ストーカーと塩づくり
相変わらず推しのために頑張ってから回っている。
全力でやっていますが、あまり効率も良くなく空回っている。
でも根気と熱意はあるので頑張っています。
今日も今日とて推しが尊い。
それを陰ながら見守り、援護するのが今世の使命だと断言できる。
一応神の使いの一種ですが、神様からのお告げも神託も一切ないので全力で推しにお布施をする方法を考えています。
推しは現在辺境伯の御屋敷に預けられているのですが、その辺境伯は名家ですがここ数年の度重なる不作により飢饉に瀕しています。
魔物を狩ったり、盗賊をしばいたりして小金とTPを稼いでいます。
もし反乱でも起こされて、推しが襲われたらたまんねーので少し手を貸してやります。
そのせいか、領主のおっさんが私を崇めるようになった。
趣味が悪い。むしろ推しを崇め奉れ。
私は潰れまんじゅうフォルムに三角のお耳が二つ付いたシンプルイズザベストの極致であるデフォルメが標準装備。おめめは最早点が二つ。マズルは常に笑っているようだが、別に楽しくない。地だ。
ただ首から下は八頭身+白全身タイツスタイル。幼児用タイツばりの200ディニールくらいの白さだ。毛玉はない。あったら泣くわ。
己の容姿を再確認して絶望。
うん、おもっくそ悪夢だ。神の使いよりモンスターより。むしろネタキャラじゃねーか。
まあそれは置いておきましょう。
推しには綺麗で安全なおうちに住んで、美味しいご飯を食べ、ふかふかの暖かい布団で双子の弟妹達と健やかに過ごして欲しい。
推しの幸せが私の幸せ。
食糧問題だが一応は魔物だという猪や牛や鹿を毎日数十匹くらい狩って辺境伯に押し付けている。肉や毛皮とか、色々素材になるからね。肉は領民に配って、素材は金にして穀物を買えと夢枕でケツをしばきつつ指導している。
ちなみに最初は蹴りだったけど、迂闊にすぱーんとやると夢から追い出してしまうので、ハリセンに変更した。
アインズのおっさんは、最初、お金を推したちに使おうと考えていたらしい。普通に飢饉レベルに飢えている領民にそんな噂流れてみろや。目も当てられないことになる。
明日のパンにも困っている領民ほっぽって王族の接待。
普通に蜂起するぜ。
俺たちが飢えて苦しんでいるのに、領主様はブルジョワごっこかよって。
そもそも推しのお世話は私がやんだよ! テメーはすっこんでろや! そこそこに居場所をキープしてくれればいいんだよ!
とか別に思ってないヨ。
ホントだヨ。
推しに美味しいご飯を振舞いたくて、スマホ的な神様からもらった端末を見つつ料理をする。
ふと、手に持ったお塩に違和感。なんか灰色っていうか? 濁ってない?
アヤネコアイがきらりと光る。レッツ鑑定!
『粗悪な塩』
不純物が多い塩。砂などが混ざってかさましされている。
カーッ!? なんじゃこるぁああ!?
推しのお口にこんな粗悪品を!? どっから手に入れてんだ!
フェルゼン、テメエこの野郎!? お前もケツの割れる呪いをかけられてえのか!?
軽くボコって血尿出る程度にしばいてやろうと思ったら、どうやらこのお塩はお隣の領地からはるばる輸入しているらしい。お塩は基本高いらしい。岩塩とかこの辺は出ないそうです。
へえ。
お塩って海水あれば作れる? フェルゼン領って魔物が多いお山の向こうが海のはず。
タダ塩を作ればよくない? 理科の授業みたいに煮詰めて作ればよくない?
なんて安易に考えて海水を集めて魔法でぐつぐつ煮たらめっちゃ苦い塩ができた。マッズ!? なにこれ。えっぐい味するんですが!?
色々調べたけど、海水には不純物が多いから煮詰めるだけじゃ不味いらしい。
濾過したり、灰汁みたいなのすくってみたり、逆にハーブとかレモンを足したり色々やってみた。
失敗作がいっぱいできたけど、フェルゼン領が塩不足だと思うと捨てるのももったいないのでよっぽどヤベーもの以外はアヤネコトランクルームに入れといた。
普通に喜んで使っているアインズ・フォン・フェルゼン辺境伯。
いいのか、粗悪品よりマシ程度なのに。
最終的にできたのは沖縄の某お塩みたいなのだった。
普通のお塩っぽいのは何でできないの……?
あのざりざりした塩の結晶って意外と作るのは大変と実感。
だけどお塩チャレンジを何回も続けていると普通になんちゃってお塩が余ってくる。
フェルゼン領は塩不足から一転、塩が飽和状態になっている。
アインズのおっさんはお塩が貴重だという頭があり、貯蔵したいとどんどん貯めこんでいるけど普通にやめろや。それは未だ試作段階だし、まだまだ増えるぞ。
推しに美味しいお塩を作るまで、アヤネコ諦めない。
というわけで、夢枕に立って『領民や他の領地にも配ってあげるのです』『他所よりほんのりとお安い値段で売渡すことにより恩を着せるのです』とお告げをする。
隣の粗悪な塩。あれでも売れるなら普通にいけるんでね?
結論から言えば、アインズのおっさんは塩を売ったけど塩不足は他所も一緒だったらしい。隣の粗悪塩を仕方なしに買っていたが、そこより安くていいお塩が手に入って大感激。おっさんは滅茶苦茶感謝されたらしい。
おっさんの評価はどうでもいい。
ただ、おっさんが崇めていた手のひらサイズの潰れまんじゅう石が漬物石サイズにグレードアップしたのは解せない。
海水を手に入れるついでに海に潜って手に入れた海産物。
しこたまぶち込んで牛乳で煮たクラムチャウダー。
推しはシーフードが好きかは分からないけど……こっそり夕食を眺めていると、推しは見たことの無いものが入った『変なミルクスープ』を胡散臭そうに一瞥した。
何も知らないと貝って結構グロテスクだし、エビとか芋虫っぽいよね。
だが、出されたものを残すほど子供でもない推しは嫌々ながらに口にした。
皇子でありながら宮中でひもじい思いをしたことのある推し。食わず嫌いはないらしい。偉い……幼い推しすごく偉い。とってもちゅき。
一口食べて推しが停止した。
そして赤いおめめをキラキラと輝かせて、先ほどまで胡散臭そうに睨んでいたクラムチャウダーをいそいそと口に運び始める。
推しはクラムチャウダーがお好きなようだ。
推しの喜び顔プライスレス……いっぱいちゅき。これだけでご飯20杯はいける。
尊みが爆発しそう……はわわわ。
この喜びを野良ドラゴン? ワイバーン? の腹に拳としてぶち込んだり、ついでにデカいイグアナみたいなの(アースドラゴンというらしい)をジャイアントスウィングかまして倒したりしていたら神様から神託が来た。
『地形かえるのはやめて』
普通にごめんなさい。
クレーターは戻しました。
ちなみに仕留めた野良ドラゴンはトランクルームに詰めた。
翌日、アインズのおっさんが絹を裂いたような悲鳴を上げていたが知らね。
最近暗殺者もめっきり減って、ちょっと暇なアヤネコさんである。
王都と田舎を往復する機会も減った。
推しの生活向上に邁進をしているが、元の頭が残念気味なので前世知識チートとか難しいのです。
神様からの端末が無かったら詰んでたわ。
推しが安心してお外に出られるように、フェルゼン邸の周囲5キロの魔物の巣はすべて破壊しつくした。
野兎や野生の狼やスライムや弱いウリボアくらいならちょろちょろ走っている、野生動物と低ランクの魔物の楽園みたいになっている。
そしたら自分とよく似た潰れまんじゅうの白い猫型の生物を見つけた。
ヌッコという生き物で、日当たりのいい場所でぼーっとしているらしい。
ただ、危機を察知すると恐るべき速さで消えるらしい。珍しくはないが、有名な某RPGのメタルなスライムも真っ青な逃げっぷり。討伐は極めて難しい。でも害はないから討伐する意味はない。
その特異性から、マニアックなファンがいるらしいが、何しろ危機察知能力と逃げ足に掛けては一級品のために姿は見えるけど触れない、ある意味二次元に近い存在である。
まあそんなこともあり人間も街中どころか家の中で見つけても、特に気にしないらしい。
猫とはまた違う種類と認識されている。
神よ、なぜこれに八頭身をつけた。
アヤネコは安易に魔物や盗賊や暗殺者をボコって仕留めているので、無意識レベリングをしています。
基本推し以外への人間の扱いは雑です。




