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第134話『復活した者達』

 時を遡って少し前、レジスタンスのアジト前の壁にもたれかかり、気を失っていた漣が、意識を取り戻しました。


「・・・・はっここはっ私は一体っみんなはっ」


 漣は周囲を見回しましたが、巨大な竜が一匹がいるだけでした。そして自らと同様に意識を失っていたペロッティとライカールを視認したのです。その後彼女は、自らが大金をはたいて買った胸当てが破損しており、豊かな胸が露わになっていることに気がつきました。


「そんな・・・一体あの魔法、どれほどの破壊力だったのよ・・・」


 漣は直ぐに使い物にならなくなった胸当てを脱ぎ捨て白い下着姿になると、ミニスカートのポケットから、昨夜リョウマから購入した非常時に使う包帯を取り出し、胸を抑えつけるよう上半身に巻きつけ、立ち上がりました。「ったくもう、ホントに、この胸、邪魔っだから私の肩こりは治らないのね」と愚痴を零しました。丁度その一部始終を見ていた純情なペイトは、頬を赤らめもじもじしつつ、少し申し訳なさそうにアジトから姿を見せ、男勝りな女戦士に声をかけました。


「あの、さっ漣さん・・・、意識が戻ったんですね? よっよかったです、その、色々、あっいえ、その、そういう意味じゃなくて・・・」

「あっペイト? 皆はどこにいったの? というか、そういう意味って、一体どういう意味?」

 

 漣はじっとりとした眼差しをペイトに向けます。


「いいえ、その、べっ別にっ何でもありませんよっ気にしないで下さいっ僕は何も見てませんからっほっ本当ですよっ」

「そう? 見ていないって、何を見ていないの? ・・・ま、別にいいけど」

 

 貴様、さては見ていたなっと心の中で思った漣でしたが、状況が状況なだけに、その言葉はぐっと飲み込み、特にそれ以上の追及はしませんでした。ペイトは力強く咳ばらいをしつつ、真剣な表情で自らの使命を全うし始めます。


「そんなことよりっ大変です漣さんっ今、マガゾの民達が次々と病に倒れて、死に向かっている状況ですっ。レジスタンスのメンバーと医療団が必死に看病していますが、それも限界ですっ時間との戦いになってるので、大賢者様達は、あなた方を置いて、先にトガレフを討伐しに行ったんですよっ」

「何ですってっ大変っ急いでかけつけなきゃっ」


 漣は、大急ぎで、直近くで恍惚の表情を浮かべ倒れていたペロッティと、更に意識を失っていたライカールトを、それぞれ力一杯、両頬を起きるまで「起きてっ二人ともっ起きなさいっあなた達が起きるまでっ叩くのを止めないわよっほらっほらっ早く目を覚ましてっいい加減にしてっ起きなさいっおっきっなっさっいっ」と叫びつつ、力の限り、時には握り拳を交えつつ、平手打ちし続けました。その凄惨すぎる光景を見ていたペイトは、これはやりすぎではないかと思いつつも、恐怖で動けず見守っています。そして二人は頬を腫れ上がらせつつ、意識を取り戻しました。


「あ・・・あれ、私は? 漣様?? というか、うっ頬が・・・」


 ペロッティはうっすらと開いた瞳で漣を見つめます。その後頬に激しい痛みを感じ、手で抑えました。

「私は、一体・・・何を?? む、なんか頬が・・・」

 ライカールトも意識を取り戻し、元の勇ましい武人の表情に戻っていましたが、やはり頬に激痛を感じ、直ぐに手で抑えました。

「二人ともっ大変よっ皆が先にトガレフ討伐に向かっちゃったのっ私達も後を追わないとっ」

「なんですって?? それは本当ですか? 漣様??」

「本当ですっ僕が伝言役に任命されましたっ残った皆さんは、今頃トガレフと戦っているはずですっ起きて早々恐縮ですが、大至急駆けつけてくださいっ」


 ペイトが、まだ状況を飲み込めていないペロッティとライカールトに熱意を込めた言葉を発しました。


 事態を把握したライカールトは頬の痛みと腫れなどどこ吹く風で、自らの周辺においてあった手書きのメモに気がつき、手に取ると、目的地の場所を確認します。全てを理解した武人は意を決した様子で、右腕に巻きつけられたロープを地面に垂らしました。


「二人ともっこのロープに掴まってくださいっ目的地までテレフネーションを駆使しますっ」

「えっ竜で行かないのですか?」


 ペイトはトガレフのいる場所には巨大な怪物がいること、砂漠地帯であることなど、現地の危険性を伝え、竜で向かうべきだと進言しましたが、武人は首を縦に振りませんでした。


「いえ、事は急を要します故。私のテレフネーションを駆使すれば、ここから2分もかからず着く距離のはずです」

「わかったわっお願い、ライカールトさん」

「頼みます、ライカールト殿」

「では我々は至急戦地へ向かいますので、ペイト殿も、お気をつけて」

「しょっ承知しました・・・みっ皆さんのご武運を祈ってます。」


 漣とペロッティの二人がロープを掴むと、ライカールトはテレフネーションを使用し、その場から姿を消しました。


「さっ漣さんって、怖いな・・・あれが魔族の本質か。容姿からしてエルフかな? と思ったんだけども・・・」


 三人が過ぎ去った後、ペイトはポツリと呟きます。しかし、直ぐに「はっぼうっとしてる場合じゃないっ急がなきゃっ患者が待ってる」と本来の精悍な顔つきになり、アジトに避難してきていた民間人の治療にあたりつつ、レジスタンスのメンバーと医療団と連絡を取り合うという、本業の医師の姿に戻っていきました。


 ライカールト達三人は、一回目は砂漠地帯の上空に顕現しました。直にアグニ達が交戦している、最上階が崩壊している塔が武人の視界に入ります。「どうやらあそこのようですね」と、瞳を尖らせました。突然自らの体が空に投げ出されたことに戸惑いを覚えた漣が、多少甲高い悲鳴を上げ、手足を右往左往させています。


「今一度テレフネーションを使いますっ二人とも、もう一度ロープを掴んでっ絶対に離さないようにっ落ちたら命はないですよっ」


 ライカールトにそう言われた漣は必死な表情で腕を伸ばし、まさに命綱であるロープを何とか掴みます。テレフネーションで無茶な移動をした経験のあるペロッティは落ち着いており、獣人族のコアラ姿に変身し、丁寧な所作でロープに手をかけました。二人がロープを掴んだのを確認し、再びライカールトはテレフネーションを使用し、そしてアグニ達が死闘を繰り広げている塔の上空へとやってきたのです。


 三人の視界に、暴れまわるトガレフと奮戦する勇者、倒れ込むマテウスとリッヒ、グラウス、必死に攻撃しているアグニとリョウマ、そして出血しているピエタと、それを介抱するハインの姿が映り込みました。


「どうやら戦局は芳しくないようですね」

「ペロッティっ時空魔法よっまずはあの巨大な怪物の動きを遅らせてっ」

「了解しましたっ漣様っ」


 そしてペロッティはコアラの姿で二人よりも先に急降下していき、愚か極まる愚者へ《イグナ・ネオメガ・アンプロポス》を唱えたのです。

 



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