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第196話『ダンジョン内のお食事事情』

しばらく戦闘を繰り返しながら迷宮内を探索していたアグニ達でしたが、小腹が空いた為、開けた空洞で一休みし、リョウマにもらった食料に手を付けることにしました。


 さっそく漣が神秘の封印から奇跡の箱を取り出し、中身を改めます。


「さてと、何が入っているのかしら」


 流石の漣も、少しお腹が空いていた様子です。


「何が入ってたんだい」


 勇者の問いかけに、漣は即答しました。 


「柿の種」


「ほう、米菓子か。他には」


 ピエタも漣に問いかけます。


「・・・柿の種です」


「・・・他には何が入っているのです」


 ペロッティも漣に尋ねます。


「入ってません。柿の種と、水。それ以外、食料は、入ってません」


 漣は今にも泣き出しそうな表情をし、茫然とする一同に視線を向けました。


「なんと。とはいえ、こんな危険な迷宮内で、のんびり食事なんてしていられないしのう。飢えなきゃよいし、歩きながら食べられるし、非常食だと思えば、割と合理的じゃて。ペロッティの料理が楽しみじゃったが、ここは我慢するとするかのう」

 

 ピエタがリョウマの考えに理解を示し、必死に擁護します。ペロッティの料理を食べたいと期待していた漣は、無表情で奇跡の箱から柿の種の入った小袋を取り出し、封を開くと、一粒口に含み、「あっこれ、凄く美味しい」と瞳を丸くして唸りました。他の者達も、続いて箱から取り出し、小袋の封を開き、食べていきます。


 一方、その頃、リョウマ達も禁朱城に入って直の広場で、歩きながら柿の種を食べていました。


「どうでもいいですけど、一体なぜ柿の種なんです、リョウマ様」


 ピッケルが不服そうにリョウマに声を上げます。


「昔遺跡でゼントと悠長に肉焼いて食ってたら、臭いにつられてやって来た巨大な怪物に襲われて、散々な思いをしたことがあってな。ダンジョンってのは、死地も同然。悠長に飯など食ってるときに怪物に襲われでもしたら、ひとたまりもない。柿の種はおやつだが、実は非常食にもなるき。軽くて栄養価も高いし、塩分も取れるし、歩きながら食えるしで、登山や探索中の食事には色々都合がよいぜよ。これさえ食ってれば、飢えることもないしな。だから皆も、安心して今のうちにボリボリ食え。美味いもんなら、あとで幾らでも食わしてやるき」


「そうはいっても、これは中々ピリッとしてて辛いですよ。逆に食欲が進んでしまいますね」


 ミヨシとハインは柿の種をボリボリと音を立てて食べていました。


「ウチはもう、大きな音を立てなくても食えるようになった。おまんらも努力しろ」


 一方、アグニ達も同様、柿の種を食べる手が止まりません。特にアグニが音を立てて大量に入っていた柿の種の袋を次々開き、上品な桜色の唇をあられもないほどに大きく開けて、流し込むように次々平らげていってしまいました。


「うむっこれは美味じゃのう。このピリッとした食感がたまらんわい」


「これはお酒に合いそうですね」


 グラウスも食べる手が止まりません。


「いけるいける、これ全然いけるって」


 勇者も満足した様子で音を立てて食べていました。


「ええ、絶品です」


 ペロッティまでも食べ続けていました。


 皆は節制して慎重に食べていましたが、アグニがグラウスの分まで奪い取り無尽蔵に食べ続けていた為、見かねた漣が吠えます。


「もうっアグニ、なんでそんなに一気に一杯食べちゃうの!? まだ先は長いのよ? これ以外食べるもの何もないのに、これから一体どうするつもりっ」

「そんなこと言われても、しょうがないじゃない。これ、一度食べたら止まらなくなるんですものう」


 アグニは悪びれもせず、純粋無垢な瞳で言い切ります。 


「だからもうそれ以上食べちゃ駄目だって。あなたの分は私が管理するっほらもう残り一袋だし、後は一日一粒で我慢しなさい。ピーナッツはおやつにしてね」


 そう言うと、漣はアグニから柿の種が入った袋を奪い奇跡の箱を閉じ、神秘の封印に封じ込めてしまいました。当然のように高圧的に不満を述べるアグニに、漣は容赦なく否を突きつけ続けます。アグニは頬を膨らませ、威力の高い炎魔法の詠唱を始めました。あわててグラウスが悪役化した令嬢を止めに入り、その場は事なきを得たのでした。



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