街へ行こう
この日は忙しかった。街へ行き街の話などを聞いた。ここはイカルイトというらしく、地方の交易の中心となっている。そのためたくさんのところから食べ物などが運ばれてくる。ものだけでなくたくさんの種族のものが集まっていた。
「すごい街だね。人がいっぱいいてワクワクするよ。」
たくさんの人と話し、いろいろなことがわかってきた。地方は各貴族によって治められているようだ。この街はとても治安がよく貴族も市民から愛されているようだが、どこかには貴族が悪質で荒れている街があるようだ。そんな街には行きたくないなと思いつつ、次にギルドへ向かった。ギルドではクエストをこなすことで報酬をもらうことができるようだ。
そこにはいかにもな風貌の男や女たちが酒を飲み交わしていた。クエストを見ようと看板の方へ近付こうと思うがそいつらがパーティを組まないかと迫ってくる。そんな誘いをゆきが一蹴しつつクエストを見る。レベルも書いてあるため初心者でも分かりやすい。
「この討伐クエストなんかはどうかな?」
「ゆきさんがそれでいいなら私はいいよ。」
「もうゆきでいいよ。じゃあこれにしよう。」
その依頼書を剥がし受付に持っていくと、どうやらクエストを受けるにはギルドに登録しなければいけないようだ。名前と性別、年齢など少しの項目だけでいいようだが、そういえばゆきは何歳なのだろうかと疑問に思った。そしてゆきの書いている紙を覗き込むと、
「二十…二十歳!?ゆきは私よりも年上だったの⁉」
「ごめん、なぎさの歳を聞いていなかったからわからないけど今年大学三年生なんだよ。」
あまりに見た目と歳に差がありびっくりしたが落ち着いた性格や決断力はそこから来ているのだろうかと思った。
「私は今年高校を卒業したばかりだからゆきは2つ先輩だね。」
だがそんなことはお構いなしにゆきに抱きつく。瞬間ゆきの髪からとてもいい匂いがして更に強く抱きしめる。
「ほらなぎさ、先輩に抱きつかないでください。早く書いてクエストを受けるよ。」
なぎさはさらさらと書いていく。私も負けじと書いていった。
登録も終わり自分のカードが貰えた。そこには様々な情報が書かれていて今受けているクエストの情報もそこに映し出される。これも一種の魔法のようだ。そこで受付嬢からギルドの説明を受けた。ギルドにもランクというものがあり、そのランクによって受けられるものが変わるようだ。もちろん私たちはランクが1なのでまだ受けられるクエストも少ない。その他諸注意を受け、次に装備屋へと案内された。
そこにはたくさんの武器や防具が並び、賑わっていた。
「嬢ちゃん、初めてだろう?こっちの店が安くておススメだよ?」
「いやいやこっちの方がいいよ、ちょっと値は張るがその辺の安物のやつよりはずっといいさ。」
「あ?なんだとやんのかテメェ」
「上等じゃねえかかかって来いや」
こっちには構わず喧嘩を始める店の人。そんな彼らを差し置いてもっと奥へ進んでいく。
「ここが初心者用の売り場ですよ。」
外に試射場があるので試しに使ってみることもできますので店の人に気軽に話しかけてくださいと言い去っていく。
とりあえずそこにあった杖を手に取り、外で使ってみる。この世界に属性ごとの魔法石の概念はなくイメージによって魔法が決まる。どのようにイメージすればよいのかは昨日の魔法の書に書いてあった。炎のたまをイメージし手に魔力を注ぐ。人間は皆マナを動力として動いているようだ。それは地球でも同じだが地球には魔法石が存在しないため魔法もない。そしてその魔力量は前述したとおり最大になっているようだ。
杖の先に小さな光が生まれ、大きな光となって飛んでいく。
「どうですか?体からマナがなくなる感覚がわかりますか?」
とそう聞かれる。そんなことはない、いや若干体が重くなっただろうか。だが初めて魔法を打ってみた感情でそんなことは全くわからなかった。
「しびれました。他にもいっぱい打ってみても良いですか?」
が、答えを聞く前に沢山の魔法を放つ。書には他にもたくさんの魔法について書かれており、その魔法らを試してみる水や風、光や闇系の魔法を放ったりしていた。書には書いていなくても自分のイメージによって魔法は変わっていくので様々な色の爆炎が起こる。
「あ、あの。大丈夫ですか?そろそろマナ切れを起こすのでそろそろやめたほうが良いんじゃないです
か?」
だが一切の疲れを感じない。並の人ならあの規模で魔法を放つと数発でマナ切れを起こすが、自分たちはその限りではない。更に数十発打ち込み練習を終えた。だがそれでも疲れというものを知らない。私達は初期ステータスが高いということでもっと上のランクの店へ連れて行かれた。道具にもランクがありランクによって要求ステータスが高くなっていくがその分魔法の消費が抑えられたり、もっと上級の魔法を打てるようになっていく。下級の道具を使って大規模な魔法を使おうとしても何も起こらない。この店にはさっきの店より豪華な装飾のある道具がたくさんある。宝石がたくさんついていて値段はとても高いが、この宝石がいろんな効果を生み出すようだ。幸いお金はまだたくさんあるので装備を一式買っていく。魔法防具は魔力を流すことで防御力や身体能力が上がるが魔力の消費が激しいのでたまにしか使わない。が、それは一般人の話で私達には関係のない話だ。
そうして車へと帰ったのは夜遅くとなってしまった。
晩御飯の用意をする。食材はもちろん今日市場で買ってきたものである。私はずっと一人で暮らしてきたので料理はできる方だが、すべてが未知の食材なのでうまくできる保証はない。ゆきと協力し料理を仕上げていく。次第に香ばしい匂いが車内を駆け巡っていく。そしてついに完成したそれはとても美味しそうで食欲をそそる。
いただきます、の合図で二人はご飯に手を付ける。不安であった味や食感もすごく良くできていて、美味しかった。更に今日はいろいろなところを歩き回ったこともあり更に美味しく感じた。
明日ははじめてのクエストである。なのでそれに備え早めに寝るべきなのだが今日の出来事やこれからのことを考えると寝れなかった。仕方なく車の上のテラスへ登るとすでにゆきがそこにいた。
「なぎさも…寝られないのか?」
「ちょっとね、夜風に当たりたくなっちゃったんだよ。」
そっと夜空を見つめ考える。まだまだこの世界についてわからないことはたくさんあるし、これから何を目標にして生きていけば良いかもわからない。なぜ私達はこちらに連れてこられたのだろうか。いろんな不安が頭の中をよぎるがそれを自分で解決する手段は今は持ち合わせていない。そんなことを考えているとゆきが私の手を握り喋りかけてきた。
「私はあの船の上でもうしんでいたはずなんだ。でも私達はこの世界に連れてこられた。まだここに来て
二日目だけどなぎさに会えて私は嬉しかった。そしてこの地での目標が決まったよ。それはなぎさを守ること。周りに生きている人が一人もいない状況でなぎさだけは生きていた。そしてなぎさは私を迎えてく
れた。だから私はなぎさを守る。」
嬉しかった。まだ何も役に立てていないと思っていたのにそんなことを言ってくれるとは思ってもいなかった。
「もう何いってんの。ゆきは私に守られる側でしょ?」
照れ隠しにそんな冗談を言いつつゆきを抱く。
「ゆきに守られるのは良いけど無理だけはしないでね。」
このときだけはゆきは抵抗せずにそっと受け入れてくれた。
夜空にはたくさんの星が溢れんばかりに輝いている。地球に住んでいては見れなかったほどの星は私達を淡く照らし心地よい眠りへといざなってくれた。
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https://peing.net/ja/ramilen_nstj?event=5
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