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第157話『クラミツハ』

 ハルバードの修行を終えたアグニとライカールトが、ピエタの病室にやってきました。


 そして勇者は引き続き漣を凝視します。



「特殊能力は、完璧なる模倣イミタゼーション、魔人化、神秘の封印、完璧ヘアメイク、超強力デコピン、聖なる産卵、真・女神の祝福・・・だって」


「信じられない。私の知らない特殊能力が沢山あった。闢眼エクスターレは特殊能力扱いじゃないの」


「記載がないね」


「その、神秘の封印というのは何じゃ?」


「この特殊能力は、数は100個と制限あるけれど、武器とか防具、アイテム、水、食材、その他、人間とかも異空間に封印して、いつでも自分の意思で任意に出し入れできるらしい」


「ほお~ウチのカバンと似てるなぁ~」


「そっか。私の大鉈も、神秘の封印っていう力で無自覚に出し入れしてたのね。」

「どうやらそうみたいだね」

「じゃああと、98個は色々異空間に封印できるってことでしょ? ラズルシャーチへの道中は、私が荷物持ちになるわ」

「うむ、それがよいであろう。して漣の特殊体質は?」


「少ないね。善人、女神の資質、滅びゆく民、うめ子、の4つだけだ。」


「ふむう・・・女神の資質か、魔族の血が入っているのに、不可解じゃのう」


 口から出た言葉とは裏腹に、滅びゆく民と聞いたピエタの脳内では、とある種族の存在が浮かび上がっていました。大賢者である彼女には、そう呼ばれる種族には心当たりがあったのです。しかし、漣が滅びゆく民である、という事実と、神のエルーガが何を意味するのかまでは推察できずにいました。純潔の血を引いていることを理由に正式な大賢者としてトガレフの名を告げなかったピエタは、大賢者としては不完全な存在だったのです。


「超強力デコピンって、ひょっとしてキリアンにやったやつが・・・・・」


 漣は、自らがデコピンで部下のキリアンを気絶させてしまったことを思い出し、自分の持っている特殊能力に少し傷ついている様子でした。


「ところで、何でリョウマがつけた私の変名が、もう特殊体質になってるわけ?」


「さあ、どうしてだろうね。でもこの特殊体質、凄いよ。この名で呼ばれると、精神状態に呼応して基礎体力が上がったり、免疫力が高まったり、レベルも上昇することがあるみたいだ。まあ僕達には自分のレベルなんて、よくわからないけどさ」


「ふ~ん・・・そうなの」


 漣は少し白けた調子でした。 


「では、最後に。ついでだからリッヒも見てもらうとするかのう」


「よしっいくよ、リッヒ君」


「ああ、見てくれよ」


 勇者は疲れた瞳を閉じて少し休ませた後、再び開き、視線をリッヒにあわせました。


「本名。ん? す? スメ・・・ラギノ、ミコ、ト?」

「おい、俺の名前はリッヒ・シュワルツアだぞ」

「でも、すっスメラギノ?ミコトって表示されてるよ? なんか小難しくて、発音しづらいね」

 

 勇者の言葉にリッヒは首をかしげつつ、まあいい、俺はリッヒ・シュワルツアだ。と自分で納得した様子でした。そしてルクレは話を続けます。


「種族、竜神。特殊能力は、生魂腐敗サハラ・ブースター・・・ってのはトガレフのときに使ってた技だね。他には極大究極竜神魔法・神竜の熱閃ドラガニッシュ・グラリオンもあのとき使ったやつ、更に竜神化も、竜召喚ってのは何だろう、竜使役ってのもよくわからない、竜憑依?、卵化?、竜神の激? う~む。特殊体質は、クラミツハの加護、竜神の誇り、聖女の守り手、研究者、親分肌、全状態異常無効、魔法中耐性だって」


「極大究極竜神魔法・神竜の熱閃ドラガニッシュ・グラリオンは、竜神にならないと使えないはずだが?」


「今はもう、素の状態でも使えるようになっているみたいだよ」


「どういうことだ?」


「リッヒよ、お主は突然卵になったであろう。恐らくは、その卵化という特殊能力と何か関係あるのであろう。卵化の詳細を見てくれぬか、勇者よ?」


「え~っと、卵に戻る事で、孵ったときに、新たな特殊能力等を覚える事がある。卵化するほど孵るまでの時間が長くなる・・・だってさ」


「ほう、そういうことか。神竜の熱閃ドラガニッシュ・グラリオンを素の状態で使えるようになったのは、そのためであろうな。しかし、リッヒのレベルは相変わらず解らぬな」


  リッヒは自分の本名はともかく、自分でもよく解らない特殊能力の数々に困惑している様子ですが、ピエタは納得したように頷いていました。


「レベルか・・・。僕にはよくわからないけど、この中央世界では、レベルが10万を超えると、普通の人間には見えなくなるんでしょ。何とか工夫して、レベル10万以上の奴のレベルが解るような能力を作れないかなあ・・・」


 勇者は顎に手を置き、今後の戦いに役立つ新たな特殊能力をいかに精製するかを考えて始めていました。


「クラミツハの加護・・・クラミツハって、誰だ? 大賢者さん、何か知らないかい」


 リッヒの疑問に、ピエタが答えました。


「その名は知っておる。偉大なる炎の神、カグツチ様がニニギノミコト様に剣で切り殺されたときに、剣についた血から生まれた高尚なる神々の中の一人でな。タケミカヅチ様と同格、厳密に言えば兄弟で、雨、または水を司る竜神とされておる」


「たっタケミカヅチって、ガレリア王国の神と同格だと? ってことは、カグツチの子供なのか? 一体どうして、そんな神の加護を、この俺が受けているんだ」


 リッヒは少し考えましたが、自分自身が、悠久の昔、何者かに殺害された前世のハインと再会するために転生してきた特異な出自であることから、マガゾの過去の歴史、そしてクシャーダ人と何か関係があるのだろうと考え、今はそれ以上、深く考えるのを止めました。

 リッヒ自身、自分自身の過去の記憶が既に朧気であるため、ハインが前世で誰に殺されたのかも覚えていないのです。しかし、ハインが何者かに殺された、という記憶だけは鮮明にある状態でした。事切れたハインの亡骸を抱きあげた記憶が頭の中に存在するからです。一方、現世に生まれ変わり聖女になったハインは、自分が前世でアメノウズメという名で呼ばれていたことと、なんとなく誰かに殺されたような記憶がありましたが、その相手の顔までは覚えていませんでした。彼女自身も見たことのない相手でしたが、フードを被っていたものの、小柄で細身な体格や所作、花の香がしたことから、なんとなく女性かも、とは感じており、リッヒには打ち明けていました。


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