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1話

 王城の一室にて木霊した俺の悲鳴。


「……セト、貴方が悲鳴を上げるとは珍しいわね。だけど、貴方、今何の話をしてると思ってるの?」


「…す、すみま「執事たるものいかなる時も平常心で的確に行動をするものよ。あなたがこうやってアリス様の専属執事という名誉を承れたのはあなたがボーっとしてる、じゃなくて何があっても動じない心を持っていたからよ?それに急にどうしたの、あなたが大声を出すなんて産声の時以来じゃない?」」


 この、何というか、少し言葉がキツイ女性はサクヤ・バトラー。俺の母親、エルフである。


「どうしたんだ、セト。死んでた脳細胞が復活でもしたか?」


 心にぶっ刺さる言葉を流れるようにいう人間(モデルナ)の父親、セバス・バトラー、執事爵中位から辺境伯まで上り詰めた執事界における最強の成り上がり執事である。


「まぁまぁ、二人共。まだセト君は子供なんだから。いくら最高の執事と言われている二人の子だからって、そういうこともたまにはあるだろう。それにセバス、君も結構昔はやんちゃだったじゃないか。それにアリスもまだ来る気配すらないし、別にいいよ」


 この二人の幼馴染、もといアマデウス王国現国王、テオ・アマデウス。その双子の娘の妹の第三王女アリス・アマデウスこそが俺が使えることになったお方である。これから彼女と顔合わせを行い、5年後からは一緒に|

執事《お守り》として英育学園に入学する手筈となっている。筈だったのだが…未だにアリス様が姿を現さないのだ。まぁ、来るまでの束の間、状況を整理する。


 まず、ここはアマデウス王国、王都の王城内部の貴賓室。剣あり魔法ありな世界で、地球程科学は発展していないが、魔法によってカバーされており、向こうにあった便利なものは大体ある。社会レベルは中世ヨーロッパに近く、奴隷・貴族制度はもちろんある。


 次に()はというと、執事としての素質は最高だが、他に関しては微妙という、俺が知る限りまぁ普通な7歳男児である。ただし、執事にステータスを全振りしたみたいなスキルばかりだが。俺の家族は例外なく何かしらのユニークスキルを持っており、俺の場合は器用富豪という訳の分からないものである。名前からして、大体のことを平均よりできるってことだろう。執事たるものウンタラカンタラが我が家の家訓であり、何だかんだそれを理由に、子供にはどう考えても無茶な修行生活を送っていたらしい。ありがとう、前の俺!まぁ、元の俺といっても、心が抜け落ちた無愛想な子供だったらしいが。


 そして最後にアリス王女殿下である。双子姉、イリスは神童、聖女と呼ばれている一方で彼女は王家始まって以来の出来損ないと呼ばれている。そんな出来損ないのサポートに俺は回された。まぁ俺ができる子だと分かっていて親は選んだらしい。それに我が家には個性が些か強すぎるしかいないからな。


 コン…、コン、コンコンコココココココココココ「独特なノックですね!?」


「このノックの仕方はアリスの付き人だね。入っていいですよ」


「あら、あの娘まだ連打の癖治ってなかったのね。あとで締めなおしてあげないと(ボソッ)」


 母上の弟子に対する厳しさは魔王とやらの比ではないらしい(魔王討伐を手伝った国王談)。


「アリスお嬢様を連れて参りました、陛下。時間に遅れたことに関しましては、申し訳ございません」


 メガネの真面目そうなメイドさんに続いて入ってきたその子に俺は目も心も奪われた。背中まであるウェーブのかかった金髪はまるで空に輝く月のようで、父親譲りであろうクッキリとした碧い目、透き通った真っ白な肌。フランス人形さえ足元に及ばない純粋な可憐さ、そして美しさだけだったのなら、俺は喜んで忠誠を誓ったが、その艶やかな形の整った唇から発っせられた言葉は噂通り彼女の美貌に不釣り合いであり、俺は一長一短という諺を思い出してしまった。


「は?別にアタシ執事なんていらないわよ。それにこんなキモイ眼をしたやつなんて尚更よ」


(一同)『……』


「ア、アリス様、確かに彼は珍しい眼の色ですが、キモくは無いと思います…」


 グッジョブメイドさ「あなたの目と脳ミソは腐り果てているようね。彼の眼ほど気持ち悪いものはないわ。変態的思考構造の持ち主だけが持っている眼よ、この眼は」


 グサァ。俺ハメンタル二イチ那由他のダメージヲ負ッタ!

 だが、彼女の言い方は少し変だ。ヘンタイの眼、ではなく変態的思考構造…


「まっ、まさか貴方は!」


「話しかけないで頂戴、キモイ」


 ナイテイイカナ?…じゃなくて、彼女が”思想”と言ったのは俺の眼を見抜いたからだとしか考えられない。バトラー一族は全員が鑑定スキル、もしくはそれより上を持っている。中でも俺の体は上位の”解析”を持っていて、別世界の知識が加わったことで先ほど”識者の魔眼”へと進化した。鑑定系統のスキルの正体は覚えている事を記憶に常に留めておき、必要な時にその知識を引き出し、それ以外の知識と経験により詳細と状態を推測する、というものである。魔眼はその名の通り”魔”を通して視る、すなわち魔素の知識を会得し、99.9%の精度で推測する能力なのだが、習得には下地作りの為、彼女の言う通りの変態的思考構造で世界中の知識を覚えなければ到底得られないスキルなのである。それを目を見ただけで魔眼持ちであることを見抜けるのは、彼女が決して噂される程の出来損ないでは無く、寧ろトップレベルの天才であるということだ。


「無礼を承知でお尋ねします。貴方は、本当に、”出来損ない”なのですか?」


「ちょっ」「セト!」「え?」


「……下人。それは私を侮辱し、愚弄していると取っていいのね?」


「貴方がこの言葉をどう捉えてもかまいません。ただ、私は貴方の言う通りの変態的思考で知った真実を確かめたかっただけで御座います」


「……勝手にすれば」


 魔眼を発動する。


名前:アリス・アマデウス

種族:人間

年齢:8歳

レベル:3

職業:アマデウス王国第三王女

HP:70 MP:5000

STR:F AGI:F VIT:G INT:SS DEX:B

スキル:偽装 初級剣術 速読 高速思考 解析 魔力制御 魔力視 回復魔法 氷魔法 風魔法 時空魔法

称号:出来損ない 第三王女 実力者 努力家 変態的思考の持ち主 


………


「あの、二人共、仲良くし「お前も変態的思考の持ち主じゃねぇか!」」


「ッ…!だ、誰が変態的よ!っていうか言わないでよ!デリカシーってものが無いの?!」


「うるっせぇ!人を散々馬鹿にした癖にお前だって一緒じゃねえか!」


「こ、こら、アリス「お父様は黙ってて!私は高嶺の花のような存在だから見られる事も無いし、バレる事も無いから良いのよ!」」


「お、おい、セト「親父は黙ってろ!俺だって好きで鑑定系統のスキル覚えてる訳じゃねーんだよ!自分でやってるお前の方がよっぽどキモイわ!」」


『……二人共、分かってるよね?』


「「あっ…」」


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