Chapter3-1
ガチャンと強引にドアを閉めて廊下の外に気配が無くなるのを確認すると洸は玄関に座り込んでいた。
「何してんのよ……私は」
学校やステプレの活動でストレスがマッハだった洸は酒でストレスを発散しようと今日は少し寄り道をして駅前で良い感じの赤提灯を見つけたまでは良かった。
「偶然見つけて勢いで声かけちゃったなんて……本当に何してんのよ」
そこからは酒が入っていたとはいえ昨日ほど酔っていなかったから改めて謝罪とお礼を言おうとしたけど素直に言うのは何か恥ずかしくて酔った振りをしていた。
「まるで小学生じゃない私……それに半分冗談で言ったのにあの子……」
無理だろうと冗談で背負って家まで連れて行けと言えば彼は素直におんぶして私をここまで運んで来てしまった。勝手に恥ずかしがって最後には力が入って思いっきり抱き着いてしまった。
「ま、若い男にタダで抱き着けたと思えば安いもんよ……はぁ……最低だ私」
人の良さそうな年下相手に付け込んで自分は何をしているのだろうと洸は自己嫌悪に陥りながら明日は何か有った気がすると思いながらベッドに突っ伏した。そして遅刻しないようにと思いながら意識を完全に手放した。
◆
「ダァーッ!! またしてもこのパターンじゃない!!」
そして予定調和の遅刻という悪循環が今日も洸を襲っていた。なぜか夢見が良かったせいで起きたら昨日と同じ時刻となっていた。そして考えた二日連続はマズイと、これでも社会人の自覚は有ったのだ。
「こうなったら奥の手よ……ルクサードシャイニー・ステラチャージ!!」
洸は部屋で変身すると鏡の前で改めて自分の姿が映っているのを見て、最近このコスチュームも限界じゃないかと杞憂する。
「あ~、やめやめマイナス思考禁止!! じゃあこのまま、ステラチャージ・ヴェロチータ!!」
そして光が包み込むとコスチュームが変化していく。エメラルドグリーンに所々に黒のラインと両手両足首には金のリングが装着され髪型はポニーテールから普段の洸の髪型に近くなる。しかし色が金髪に変化していた。これこそが風の力を司る最速の形態だった。
「う~ん、やっぱり割と新しいからこっちは流行から外れてないわね……ま、私を目視で捉えるなんて同じステプレじゃないと無理か……」
そんな独り言を呟いて彼女は戸締りチェックをして素早く窓を開けた。外から鍵は閉められないがここは七階で普通の人間は入ってこれないから問題無いと考えて一気にジャンプした。
「さて、バレないように学校付近で変身解かなきゃいけない時間も考えて……あそこかな!!」
彼女の遅刻は何も今回が初では無い常習犯とは言わないが三ヶ月に一回は何かしらのトラブルが原因で寝坊はしていた。だからいざという時のために変身解除ポイントは確保していたのだ。
「ま、今は正体バレ気にしなくていい身分だから関係無いけど、理事長に見つかったら怒られるからねっと!!」
そして僅か数秒で学園の裏手の職員玄関の近くのコンビニの影で変身を解除し何食わぬ顔で登校を果たした。
「洸……またステプレの力を通勤に使ったのね?」
「げっ!? なっ、何でいるんですか神乃理事長……」
噂をすれば影とは言ったもので星守高校の神乃乙姫理事長兼校長がいつの間にか背後に立っていたが全く気付かなかった。
「先週とそして三日前にも言いましたよね? 今日は転校生が来ると……まさか忘れていたなんて事は無いわね?」
「アハハ……ま、まさか、そんな大事なこと……すいません忘れてました」
「はぁ、あなたは昔と変わらないわね……だから助かっているのだけど、でもヴェロチータの姿を見たのは久しぶりです」
「ええ、三年前の戦いから使ってませんから……っと理事長、転校生もですけど《《部活の方も》》後で話が有ります対策を考えないと」
そして理事長は頷くと放課後に五人で来るようにと言って先を促した。洸はそこで今回の忘れていた転校生が意外と重要なのだと考えを改めた。
「今回のお子さんは少しVIPなのよ……」
「まさか金持ちのボンボンとか?」
「ええ、まあ認識としては間違いでは有りませんが彼自身がこの町の出身者でかつ才能がある子なのよ帰国子女の飛び級でMITの博士課程を修了しているわ」
「はっ!? 博士!? 私なんて普通の学士課程ですよ、天才じゃない!!」
これはもちろん断己のことなのだが洸は気付いていなかった。それも当然で彼女はまだこの時は断己の事は新卒のサラリーマン程度にしか考えていなかったからだ。
「てか理事長、そんな頭良いのを私に押し付けるの止めて下さいよ」
「あなただからよ……それに彼の実家も凄いのよ多額の寄付までオマケ付きでね~」
「そんな事だろうと思いました……神様が聞いて呆れるわ」
そんな事を言っている洸だったが数分後に訪れる色んな意味で衝撃の出会いがあるなんて彼女は、この時はまだ知らなかった。
◆
「すまないな~夜剱くん、理事長も間も無く戻って来ますから」
「お気になさらず、急な転校に対応も大変だったのでしょうから、このくらいは覚悟していましたので大丈夫です」
昨日まで着ていた背広から高校指定の濃紺のブレザーにグレーのズボンを着て、すっかり星守高校の生徒となっていた断己は奇襲されても大丈夫なように万全の装備を整えていた。
「いやぁ~遅いなぁ……アハハ」
先ほどから良い感じでおべっかを使ってくれている男は教頭だという、中年も後半の域に入り頭頂部はピカピカと正に絵に描いた中間管理職だ。まさか待たされるとは思っておらず若干イラついていたが教頭の頭を見て気分を落ち着かせた。
(若干まぶしいがハゲなのは彼のせいでは無いからな……)
知人にも頭頂部が薄い人間がいるが彼も自分の意思とは無関係にハゲていた。そんな事よりも落ち着いて断己は自身の今日持ち込んだ装備を思い返す。
(盗撮用のカメラは二つ、盗聴器は五つ、そして自衛用のスタングレネードを四つとPM9を一丁か心許無い装備だが止むを得ないな)
そんな事を考えていたら廊下から話声が聞こえる。いよいよ来たか、さて開幕でどんな顔を見せてくれるか三度目いや四度目の挑戦だ来いステラ・ドゥーエ。そしてガラガラと扉は開かれた。
「強く輝く二等星、ステラ・ドゥーエただ今推参!! 今日も人々守護るわ!!」
「はぁ~?」
まずは教頭の度肝を抜かれた声が響いたがそれ所では無かった。散々警戒していたのに罠だと気付かなかったのだ。いきなり変身して目の前に現れるとは待たせたのも巌流島の宮本武蔵のように俺を焦らす事が目的かなどと考えていた。
「じゃ~ん、どうかしら夜劔断己くん、こちらがあなたの担任でこの町を守る正義のヒロインのステラ・ドゥーエこと八重樫洸先生よ」
その後ろから入って来た理事長が何の警戒もしないまま笑顔で紹介をし出した。これによって断己は改めて彼女を間近で見ることになった。
「えっ、は、はあ……」(どうして初手で攻撃して来ないんだ?)
「八重樫先生、こちらが夜劔断己くんよ、資料に目は通しているわよね?」
「ええ、そりゃあモチのロンって、あなたはああああああああああああ!?」
「え? あっ……純白だと」
この時、偶然にも断己が洸の変身後の姿のパンチラに目が吸い寄せられた結果、即座に反応が出来なかったから正体がバレなかった。普段の断己ならこの時点でスタングレネードを展開し銃を撃っていただろう。
「何で夜劔くんがここに居るのよおおおおおおおおお!!」
「へ? あっ、いや……俺は決してわざと見たわけじゃ」
話がかみ合っているようで全くかみ合わない二人だが結果的にこの瞬間までは互いに正体がバレる事が無かったのだった。
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