第3話 妖精(珍種)、同族に遭遇する
考えてもわからんってことで、妖精(珍種)はとりあえずおいておくことにして。
腹が減った。
喉もかわいた。
妖精って空気中の魔素なんかを取り込んで腹とか減らないんじゃないの?
テンプレ設定だとさ。
オレだって妖精ちゃんなんだからそういう設定じゃないの?
魔素取り込み~、魔素取り込み~。
キュルルルル―――。
空しくもオレの腹から切ない鳴き声がした。
ダメだ、腹減った。
無意識に腹をさする。
おろ?
直接触れる手の感触に不思議に思って顔を下に向けた。
ギャースッ!!!
「ちょ、ちょちょちょ、お、オレ、マッパやんけっ!」
「しかも何ッこのプニプニの体! よ、幼児体形になってるし!!」
生前のオレは平均身長はあったし、マッチョではなかったがそこそこ筋肉もあったのだ。
断じてこんなプニプニ幼児体形ではなかった。
ハッ、パニクっている場合ではない。
大事なことを確認せねば。
オレは恐る恐る腹の下を覗き込んだ。
「…………」
フヨフヨと力なく漂い、ぽてんと地上に降り立った。
オレはガックリと地面に膝をついて叫んだ。
「あんまりだーっ! 理不尽過ぎるーっ!!」
(血涙)
「つるつるな上に親指の大きさしかないなんてーーーーーっ!!!」
あまりの理不尽さに号泣した。
オーイ、オイオイオイ。
……………………
泣き疲れて、地面に大の字になる。
理不尽だ。
この上もなく理不尽だ。
でも、オレは負けないせ。
この体で転生しちまったからには、もうどうしようもない。
こんな体だけど、オレは強い。
体力、魔力無限大のチートだからな。
せっかくの異世界なんだ、冒険だ冒険してやる。
そんで俺TUEEEするんだ。
キュルルルル―――。
再びオレの腹の虫が切なく泣いた。
まずは腹を満たさねば。
そう思っていると女の子の声が聞こえてきた。
「クスクス、あの子裸ん坊だよ」
「ホントだ、クスクス」
「裸ん坊、裸ん坊」
「クスクス、クスクス」
オレの頭上を妖精の女の子たちが飛び回っていた。
oh……。
オレは妖精ちゃんたちに見られないように咄嗟に股間を手で隠した。
ブツは小物だが一応羞恥心はあるのだ。
「クスクス、クスクス」
「裸ん坊」
「裸ん坊」
「クスクス、クスクス」
妖精ちゃんたちはオレを指さして笑っていた。
ちょ、ちょっと、人を指さしちゃいけませんって習わなかったの?
キュルルルル―――。
笑いながら飛び回っていた妖精ちゃんたちがピタッと止まった。
「お腹が空いてるの?」
「ここら辺は魔素が濃いよ」
「おいしいよ」
「元気が出るよ」
魔素、おいしいのか?
だが、オレは取り込めないのだよ。
何の腹の足しにもならん。
せめて果物くらい食いたい。
「果物が生ってる場所って知らない?」
ダメ元で妖精ちゃんたちに聞いてみる。
「果物?」
「果物」
「リゴの実」
「あっち」
そう言って妖精ちゃんたちは指さした森の中にピューッと飛んで行った。
まぁ、今は下の方は気にすまい。
どうせ排泄にしか使えそうにないのだから。
そう思い、オレはマッパのまま妖精ちゃんたちの後についていった。
□■□
「ここ」
「これだよ」
「リゴの実だよ」
「リゴの実」
妖精ちゃんたちが赤い実を指さしている。
うん、見た目リンゴだな。
オレは腹を満たすべく今の体だと一抱えもあるリゴの実をもいで齧り付いた。
シャク。
美味いな、味もリンゴだ。
シャク、シャク、シャク、シャク。
一抱えもあったリゴの実を、腹の減っていたオレは一気に食べ進めて終には食べきってしまった。
ゲプッ。
さすがに食い過ぎたかな?
それにしても、体がベトベトする。
リゴの実の果汁がべっとりと体についてしまったのだ。
マッパだから尚更だ。
うー、体洗いたい。
よし、困った時の妖精ちゃんだ。
「ここら辺に川か湖ってあるかな?」
「川?」
「湖?」
「湖ある」
「こっち」
またまた妖精ちゃんたちは指さした方にピューッと飛んで行った。
オレもすかさずその後を追った。