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異世界地獄の裁判官  作者: 奈々月みぞれ
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第5話 アーティファクト

閻魔大王の力を用い、冥界シェオールに蔓延する魔素を浄化し、死者の数も減らして魂も循環させる。

ルシファー達が何百年もかけて準備した計画は、平凡なただの人間である俺が召喚されたことにより破綻してしまった。

ルシファーの言うとおり、きっと俺は悪くないんだろう。それでも、罪悪感は拭えない。しかも、今回の問題は他人事じゃなくて俺の過ごした世界までもを巻き込む大事件だ。とても「間違いで呼ばれたので帰れるようになるのをただ待ってます」なんて言えない。そんなこと出来ない。


俺は、正義感に溢れる両親が大好きで誇りに思っている。生花なんてなかなか買われない昨今でも店に常連がついて、経営が安定しているのもすべて、両親が真摯に仕事に努め地域やお得意様のことを常に考えていたからだ。

花を慈しむ心を教えてくれた。人との繋がりの大切さを体現して見せてくれた。


俺は、そんな偉大な両親に、何もせずこのまま帰って顔を合わせられるのか


生まれた頃から触れてきた花達が枯れていくのを、何もせず見ているだけなのか


そんなのは


まっぴら御免だ




「あ、あのっ…俺っ……!」


拳を握り締め、決意を決めた眼差しを送る俺に対し、目を離さず言葉を待ってくれるルシファー。俺の言葉を、待ってくれている、こんなに真剣な顔で。


「俺、このまま何もせずジッとしているなんてできません。ルシファーさん達の計画を崩してしまった俺だけど、何か…何かお手伝いできることはないんですかっ…!」


「…マサト、貴様に触れてみてほしい物がある」


「あっ、こらっ!ルシファー様!それはっ」


「黙れ、此奴は本気だ。瞳に灯火宿す者を止めることなど誰にも出来ぬさ」


ユフィールはルシファーの発言の意図を察知したように静止しようとしたが、それを止めることは出来ない。

ユフィールは諦めたようにため息をつくと、俺に向き直って真剣な表情で話を進め始める。


「…実は、キミの世界の神より助言を頂いた際に、ひとつのアーティファクトを授かったんだ。黄泉の国の裁判にて閻魔大王が使っていたとされる(しゃく)。授かったアーティファクトの力について研究を進めてきたが、この冥界の誰にもその力を解放させることは出来なかった」


「神曰く、その笏は適正のある限定された者でなくば使用出来ないらしいのだ。…マサト、覚悟があるのなら、この笏に触れ力の解放を願え」


ルシファーは懐から布に包まれた30cmほどある棒状のものを取り出し、俺に差し出す。

布の中には赤く縁どられた黒い笏がひとつ。俺にはなんの変哲もない木の棒にしか見えない。微かに不思議な、暖かい雰囲気を宿した笏。俺は導かれるように、ほぼ無意識でその笏に触れた。


「…なんだか凄く、暖かい……あっ!」


暖かいと感じたのも束の間。手に持った笏は眩く光輝き、空中に無数の文字が浮かび上がる。それはどの文字にも形容し難いもので、知らないはずなのに不思議と何が書いてあるのかがわかる気がする。


「これは…閻魔大王の、裁判に関する記述だ」


「マサト!わかるのか!」


魂の査定に関すること、魂の解放の仕方、輪廻転生を行うための儀式法。文字が分からずとも、この笏から出ている文字の意味が頭の中に入ってくる。


「俺は…魂を循環させる方法を…知っている。俺は、おれは…」



光り輝く笏から溢れる暖かなぬくもりが全身を包み、次の瞬間には…意識を失っていた。

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