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第175話 『極炎の怒り』

 処刑台の前では、アグニ達とマガゾの兵士達がにらみ合いを始めました。


 グラウスが土魔法を駆使し、兵士達の足に土を絡ませ拘束し、ライカールトは斧を振りかざし、威嚇しています。


「お嬢様。軍人とはいえ相手は人間っ無茶はいけませんよっ」


 猛るアグニを、ライカールトは諌めます。アグニ達は、軍部の肥満体質でカバのような醜悪な容姿の兵士達とにらみ合っていました。


 このままではラチがあかないと感じたアグニは、その様子を見ている民衆に対して、声を張り上げて叫びました。


「皆さん、このリッヒ・シュワルツァ様は、トガレフに操られていただけで、一切の罪はありませんわ。この国を救うために、トガレフを打ち倒した、勇敢な戦士です。あなた方は過去にも彼に命を救われ、そして今度も救われたのでしょう? 2度も民の為に国を救った英雄を処刑するのですか? マガゾの民はそこまで残酷無比なのですか? 少しは頭を冷やして考えてくださいませっ」


 アグニは右手に炎の魔法を出し、兵士達をけん制しつつ、説法を始めます。


「黙れ、小娘っわが国の内政に口を出すなっ」


 遅れて姿を現した他の兵士達よりも輪をかけて肥満であり、カバにしか見えない容姿をした司令官が、アグニに辛らつな言葉を叩きつけます。その肥えた体は、痩せた民からの搾取の象徴なのです。


「何ですって? やる気? 本当にあなた達は血も涙もない、自分たちの保身しか考えていないロクデナシねっ誰かが責任を取らないといけないと言うのなら、まずはクーデターを起こし王政を崩壊させ、平和だった国を悪戯に混乱させた、あなた達が取りなさいよ、このカバブタ共ッ」


「かっカバブタだと?? おのれ、もう許さんぞっ皆の者、構わんっこの娘達諸共葬り去れっ」


 司令官が部下に命じた、その時でした。


「ちょっと待ったっ」


 リョウマが竜から飛び降りて、アグニと軍部達の間に立ち尽くしました。


「今度は一体何者だっ?!」


「ウチ、いや私の名前は、スセリ・サラバナ! サラバナ王国の、第三公女であるっ」


 リョウマは懐から小さなべヒーモスの肝の入ったサラバナ王家の紋章を、軍隊達に見せ付けました。


「そっそれはっ間違いなくサラバナ王国の紋章。まさか、本当にスセリビメ?!」


 司令官を含めた兵士たちは直ちに態度を変え、彼女にひれ伏しました。


「あなた方軍事政権の、力による一方的な体制の変更と武力の行使は、悪戯に民を苦しめるのみである。そのようなことを行う国に、未来はないっこのままではマガゾは滅んでしまいますよ」


 リョウマの発言は、兵士たちに衝撃を与え、更に親サラバナ派の民達を動揺させました。その後リョウマもアグニと同様、民達に語り掛けたのです。


「皆、よく聞いてくれ。人の命を奪うという事は、その人の可能性や未来をも奪う行為だっ。罪人ならともかく、リッヒは違うだろ?? 彼は六年前、この国を救うために血を流した。獣教が現れたときも、返り討ちにあったが、血を流す覚悟で止めようと挑んだ。決して望んで、悪に落ちたわけではない。トガレフに操られていたのだっ彼こそが、このマガゾを救うために孤軍奮闘していた、真の英雄だっ。そんな彼が、一体何のために、誰の為に、血を流し続けたと思っているのだっあなた達民衆のためであろうがっそんな国の英雄の処刑を、もしマガゾ人が無慈悲に受け入れるというのなら、このスセリ・サラバナ、絶対に許さんぜよっ」


 スセリの言葉を聞いたマガゾの民衆達が、ざわつき始めました。民の中にもリッヒの処刑はやり過ぎである、と考えている者が多数いたのです。


 そしてリョウマが必死に処刑をやめさせようとしていたときでした。


 城の枕木に足をかけていたアンシャーリーの瞳から大粒の涙が落ち、アグニ達のいる台の上に零れ落ちてきたのです。アグニが台に落ちてきた巨大な水滴を見て悲鳴を上げます。


「アンシャーリーが・・・涙を・・・流している・・・」


 ハインが頭上に聳えるアンシャーリーの顔面を見やりました。


「・・・皆の者、もうこれ以上、愚かな真似はお止めなさい・・・」


 巨大なる竜、アンシャーリーは、綺麗な女性の声色で、そう民達に語りかけたのです。


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