僕と君の7日間〜1日目〜
物心着いた時には胸に深く刻まれたあの日が世界の終わりなんだと分かっていた。テレビや新聞では度々世界の終わりの終わりについて論じられ、それに対して皆あーだこーだ言っている。突然隕石が落ちてくるとか、巨大地震が日本を襲うとか。
世界の終わりがどんなものなのか僕は知らない。知っているのは1週間後に世界が終わるということだけ。だからこうして今まで続いたことのなかった日記なんて書き始めている。もしも人類だけが滅んで世界が残るなら僕がいた証を残したいから。
さて、日記とは何を書いたらいいものなのだろう。続けようとしたことはあったけど、大抵が三日坊主、いや1日だけで終わってしまっていた。しかも内容は今日は何も無かったとかそんなこと。何もないのだ。日記にかけるようなことが。平凡な面白みのない人生を送ってきたから。
少し外に出かけてみようか。残り1週間。何も無い人生だった、なんてつまらないじゃないか。
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久しぶりに歩いた外は思ったより充実していた。とりあえず行くあてもないから、公園にでもと思って行ったんだ。
そこで僕はこの世でいちばん美しいものを見た。
公園を歩いてたら、ふと季節外れに満開な桜が目に入って。その下に、君はいた。僕は彼女に惹かれたんだ。一目惚れだった。
名前も知らない彼女だけど、何となく、僕と似ているなって思って。思わず話しかけてしまった。なんか僕らしくないな。自分から話しかけるなんて。でもそれだけ、彼女は美しかった。
ねぇ、なんて話しかけたら君は困ったように笑ってなんでしょうかって。何回恋をさせるんだ君は。
ご飯でも行きませんか?ってナンパみたいに誘ったら彼女は戸惑いながらも了承してくれた。
話してみると案外気さくな人で、僕たちはすぐに仲良くなれた。近くの大学に通う子で、僕とは1つ違いらしい。大人っぽい雰囲気だったけど僕の方が年上だったなんて驚きだ。専攻も同じだったからその話で盛り上がって楽しかった。
その後、また遊びに行きましょうって連絡先交換して、明日2人で出かけることになった。一目惚れで話しかけてこんなに仲良くなれるなんてあるんだな。今日はゆっくり眠れそうだ。
だけど、彼女が時折見せるあの寂しげな表情は何なのだろうか。