私とあなたの7日間〜2日目〜
私は時間は守る方である。小さい頃から習い事をしていたせいか10分前行動5分前集合が身についていて、どんな時でも遅れたことはない。だから、待ち合わせ場所に行ったとき彼がすでにきていたことに驚いた。
彼は待ち合わせ場所にあるベンチに座って手帳を開いていた。今時、手帳なんてスマホで済ませられるのにわざわざ紙のものを持ち歩いているのは彼のこだわりなのだろうか。
お待たせしてしまいましたか?と聞いたら彼は僕も今来たところだよって笑って。多分嘘だ。
ちらりと見えてしまった手帳に書いてあったあの文字が頭の中をチラつく。デート、そうか異性と出かけるこれはデートなのか。そう意識するとまた少し寂しくなった。
特別な誰か、作らないようにしていたのに。傷つくことがわかっていて何故彼を受け入れてしまったのだろう。昨日の自分を恨んだ。
どこに行こうかと聞かれたから水族館と答えた。魚が、というより海が見たかったから。彼も水族館に行こうかと考えていたみたいで、2人で水族館へ向かった。
波に入ってくる光はとても綺麗で見惚れてしまう。魚を見るはずが、その美しさに目を離せなかった。彼もたくさん写真を撮ったようで、とても嬉しそうだった。
魚を見たあとは、お土産屋に入って2人でお揃いのキーホルダーなんて買って。なんて馬鹿なことをしたんだろう。こんなものを買ってしまったら、彼を忘れられなくなるではないか。
その後は近くのカフェでまたお喋りした。昨日は大学の話しかしなかったけど、趣味の話とかもして。彼は走ることが好きらしい。高校の時は陸上部で、大学に入ってからも度々走っているんだって。イケメンだからサッカーとかバスケとかしてるのかと思っていた。偏見かな。
私は音楽が好きで、将来は音楽で人の心を動かしたいっていう話をした。そしたら彼は黙ってしまった。そうか、彼もこちら側の人間だから取り繕う必要なんてなかったのに。
しばらく沈黙が続いた後、彼は先ほどとは打って変わってとても明るい笑顔で、どうして僕に付き合ってくれたの?って。私も誰かが欲しかったから。気がついたらそう答えていた。彼は不思議そうな顔をしている。それもそうか。私の過去なんて彼は知らないのだから。なんとなく彼をみるのが怖くて俯いてしまった。
彼は何か言いたそうにしていたけど、そのまま私たちは帰路についた。明日は?って聞かれたけど、このまま彼に依存してしまうのが怖くてやることがあると断った。本当はやることなんてないけど。じゃあ明後日だねって彼は笑って帰っていった。明後日も会うつもりなのか。