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第144話『神の化身』

 流浪との会話は、アグニの正体へと近づいていました。ゼントは口裏を合わせるように質問します。


「・・・神の化身がいると、どうなるんだ?」


「神の化身だけには、神獣も、神兵も、絶対に攻撃してこない。そして神の化身は泉も使用出来る。もし日ノ本へ早く行きたいのなら、神の化身を探し出す事だ。その者を連れ、共に行くがよい」


 神の化身、は、か。他の者は泉を普通には使用できないのだろうか? ゼントは思考を巡らせつつ、冷めた瞳で流浪と視線を合わせ、「・・・・わかった。」と低い声を絞り出します。


「ただし、神の化身の寿命は極めて短い。神が再び現世に顕現する為の素体だからな。この世に生を受けたとしても、18年生きられないだろう。」


 アグニ・モントーヤ・シャマナは、16歳になって間もないです。彼女に残された猶予は、最大でも2年です。


「神の化身から、神だけを取り出す方法は、あるのか?」


「悪いが、それは神・・・の使い、及び神にも分からない。日ノ本の者が、何か知っているかもしれないが、必ずや、とてつもない代償を支払うことになるであろうな」


 代償。アグニに待ち受ける残酷な運命を想像したゼントは、一瞬顔を曇らせます。そしてそんな美青年の刹那の表情の変化を、流浪は見逃しませんでした。


「・・・他に、何か聞きたいことは無いか? 無いなら、余はそろそろ禁断の地にいくぞ」


「禁断の地に? 何の用だ」


「最奥にある、前世の湯を破壊しに行くのだ」


「・・・ほう。何故?」


「・・・闇に落ちた女性神が作った、極めて危険な物だからだ。このまま放置しておけば、大変な事になるだろうと思ってな」


「・・・・そういえば、この辺り、少し臭うな」


 ゼントは顔をしかめ、鼻をつまむ仕草をしてみせます。


「確かに、異常な臭いだ。昔、余が姉上の前で致した糞よりも臭う。」


「流浪・・・お前、人前で糞したのか?」


「ああ。男は、人前で糞が出来るぐらいの豪胆さがないと駄目だぞ」


 やや冷笑気味に、流浪は薪をくべながら、言いました。不快感を覚えたゼントは、糞が・・・、と小声で呟きます。


 そのときでした。ハインの聖女の祈りが、ゼントの心に響いたのです。


「(お願いします・・・誰か・・・助けに来て下さい。お願い致します。聖女の祈りよ、届いて下さい)」


「この声は・・・ハイン?? ハインなのか??」


「どうした、ゼント?」


「俺の仲間が、助けを求めている。」


「何だと? どれ、少し様子を探ってみるか」


 流浪は目を閉じ、精神を集中させました。


「・・・今、マガゾの国民達が大変な目に遭っているようだな」


「一体何が起こっている?」


「怪物となった者が、象皮病という病を、自ら使役している悪霊を使って蔓延させている。しかも、ただの象皮病ではない。死亡率が極めて高いようだ。既に人口の3割が、病に冒されている。このままでは、今度こそマガゾ人は滅びるかもしれんな。」


「マガゾが、滅びる・・・だと?」


「そしてどうやら勇敢な戦士たちが、その怪物を倒そうと、総員で死闘を繰り広げているようだが、危機に瀕しているな、リョウマもいる」


 勇敢な戦士たちと聞き、ゼントはアグニ達の姿を思い浮かべました。そしてリョウマの身も案じ始めます。


「・・・場所はっ場所はどこだ?」


「禁足地の近くにある、一番東に聳える断罪者の塔の最上階だ。急げっリョウマが殺されるかもしれんぞ。既に死の危機に瀕している者もいるようだ。余の力で近くまで送ってやろう」


 リョウマが殺される。その言葉を聞いたゼントは、直に立ち上がりました。


「あわてるな。ゼントよ、お主に一つ忠告しておく」


「なんだっ」


「己が欠点を己で見出し、改善を続けていく事こそ、もののふの道。レベルが上がったからとて、決して慢心してはならぬぞ。自分は強くなった、という錯覚が、常に自らを軽々と死へと誘うものだからな」


「・・・・承知した」


「・・・もし今度また会えたとき、余と一度手合わせをせぬか? 全身の血が疼いてきて、たまらんのだ」


「好きにしろっそれより流浪っお前、神の使い等とつまらん嘘をつきやがって。一体、何者だ?! 名前ぐらい名乗れっ」 


「ふ・・・猛るな。全ては、次だ。次に巡り会えたそのときは、余の正体を明かしてやるっさあ今は行けっその破壊的な武の力で、怪物如き、ねじ伏せてみせよっ」


「上等だ。怪物も、貴様も、完膚なきまでに叩きのめしてやるっ今度会えたらの話だがなっ」


 そして決戦に備え身構えるゼントに、流浪は近くに落ちていた薬を手渡しました。剣士が受け取った薬は、グラウスが錬金術で作った秘霊薬でした。ゼントは秘霊薬を、腰元に装備しているサイドパックに詰め込みました。



 こうして、ゼントは流浪の、特定の相手を任意の場所に瞬間移動させる能力によって、最終決戦の地、断罪者の塔に転送されたのでした。


「ゼントよ・・・次に会う日まで、とりあえず、勝ち続けろ。だが、日ノ本へは行かせぬぞ。日ノ本へ行くことだけは、絶対に許さぬ。もし行こうとするのなら、そのときは、余が壁となり、お前を、この手で・・・」


 こうして、流浪こと、とある武神の名声を欲しいままにしていた初老の大男は、一人禁断の地へと歩を進めていったのでした。 


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