Chapter3-4
はっきりと断言する言葉に洸は思わずたじろいでいた。かつてここまで熱烈な言葉を男性から受けたことなど人生の中で皆無だった。
「そ、そうなの……いや、生徒とはいえ強くここまで迫られちゃうと……でもダメよ洸!! さっき土下座したのは青少年健全育成条例違反回避のためじゃない!!」
「大丈夫、俺が興味が有るのは先生の戦闘能力とポテンシャルについてなので極めて健全な目的です」
「ですよね~!! 何となく途中から分かってたんだけど醒めない夢くらい見せてくれてもいいんじゃかしらねっ!!」
半泣きでアラサー女教師が変身したまま訴えて来るが断己は一切無視してフリルに触れたりして感触を確かめている。
「洸先生、夢ばかり見ていたらろくな大人になれないと思いますが?」
「なら知ってるかしら夜剱くん……正論って人を凄い傷つけるのよ……」
「なるほど勉強になります」
こんな感じで時間になり先ほどの教室での一件となった。何度も言うが断己は至って真面目にステラ・ドゥーエを倒すために動いているだけなのである。
◆
「じゃあ、皆さようなら、最近は新しい四天王も出て来たから帰り道には気を付けるのよ~」
「大丈夫でしょ、だって洸先生が助けてくれるし~」
「それな!!」
そんな放課後の風景を見て断己は平和ボケした連中だと思いながらも彼らの根底にはステラ・ドゥーエ、いや八重樫洸という存在が有るから油断しているのだろうと考え込む。どうすれば倒せるか情報収集は出来たが全くの未知数だ。
「ふぅ……」
「どうしたの夜剱くん、ため息なんて付いちゃって悩みなら聞くわよ?」
「むしろ俺が聞いてた気がするのですが……ま、いつか話しますよ」
あなたを倒した時にと断己は心の中で付け加えると立ち上がった。職員室に呼ばれているのを思い出したからだ。
「どこ行くの?」
「職員室ですよ、呼び出したのは洸先生ですよね?」
「じゃあ大丈夫、入れ違いになるのも悪いからこのまま行くわよ」
そう言って廊下に出て付いてくるように促すから思わず断己は聞き返していた。何をするのか想像がつかなかった。
「そりゃもちろん、校内の案内よ……話したい事も有るしね」
「分かりました、施設も把握してないのでよろしくお願いします」
そのまま連れて行かれた先は体育館であったり移動教室の特別教室などだった。正直、あまり興味は無いのだが洸から情報を引き出すためと割り切って断己は付き合っていた。
「ま、こんな感じね……だいぶ遅くなっちゃったけど時間とか大丈夫?」
「ええ、それにまだ学内にかなり人が残っているようですが……危険なのでは?」
「危険? ああ、ERRORのことね……そりゃ海外育ちの君なら当然か……さっきのクラスの子達って率直にどう思う?」
「……そうですね、少なくとも自分がいたロスは銃撃事件が絶えない素敵な町でしたので警戒感が薄いとは思いました、仮にも秘密結社を相手にこれとは」
だが先ほども内心思ったが彼らが平和な現状を享受出来ているのは間違いなく目の前の女性のお陰だが逆に言えば彼女さえ倒せばこの町は落とせるという事だ。
「まあ、今は良いけど私もそろそろ年だし、引退したいのよね……」
「まだ27と伺いましたが?」
「もう27なのよ!! こんな事してたら結婚も出来ないし」
あれだけの強さなのに勿体ないと断己が言うと好きで強くなったんじゃないと反論する洸。二人の話は平行線で、この話はここまでと洸が言って終了してしまった。
「もう暗くなって来たし送ってあげよっか?」
「これでも鍛えてるので大丈夫ですよ……」
断己がフッと笑うと洸の方は複雑な顔をして、やれやれとポーズを取っていた。そして少し迷った顔をした後におずおずと口を開いた。
「男の子ねぇ……あのさ、これは深い意味じゃなくて純粋に厚意からなんだけどね、引っ越して来たばかりで一人暮らしだって言うじゃない? だから連絡先の交換とかねしといた方が良いと思うのよ、担任として!!」
「えっと……」
何とか言い切った洸だったが断己の反応は鈍い。ここで彼女のトラウマが蘇る合コンで連絡先を交換しようとして全戦全敗したという過去が脳裏を過ぎった。
「あっ、やっ~ぱ無しよね、朝あんなこと言ったばかりなのに何言ってるんだろ私……ごめん忘れ――――」
「いえ、是非とも交換して下さいステプレについても聞けますし!!」
「えっ、まあ、そうよね……うん、分かった」
こうして洸は仕事関係や親戚以外では人生初の男の連絡先を手に入れたのだった。内心でガッツポーズなのだが実は断己もほとんど同じだったりする。
「女性の連絡先なんて母以外だと一人くらいですね……」
「えっ!? もしかして彼女とかいるのっ!?」
「違います、日本に居た頃にお世話になった女性の連絡先です。もっとも固定電話の番号でとっくに繋がらないんですけどね……」
断己は六歳で日本を出て海外に渡っていた。その際に必ず電話すると言って教えてもらったのだが米国を転々として気付けば繋がらなくなっていたという悲しい過去が有った。つまり自然消滅のような関係だった。
「へ、へ~、それって初恋、とか?」
「分かりません、それと洸先生、生徒のプライベートに干渉するのなら、こちらも出るとこ出ますが?」
「あ~、もう全然気にならなくなったわ、だから警察に通報しないで~」
「冗談ですよ、では本当に大丈夫ですので今日はこれで失礼します」
◆
それから三日後、断己は情報収集と同時にラボと自宅を往復し破損した鎧の修理を急ピッチで行っていた。そして作戦行動を大幅に遅らせ自らが情報を集め次の作戦の案を考えていた中でその通達が来た。
「四天王幹部総会……か、やっと開かれるのか」
「ええ、再三こちらから要求したのに梨の礫だったのに、どういう風の吹き回しでしょうか?」
「奴らの用意が整ったんだろうよ、腑抜けた連中の用意がな」
招集状を見て断己は拡に悪態をついた。本当は来日した翌日には会議のはずが体調不良だ、作戦準備中などと言ってあの手この手で要請を無視し続けていた。
「コングマン様は割と素直にこちらの招集に応じていたのですが残りの二人がやっと承諾の答えを送ってこられたようです」
「そうか、では当初の予定通り明日の放課後にすぐに……」
しかし断己が言う前に拡が言い辛そうな顔をして首を振ると放課後は難しく代わりの時間を提示してきたと報告された。
「それが先方は会議を13時と言って来ています」
「これは……どう見る拡?」
分かり切った答えだが自分とは違う見方の意見が聞きたかった。もしくは自分の判断のための肯定の材料が欲しかったが拡の答えは後者だった。
「偶然と見る事も出来ますが私の勘では学生の断己様への嫌がらせかと、鎧の修理の人員まで削られましたからね……あれ込みの嫌がらせですよ」
「だから俺が二徹して歩と一緒に修理を終わらせたんだろ……仕方ない明日は学校は早退する、歩には鎧が直った事は二人だけの秘密にしておくように厳命しておけ」
断己が信頼している部下は二人だけで実際の所、この第三ラボの人間たちも疑っていた。だから側近の二人にしか最重要の情報は教えなくしていた。
「もちろんステラ・ドゥーエの新しく知り得た情報も明日までは表には出さん」
「そうですね、そもそも他の四天王の方々が隠していた情報があれば断己様があそこまで追い詰められてはいませんでしたからね」
「そうだな……少なくとも心構えは出来ただろうな」
そう言って苦笑しながら断己は明日の会議に思いを馳せていた。外の敵との戦いに備え情報収集をしていたが明日からは内側の敵、即ち内憂の方の処理に入る。
「だがステラ・ドゥーエの相手をするよりは簡単だ」
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