第1話 葛城正人
突然だが地獄について、一般的にはどういう認識がなされているかについて話をしよう。
簡単にいうと「死後の世界。人間は三途の川を渡り、閻魔大王の裁きを受ける」といった内容が一般的だ。
悪いことしたら地獄に落ちて、いい事したら天国に行ける。そんな感じ。
今までは、そうだった。
俺の名前は葛城 正人。正しい人になるようにって安直でわかりやすい名前をつけた両親は、きっと死後天国へ行けると思えるほど正義感に溢れ、優しかった。
実家は花屋で常連も多い。両親を頼る商店街の人たちも多く地域に根付いた人気の花屋だった。俺も男の身ではあるが、花屋を継ぐのもいいかなって思っていたし花の勉強だってしていた。
春休み、俺はいつも通り花の配達をしている道中。唐突なめまいに襲われた。
一瞬のことで何が起こったのかわからない、熱とかはなかったはずだ…って冷静な思考が巡る中、身体は思うように動かずそのまま意識が遠のいた。
次に目を覚ました場所は学校の保健室のような、白くて綺麗なベッドの上。見覚えのない天井。
「ここは…どこだ…?」
つぶやいた言葉は部屋に多少反響した程度で答える人は誰もいない。病院かとも思ったがナースコール用の機器や脈拍計とか、それらしいものはない。
場所や現状についての把握をするため、ベッドから離れ、部屋の隅にある扉に手をかける。と、その時。
「おや、目を覚ましたのかい。おはよう、カツラギ マサトくん」
突然声をかけられ振り返る。誰もいなかったはずの室内に、見覚えのない緑色の髪の男が一人、ベッドに腰掛けにっこりと微笑んでいた。
初投稿です。
これから正人くんの新たな人生を綴っていきます。のんびり投稿なことをご了承ください。
ちなみに小さい頃花屋になるのが夢でした()