第一章『俺たちゃ陽気な盗賊団♪』
アグニ達を乗せた馬車はゼントが先導し、ミネルバ領地内をゆったりと走っていました。
馬車の中で寛いでいたピエタは、アグニに服を新調するように提案してきました。
「ええ、でもピエタ様、私このドレス、気にいっておりますのよ。お父様からの頂き物ですもの」
「これからの激しい戦いにはドレスは動き辛いじゃろう。魔力を増幅する装束がパパイヤンになら売っておるはずじゃ。今後はそれを着て戦うのじゃ、アグニよ」
「パパイヤンの武器防具の充実っぷりは世界でも指折りだ。きっといいもんが見つかるきに。値段交渉はウチに任せるぜよ」
「うむ。頼んだぞ、リョウマよ」
アグニはやや納得いかない様子でしたが、ピエタの意見を尊重することにしました。
「心配するな。いつでも服を変えられるようワシが呪文をかけてやる。戦闘の時だけ着ればよいのじゃ」
「わかりましたわ、ピエタ様」
「モンスターが来たぞ!」
馬車の外からゼントの声がしました。
「よし行け、アグニよ」
「はいっ」
アグニは馬車を降りて大地を力強く踏みしめました。
一方その頃、アグニ達が倒したべヒーモスの亡骸がある草原付近を、5人組の盗賊団が陽気に歌を歌いながら闊歩していました。
彼らの名前はポンカツ旅団。この地域では少しは名の知れた盗賊たちです。
「俺たちゃ陽気な盗賊団♪ 略奪! 強盗! 雑魚いびり~♪」
「俺たちゃ陽気な盗賊団♪ 犯罪 手を染め 生きている~♪」
ポンカツ旅団の構成員の一人が、べヒーモスの死骸を見つけ、団長のポンカツに知らせました。
「団長、あのべヒーモスが死んでますっ」
「なんだと?」
盗賊たちはべヒーモスの躯に接近し、よく観察しました。
「信じられない。この地域を牛耳ってる怪物だぞ・・・」
「一体誰が・・・」
「そんなことはどうでもいい。肝だ、肝を取り出せ!! 高く売れるぜいっ」
しかしべヒーモスの肝は綺麗に無くなっておりました。
「何? 肝が、肝だけが綺麗に取り除かれてる!」
「きっと金目的で殺傷したんですよっ」
「なんて奴らだ。俺達の肝をっ悪党めえええええ」
団長は自らの日ごろの行いを棚にあげて怒り狂い、激しく地団太を踏みました。
「団長、歩道に馬車の車輪の跡がありますぜ」
「何?」
「きっと倒したのは別の誰かで、この馬車の持ち主が肝だけ取り出して持っていったんですよ!」
「そうか。ようし、お前ら! 肝だ! べヒーモスの肝を泥棒から奪い取るぞっ」
団長の号令に合わせて、構成員達は声を上げると、全力疾走で馬車の車輪を辿っていきました。
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