第9話 妖精(珍種)、お金を手に入れる
「おい、大丈夫か? おっさん」
オレを鑑定して呆然としていたおっさんに声をかける。
「コラッ! ギルドマスターに向かっておっさんとか言うんじゃないわよっ」
おっさんを尊敬しているらしいシェーラに怒られた。
だが、おっさんはおっさんなので呼び名は変えないぜ。
「あーはいはい。で、おっさんさ、ゴブリンジェネラルとゴブリンソルジャーの討伐報酬と魔石買取してくれるって聞いたんだけど、いくらくらいになるんだ?」
ぶっちゃけ早く金が欲しい。
この葉っぱ腰みのを早くチェンジしたいのだ。
「ゴホンッ……。それで、討伐証明部位の耳と魔石は持ち帰ってきたのか?」
ようやく我に返ったおっさんがそう言った。
「いや、耳とかじゃなくて、ゴブリンジェネラルとゴブリンソルジャーそのまま持ってきたけど」
討伐証明部位なんて知らなかったし、体内にある魔石も金になるらしいからそのままアイテムボックスに突っ込んできたんだけど。
「アイテムボックスか。それで何体あるんだ?」
おっさんはオレのステータスを知っているから、アイテムボックスに入れていると分かったみたいだ。
「えーと、ジェネラルが1体にソルジャーが6体だな」
アイテムボックスに入っているゴブリンの数を教えたら、おっさんと受付のおばちゃんがちょっと驚いていた。
「よく入ったな……って、お前のアイテムボックスならどれだけ入れてもビクともしないか」
あーそう言えば、シェーラとミリアムとアイテムボックスの話になった時、アイテムボックスの容量は魔力量によるってチラっと聞いたような。
オレの魔力は無限大だから、アイテムボックスも制限なしってことか?
やったぜ!
これならこれから増えていくだろう荷物の心配しなくてもいいな。
「それだけの数になると、裏の倉庫の方がいいな」
ギルドの建物の裏に買い取り物品の保管倉庫があるそうで、量が多かったり大物の魔物の買取などは倉庫の方で行っているらしい。
ということでみんなで倉庫に移動。
おっさんがゴブリンジェネラルとゴブリンソルジャーを出してみろと言うので、アイテムボックスから出した。
買取係の兄ちゃんが来てそれを検分していく。
「ジェネラルはちょっと損傷が激しいので、魔石だけの値段になりますね。ソルジャーの方は魔石しか価値がありませんのでその分だけです」
なんとゴブリンジェネラルは魔石の他に心臓が滋養強壮の薬の原料になるそうだ。
アースニードルで串刺しにしたから心臓もズタズタで使い物にならなかったらしい。
惜しいことをした。
知ってたらもうちょっと考えて倒したのに。
それにしてもだ、ゴブリンの心臓で作った薬なんて誰が飲むんだよ?
キモいしばっちいとしか思えないだが、これがなかなか人気の薬らしい。
異世界は不思議がいっぱいだな。
「買取価格ですが、ジェネラルの魔石が金貨1枚、ソルジャーの魔石が1つ大銀貨5枚で6つ分で金貨3枚、合計金貨4枚ですね」
いまいち高いのか安いのかわからん。
この世界の貨幣価値がわからないんだから当然だわな。
ということで、シェーラとミリアムに聞いてみたところ、感覚としてはこんな感じだ。
銅貨1枚 日本円にすると → 百円
銀貨1枚(銅貨10枚分) 日本円にすると → 千円
大銀貨1枚(銀貨10枚分) 日本円にすると → 1万円
金貨1枚(大銀貨10枚分) 日本円にすると → 十万円
大金貨1枚(金貨10枚分) 日本円にすると → 百万円
白金貨1枚(大金貨10枚分) 日本円にすると → 1千万円
翠金貨1枚(白金貨10枚分) 日本円にすると → 1億円
一般市民が普通に生活するうえで目にするのは大銀貨までで、金貨となると高ランク冒険者や商人でないとめったにお目にかかれないそうだ。
その上の大金貨や白金貨に至っては超一流の冒険者や大商人にしか手にする機会はないとのことだ。
翠金貨ともなると国家間の取引でしか使われず、通貨としてあるのは知っていても見たことがあるのは国政に携わっている人だけだろうということだった。
ということは、ゴブリンの魔石買取価格金貨4枚ってのは日本円にして40万円ってことか。
おろ?
これってけっこうボロい商売でない?
オレってば魔法チートだから魔法でちゃっちゃと魔物倒して売ればウハウハじゃないか。
「ケンジは冒険者登録してないから、やっぱり買取金額少し低めになっちゃうんですね」
シェーラがそう言う。
え、そうなん?この金額で?
シェーラは金貨5枚はいくんじゃないかと予想してたそうだ。
「未登録ゆえ、そこは勘弁してもらわないとな。その代わり今回は解体費用は無料にしてある」
おっさーん、ギルドじゃ解体費用もとるのか?ケチくさいなぁ。
まぁ、この体じゃ魔物の体内から魔石やらとるのも一苦労しそうだし、何より見てる分にはどうってことないけど 自分でやるとなったらちょっとね……。
だから頼むことになるとは思うけど。
「魔石の買取金額が金貨4枚なのは分かったけど、討伐報酬は?」
フフフフフ、買取の他にもこれがあるのだよ。
「討伐報酬は金貨3枚とさせてくれ」
おっさんがそう言うと、シェーラとミリアムが「エ?」という顔をした。
どうも通常の報酬よりも安いみたいだ。
「申し訳ないのだが、ケンジがまだ冒険者ではないということと、今回の討伐がクエスト外討伐だったということでこの金額になってしまう」
そっかー、やっぱ冒険者登録してないと、買取金額にしても討伐報酬にしても若干安くなちゃんだなぁ。
冒険者保護っていう観点なら仕方ないのかもしれないな。
基本危険な仕事だろうし、報酬が同じだったら冒険者登録する人も少なくなるだろうし。
まぁそれでも魔石買取金額の金貨4枚+討伐報酬の金貨3枚で合計金貨7枚(日本円にして70万円)ゲットだぜ。
服買って、飯食って、生活に必要な諸々の物を買っても十分足りるだろう。
おっさんから金貨7枚を受け取って、オレたちはギルドを後にした。
シェーラとミリアムに服屋まで案内してもらうのだ。
やっとこれで葉っぱ腰みのとお別れできるぜ。