Chapter4-4
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「それで……この大量の食材は何ですか?」
断己はあれから睡眠もしっかり取って体がほとんど復調し、ある程度は問題無く動けるようになった。そんな病み上がりの断己の前に置かれた大量の食材を見て出た一言がこれだった。
「いやぁ、色々と作ってあげようと思ったら買い過ぎちゃって」
「どう見ても四人前以上の量が有るんですが……」
原因はもちろん洸でスーパーで色々と吟味して来たのだが色々と作ろうと買い過ぎた結果がこれだった。
「男子高校生って食べ盛りじゃない?」
「そういうのは偏見と言うんだ……です……」
咄嗟に言い直して洸を見るが当の本人は気にした様子も無くニヤニヤ笑うと袋を開けながら逆に感心していた。これは先ほどまでの律果が酷かったので逆に殊勝な態度が可愛いとすら思っていたからで「あばたもえくぼ」とは言ったものだ。
「うん、偉い偉いちゃ~んと教師に敬語で言い直してて、本当にアメリカ育ち?」
「これでも日本に住んでいたので、それに礼節は祖父がうるさくて向こうでもこんな感じでした」
「ああ、例の創業者さん? そう言えば日本人か……ふふっ、じゃあ礼儀作法もしっかりしてる夜剱くんには洸先生特製のお料理の数々をご披露しましょう!!」
すっかりやる気満々の洸だが、こういう強引な姉御肌な所が肉食系と思われ多くの男性に引かれている事に本人は気付いていない。そして断己もその危険性を直感で理解したから即座に止めに入った。
「いや、数々って、病み上がりですしほどほどにして下さい……」
「ふふっ、冗談よ、お腹に良い物作ってあげるから、それに多いのも理由有るのよ、今朝ね冷蔵庫見たんだけど水とサプリしか無かったから補充しようと思ってね」
そう言って次々と冷蔵庫に入れている時だった。ピンポンと玄関のチャイムが来客を告げていた。
「「えっ?」」
◆
断己と洸は二人で顔を見合わせ今の状況が危険な事に気付いてしまった。このマンションは新聞の勧誘やらは来ないし宅配便などは全て管理人を通してエントランスで受け取る仕組みになっている。
「ましてや君の部屋は最上階だから、知り合いしか来ないはずよ」
「ええ、恐らく俺の知人です、しかもこの部屋を知ってるのは親以外だと二人です」
可能性が有るのは拡か歩だがラボからあまり出ない歩は除外すると拡の可能性が高い。俺が半日以上定時連絡を入れていないから様子を見に来た可能性が高い。
「少し見て来ます……」
そして予想通りの高野拡がそこには居た。マズイ……今この二人を会わせるのはマズ過ぎる何より洸にお持ち帰りされたり、おんぶして連れ帰ったことは全て報告していないからだ。
(せっかく四天王を抑えてこれからという時に俺が反逆罪などに問われたら……今までの俺の人生がパーだ……)
単純に恥ずかしかったから報告しなかったが今回はそれが完全に裏目に出た。敵と裏でコソコソ会っていたなんてバレた日には組織内での立場など簡単に吹き飛んでしまう。
「ど、どうだった?」
「マズイです、俺の同僚なんですが側近てか秘書のような奴でして父や母に直接報告するような半分保護者みたいな立場の者です」
洸は洸で当然マズイ事態だ。二人の間には全く何も無いが彼女はこれで通算三度目となる教え子との密会になるから条例は彼女を見逃さないだろう。青少年は守られるべき存在でそれは悪の秘密結社の幹部でも同じなのだ。
「そんな~、ど、どどどどうしよう断己くん!?」
「お、落ち着いて下さい、洸先生、自分達は今、共に危機を迎えています」
「分かってるわよ!! このままじゃ教師クビになっちゃうのよ!! もしクビになったらっどうしてくれるの!? お嫁さんにしてくれるの!?」
「錯乱して願望を垂れ流すのは止めて下さい先生、自分も一人暮らしの部屋に女性を連れ込んだとなると今の環境を追われる可能性が有り避けたい状況です」
実際は宿敵と仲良くご飯食べようとしてました等とバレた日には組織から追放され強制的にアメリカに戻されてしまうからそれだけは避けねばならない。だからここは咄嗟に女性と居たらマズイと言い換えていた。
「えっ? 私、女扱いされてる……じゃあ、ついに男の人の部屋に私、連れ込まれちゃったの!! 夢の寿退社!?」
「だから落ち着け!! このままじゃ俺達二人ともおしまいだ……互いの連携が不可避なんです」
「なんか今、言葉遣い乱暴になってなかった? もしかして付き合い始めたらDVとかそういうタイプなの!?」
「そんな犯罪者紛いの状況にはなりませんから……あと声を荒げてすいませんでした、取り合えず今は俺の部屋に隠れて下さい」
ガチャっと音がしてついに拡がスペアキーを使って入ってくる音がすると断己と洸は頷いてすぐに行動を開始した。
◆
「失礼します……断己さま、いらっしゃいますか?」
「ひっ、拡か……どうした」
断己は急いで洸を隠すと不自然な所を見られていた。だが、そこは長年側近として仕えて来た拡だから流してくれたが次なる危機が断己を襲った。
「いえ連絡を三度ほどしたのに返信が無かったので……あの、どうしたんですか、この大量の食材は?」
「ん? ああ、これか……」
そうだ、冷蔵庫に入れようとして拡が来たから食材がそのままだったと今さらながら気付いたがもう遅い。
「断己さま、こんなにパーティーでも開くつもりですか?」
「い、いや……これは、だな……実は、料理を勉強しようと思ったんだ」
咄嗟に出た言葉は生きて来た中で一度も考えたことが無かった事だった。料理なんて栄養補給のためだけだと最近までは考えていたからだ。
「料理……ですか、断己様が?」
「ああ、俺も再来月には18歳だからな、自炊というのをやってみようと」
「嘘ですね……断己様なら普段なら効率を求めて全部レーションかサプリで好物の洋食ならプロに頼むはず……自分でやるなど非効率と言うはず」
ああ、その通りだ拡。だけど俺は今、一生懸命言い訳を考えているんだから合わせてくれと心の中で祈りながら断己は目の前の側近を見た。
「心境の変化というやつだ……」
「なるほど、さすが世界せっ――――「せっ、世界線が違えば俺もシェ~フをしていたかもしれないからなぁ!! そうだろう?」
扉一枚隔てた向こうに洸がいるのに正体がバレるような事を言うなと叫びたい断己だが出来ないから慌てて意味不明な事を言っていた。
「は、はあ……それよりも例の《《四てんの》》――――「《《視点の》》重要性だよなぁ!! その通りだ我が社にも必要だな!!」
「あの、断己様、今日はどうしたんですか?」
どうしたもこうしたも無い。お前が来たからこっちは苦労しているとは言えないし完全に善意で来ている側近を叱責するのは違う。そしてさり気なく背後を見ると後ろから視線を感じる。
「あっ!?」
ドアの隙間から見ている洸と目が合って思わず叫んでしまった。それに反応して拡が背後を見るとタイミングよくドアは閉まっていた。
「どうしました断己様」
「い、いや……何でもない……疲れているのかもしれないな……ハハハ」
「そうですよ断己様、実は昨日で徹夜が三日も続いていたから倒れているのでは無いかと心配で来たのです!!」
ガタッと今度は断己の部屋で一際大きい物音がした。明らかに今、洸が反応した音だと理解して思わず自室のドアを見る。
「今、物音がしましたね……やはり何か有るのですか?」
「いや、何も無いから」
断己は今の発言は自然に言えたなと心の中で思いながら震えた声で答えていた。
「いえ、明らかに大きな音が――――「してないな~、気のせいじゃないかな?」
「はぁ……断己様?」
「なんだ? 何も無いから」
今度は声は震えていなかったが目線が明らかに泳いでいたから拡は一気にジト目になって断己を睨んで言った。
「勝手に失礼させて頂きます!!」
「そこは遠慮すべきだよなぁ!!」
そして拡が断己の部屋のドアを遂に開け放った。
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