少女は母親と逃げ遅れて助けたばかりだった。
「えっと、ステラ・ドゥーエありがと~」
「ふふっ、どういたしまして、早く逃げんのよ」
最後の逃げ遅れた親子を見送って私も今みたいな可愛い子供が欲しいなんて思っていたら一際強い星の力を感じ、洸は全てを察した。
「さて、あの子達はっと……この星の輝きの強さは……そう、ついになのね」
教え子たちの成長を見るために彼女が現場へ到着した時には戦いの決着が付こうとしていた。
「これが、私達の新しい力?」
「私達の諦めない心が強さに……」
「行けるわフィオーレ!!」
「うん……皆、行こう!! ステラ・ノウヴス・エクサイト!!」
四人の思いに同調し輝きが増すと四人のコスチュームに変化が起きた。四人の背中にそれぞれ白い翼が生え胸の中央のクリスタルも少し大きくなり細かい箇所もブラッシュアップされ、より戦闘に向きながらも可憐さを併せ持ったものに変わっていた。
「な~るほど、五代目タイプかぁ、あの子達も正当進化だったもんね~」
そんな四人を見守りながら新フォーム『ノウヴス・エクサイト』と名付けられた新形態の感想を一人で呟いていた。
「さて、じゃあ最後は私も行きますか……」
そしてゆっくり歩いて向かおうとした瞬間に一瞬だけゾクッとただならぬ気配を感じた洸は背後を振り返ったが誰もいなかった。
「気のせい……よね?」
そして一抹の不安を抱きながらも四人の元に到着した。見ると周囲には鉄屑となった巨大ロボと鎧は砕け刀を片腕で支えとして片膝立ちのマネー・コングマンがいた。
「わお、凄いじゃない羽まで生えちゃって~」
「ドゥーエ先輩!!」
真っ先にこちらに気付いたリコルドが声を上げて洸の方に飛んで来た。まだ少し飛ぶのは難しいようで着地も不安定だったのを抱き留めた。
「まだちょっ~と、危ないわね」
「ひかっ、じゃなくてドゥーエ、悪いけど今さら来ても遅いわよ~」
「今回は私達ついにやりましたので、ね? フィオーレ?」
律果と涼子の二人もそれぞれパワーアップした装備を持って得意顔だったが、リーダーのフィオーレだけは違った。
「ドゥーエ先輩、この人どうするんですか?」
「う~ん、ま、交渉次第かな……ねえコングマンだっけ、あんた更生する気は有る? 有るなら後は警察に引き渡すんだけど」
しばらく呻いた後にコングマンは洸を睨みつけて否とだけ言った。
「じゃあ仕方ないわね、浄化コースか……あんまり好きじゃないけど」
「好きじゃないって何をするんですか?」
何気なく律果が聞いて来たが洸は少し考えるように顎に手を当てた後に言った。
「そのままの意味よ悪の心を浄化する……ま、平たく言えば記憶を奪うの、そんで真人間にして刑務所にぶち込む」
「き、記憶を……奪う?」
そして記憶喪失のリコルドがすぐに反応した。一応は元同僚でしかも自身も記憶喪失の辛さを知っているから躊躇していた。
「だから再度聞くわ、あんた大人しく更生しなさい」
「否、俺は俺の信念の元に戦って敗れた……悔いなど、無い」
でも凄い悔いがありそうなんですけど、と目の前のコングマンに言いそうになるのを必死に抑え洸は自分に与えられたもう一つの役割を果たす。
「ま、あんたは最低限の役割は果たしてくれた、この子達の覚醒のための噛ませ犬、だから後は退場して」
「そうはいかんステラ・ドゥーエ、貴様だけは道連れにしてくれる!! これで奴への借りも返せる!!」
するとコングマンは叫び声を上げて鎧に隠している自爆装置を起動させるために刀のスイッチを押して目をつぶった。しかし、いくら経っても何も起きず洸以外は全員がポカンとしていた。
「本当にワンパターンね、あんた達って……自爆装置ならもう壊したわ」
洸が言うといつの間にか自爆装置が破壊されてパラパラと音を立てて鎧から零れ落ち、最後は消し炭になっていた。
「すっご……さすがドゥーエ」
「悪いけど逃がす訳にはいかないの、リコルドも辛いと思うけど我慢してね?」
普段聞き分けのいいリコルドことメリアだから素直に聞いてくれると思った洸だったが返って来た答えはノーだった。
「で、でも先生、少し時間をお願いっ……します」
「はぁ、分かった……」
そう言うとヤレヤレと言って一歩後ろに下がった。メリアもそれを確認するといつもの遠慮した口調と変わって喋り方が四天王時代に戻っていた。
「コングマン罪を償おう……今ならまだ私も擁護が可能だ……」
「ストレーガ、だ、だが……俺はお前を……」
「私が何だ? いや私もやり直しているんだ、お前も今なら……」
そして二人の様子を見ていた洸は後頭部をガツンと殴られたような衝撃を受けていた。このパターンには覚えが有った。メリアは気付いていないがコングマンの方、これは完全にメリアに惚れているという恐ろしい事実に気付いてしまった。
「お前を取り戻っ――――「はぁ~い、そこまで時間の無駄なようね!! 恋愛はご法度なのよ私達は!! すぐ浄化するわ!!」
「え? ドゥーエ今、説得の途中で早いような気が……それに恋愛事?」
フィオーレが不思議そうな顔をするが即座に腕に力を集めて実行に移そうとするドゥーエにリコルドも含めて不満を露わにするが完全無視だった。
「いいえ、これは失敗よ大失敗ね、仕方ないわ!!」
色々な理由が有るには有るのだが洸の今の気持ちは一つだった。
(また後輩に置いて行かれる……しかも敵味方に分かれてラブロマンスとか私が一番憧れてるアレじゃない!! よって浄化よ!!)
しょ~もない嫉妬だった。歴代最強の戦士にも関わらず公園で断己と話したナーバスな状態だったせいで判断力が若干雑になっていた。
「ま、どの道、更生してもその想いが残れば本物よ、じゃあね、っ!?」
そして記憶を消そうとした瞬間、洸や他のステプレ達に遠方から連続で飽和攻撃が行われた。咄嗟に回避した五人はこれに覚えが有った。
「まさか!?」
そしてさらに目の前の空間が歪み始めるとバリバリとプラズマのような光が溢れ出現する黒い影が有った。
「ふぅ、また会ったなステプレの諸君……そして無事かコングマン」
「「「「「スターダストナイト!?」」」」」
五人の声をバックに断己は新たに装備品として追加したマント型のモジュールをバサッと翻すと口元だけをニヤリとさせて言った。
「さて、ここからは俺が相手をしようレディ達?」
第二ラウンドの幕開けだった。
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