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明日、目を覚ます君に眼鏡は必要だろうか

作者: 町屋直巳

10年来の相棒が死んだ。壊れた、というべきか。

交通事故だった。横断歩道を渡ろうとして飲酒運転の乗用車にぶつけられたという。

ある程度丈夫な身体ではあったが、ノーブレーキでのひき逃げだった。

路傍には4年前私が相棒にプレゼントし、大事に使われていた眼鏡が砕けていた。

人通りの少ない道だったので相棒が発見されたとき、体はばらばら、ナノマシン液は大半が流れ出し、オートリペアはおろか店舗での修理も不可能だった。肉体の完全な死である。


修理ができないとなれば後はボディの交換、ということになるのだが結論を言えば交換用のボディはなかった。


相棒はもともと型落ちの医療用アンドロイドで、その身体は必要とあらば人間の代替器官となるもので構成されていた。当時友人がいなかった私を心配して両親があてがったのだ。過去も現在も医療用アンドロイドというモノは高価であり、世に出回る機体も多くなかった。

それなのに毎年といっていいほどアップグレード版が登場し、気づけば相棒の交換用のボディの在庫はどこを探しても見つからないというわけだ。


しかし私は諦めない。憶えているのだ。初対面の時、鯖折りといっていいようなハグをされたことを。冬、かじかんだ私の手先を包んだその指先の温もりを。眼のピント調節機能が悪くなって初めて眼鏡をかけた時の慌てようを。そして庭から夕陽を一緒に眺めてどちらともなく笑いあったことを。


私は相棒の唯一無事だった記憶媒体部分、「脳」が繋がれたディスプレイに話しかけた。今、友人の伝手でおまえと同じ型番の素体が余っていないか連絡を待っているんだ。時間はかかるかもしれないがきっと体を用意しよう。だからさ、



「次に目覚めてハグする時は僕の背骨を折ろうとしないでくれよ?」

「失礼な。私はいつだってアナタを優しく包み込んでいましたよ?」

お題「ロボット、眼鏡」で書きました。

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