Chapter3-3
◆
「じゃ、じゃあ皆に紹介するわね……転校生の夜剱断己くんよ今日からこの3-2の仲間になるから仲良くしてあげてね」
あれから数十分後、断己は洸の案内で自分のクラスに到着していた。そして自己紹介を済ませてクラスを見るがどうやら問題無いようだ。
「え~、洸先生なんか硬いよ~どうしたの?」
「そうだよイケメン来ちゃったから緊張してるんじゃない?」
「「「アハハハハハハ」」」
「うるさいわね!! 私だって海外から来たって言うから緊張してんのよ!!」
否、実際は自分の教師生活の命運がかかっているから緊張しているのだが目の前の生徒たちは当然そんなことは知らない。
「八重樫先生?」
「ひゃ、ひゃい!! 何ですか夜剱くん?」
「俺の席はどこでしょうか?」
このように断己の一挙手一投足にビクビクしているのだが生徒たちは普段の彼女を知っているので無邪気に「イケメン無罪だ~」などと言っているが状況はそんなに生易しいものでは無い。
「えっと、ここは……えっ!?」
「教卓の目の前……ですか」
これは自分を監視するための差し金かと思って洸を見るが目が違うと訴えている。そして断己が考える前に答えはすぐ帰って来た。
「あはは、ごめんね先生居ない間に昨日の内に決めたんだよ、悪いね~」
「転校生来るから特別な席を用意したんだよ感謝しろよ~」
なるほど、これが彼らなりの歓迎かと理解した。向こうに渡ってから家庭教師と家での学習のみで気付けば学士、修士そして博士課程を取っていた断己はこんな事は初めてだった。
「なるほど皆の歓迎に感謝を、俺としても洸先生をよく見れる位置で都合がいい」
「えっ……」
もちろんこれは観察するのに都合が良いという断己の本音が漏れただけなのだが先ほど自分が土下座していた事も忘れて洸は顔を赤くしていた。そしてクラスも一気に盛り上がる。
「おいっ!! マジかよ転校生、洸ちゃん狙いかよ!!」
「ちょ、イケメン無罪でもいきなり先生狙いとか、告る前に私の恋がぁ……」
「残念ですな夜剱氏、八重樫先生は特殊の立場にあるお方ゆえ鉄壁ですぞ? それに先生の正体は……」
後ろの席に座る茶髪のヤンキー風の男子生徒や、近くの陽キャ気味の女子生徒そしてオタクっぽい眼鏡男子生徒が騒ぎ出すが、その一同を尻目に断己は言い切った。
「ステラ・ドゥーエ……この星を守る戦士、先ほど説明を受けました」
「うぇっ、それ知っててそれかよ、英雄じゃん」
「でもあの時代遅れの恰好見たら引いちゃうでしょ~」
なおも食い下がる陽キャ生徒たちに言われ洸本人も複雑ながら歴戦のコスチュームが古いのは自覚していたから顔で笑って心で泣いていた。
「それも拝見しました、実に素晴らしかったです」
「「「えっ……」」」
その発言に一同は元より洸本人ですら絶句していた。そして嬉しいという気持ちも湧いていた。あの衣装は自分が中学から一緒に戦って来たものだから褒められれば嬉しい気持ちは有るのだ。
「最初は気付きませんでしたが、あのコスチュームは実に実戦的だ。近くで見れば無駄だと思っていたフリルも衝撃吸収の特殊な機構になっていたし、各種パーツや肩の装備の貴金属にはエネルギー効率を良くする仕掛けのようにお見受けしました。さらに先生の運動神経を最大限に生かすためのミニスカートも……」
「もっ、もう!! そこまで、そこまでにしてええええ!! じゃあ私の授業はここまで後は自習、夜剱くんは後で職員室まで来るように、以上解散!!」
顔を真っ赤にして出て行く洸を目で追いながら「あれ? 俺何か余計なこと言っちゃいました?」という顔をしてクラスを見ると全員が呆れたような顔をしていた。そろそろお気付きかもしれないが断己は天才だがかなりの天然さんだったのだ。
「なっ、何なのよ……あの子、いきなり私のことあんなに褒め出して……もう」
一方教室を慌てて出た洸は褒めちぎられて廊下で顔を真っ赤にしていた。先ほどまでの部室の時といい断己には本当に混乱させられっぱなしだからだ。
「悪い子じゃないんだけど……さっきの事も部室の事も……不思議な子ね」
そうして先ほど部室で土下座した時の事を思い出していた。
◆
「ま、まずは何を? 取り合えず私に出来ることはしてあげるわ……学校でのちょっとした悪さなら目をつぶって――――」
「もう一度、変身して下さい洸先生!!」
土下座して恐る恐る顔を上げると先ほどまでの無表情な顔から一転して興味津々な顔をして自分を見ている男の子がそこに居た。
「えっ!? ええええっ!!」
「もう一度詳しく見せて下さい、これが要求です!!」
もちろん断己の頭の中には敵のスペックを計測するチャンスだと思ったのだが洸からしたらヤバイ生徒にしか思えない。しかし自分の不祥事を握っているのは目の前の男子で答えは一つしか残されていなかった。
「わ、分かったわ……その、ああいうの好き、なの?」
「はい、非常に興味が有ります!!」
(ヤバイ子だった……でも、引っかかったのは私なのよね……)
諦めて姿勢を正し変身への構えを取る、改めてじっくり熱視線を向けて来る生徒にドギマギしながら洸は叫んだ。
「わ、分かったわ……じゃあ行くわ!! ルクサードシャイニー・ステラ――――」
「ちょっと良いですか先生!!」
「な、何よ~、気合入れたのに……」
かつてここまで自分をかき乱した相手がいただろうか? いやいないと心の中で自ら反語で答えるほど洸は焦っていた。
「すいません、その掛け声は必ずしなくてはいけないのですか?」
「うっ……それは説明すると少しメンドイんだけど今はしなくていいのよ」
そこで仕方なく変身システムについて話せることだけを話していく、女神の加護やステプレの光の秘密は話せないので上手くごまかして話すと目の前の断己は興味深げに自分の話を聞いていて照れ臭かった。
「なるほど、つまり音声認識なんですね……認証パターンに声紋を使っていると……それで先ほどの今はという意味は?」
「う~ん、実はね最近はこれが有るのよ」
そう言って取り出したのは指輪だった。そう言えばなぜか右手の親指にしていたのが断己は密かに気になっていた。
「それは一体?」
「これ最近作られた私専用の変身アイテムなんだけど心の中で祈れば変身出来るのよ、でも癖でつい声出しちゃうのよ」
なるほどと聞いて断己は今の言葉をメモしていた。まるで授業のようだと洸は思いながら無言で変身した。
「こんな感じよ、どう……かしら?」
改めて見られると恥ずかしい。ミニスカートに生足はバッチリ見えているし最近は少しだけ太くなった太股をマジマジと見られるし、中学の頃から何度も改良されているとはいえコスチュームのサイズも少しキツイのだ。
「これは……寸法が、いや……なるほど、だから小さく」
「も、もうっ、そんな見ないでよ~、結構恥ずかしいのよ」
鼻息がかかるくらいに接近されるとさすがに恥ずかしい。男にここまで近付かれたのは実に五年振りだと苦い思い出が去来したが目の前の生徒は自分の言葉を一切無視して熱視線を向けていた。
(しかも生徒だけど好みなのよね、この子……)
「あっ、すいません女性相手に……研究対象を目の前にするとつい夢中になる事が有って……」
「へ? 研究対象?」
「はい、自分は父の企業で技術部でインターンをしているのですが、非常に参考になりました!!」
イケメンの満面の笑みに心奪われそうになったが少し待て、彼は私のファンじゃないのかと困惑して洸は思わず叫んでいた。
「まさか最初から私の体目当てだったの!?」
「心外な、もちろん中身にも興味が有ります!!」
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