第28話 妖精(珍種)、ブラックカード冒険者になる
「それで、やはりアレを出すということでしょうかね?」
おっさん、だからアレって何なのよ?
「ああ、それしかないだろう。これほどの能力持ちを放置する方が危険だ」
もーだからアレって何なんだよっ?!
「ランツ、アレを用意してくれるか」
お偉いさんにそう言われたおっさんが神妙な顔をして頷き、おっさんの部屋にある頑丈そうな金庫から箱を取り出した。
その箱をおっさんがお偉いさんに差し出した。
お偉いさんが緊張の面持ちで箱の蓋を開けて中の物を取り出した。
取り出したのは1枚の黒いカードだった。
「君、このカードに少し魔力を流しなさい」
お偉いさんにそう言われて、オレは言われたとおり黒いカードに魔力を流した。
すると、黒いカードが一瞬発光した。
「これで登録完了だ」
え、登録完了ってオレ冒険者になれたのか?
「150年ぶりのブラックカード所持者ということになりますな」
ブラックカードってこの黒いカードのことだよな?
これのことおっさんとお偉いさんはアレって言ってたのか?
んで、この黒いカードが何なのさ?
「君はこれでブラックカードを所持する冒険者となった。その意味をよく理解してほしい。冒険者ギルドからの切なる願いだ」
お偉いさんが何だか重々しくそう言った。
そしてブラックカードがどういったものなのか、そしてそれがどういう意味合いを持つのかを説明してくれた。
お偉いさんの長々とした説明を要約するとこうだ。
・ブラックカードというものは、冒険者ランクでは計ることこのできない人知を超えた能力を持った冒険者にのみ与えられるカードである。
・ブラックカードを発行された冒険者は実に150年ぶりである。
・過去にいたブラックカード冒険者には1人で小国を滅ぼした者や、大国を相手に戦争しあと一歩のところまで追いつめた者(この時は大国が莫大な賠償金を支払い手を引いてもらった)がいる。
・ブラックカード冒険者は冒険者ギルドに所属し冒険者ギルドがその身分を保証する。
・ブラックカード冒険者は世界各国にある冒険者ギルドで特別なサポートが受けられる。
・ブラックカード冒険者の所属は冒険者ギルドであり冒険者ギルドの要請には答えること。
・ブラックカード冒険者の所属は冒険者ギルドであるので、他ギルドや国家に追従しないこと。
・ブラックカード冒険者は自分の能力を自覚し、品行方正な冒険者であること。
結局のところ、お前はすんごい力もってるんだからオイタしないでくれよってことのようだ。
それにしても、このブラックカード冒険者というのはいろいろとやらかしているようだ。
それほど数がいたわけではないが(オレにしたって150年ぶりだって言ってたくらいだからな)、人知を超えた能力というくらいだから、皆やることがハンパないそうだ。
話にも出た1人で小国を滅ぼした奴とか、大国相手に戦争した奴とか。
しかもその理由が世話になった人を攻撃したからとか、一宿一飯の恩義だとか、そんなんで一国を相手にするのかよっていうしょうもない理由だそう。
しかも、人知を超えた力の持ち主だから何か事を起こしても誰も止められないっていう。
ブラックカード冒険者やりたい放題だな(オレはそんなことしないけどさ)。
はっきり言って面倒くさい奴らである。
それでも冒険者ギルドで面倒見てくれるというのは、なんといってもその人知を超えた能力の持ち主だからだろう。
実際、ブラックカード冒険者になるほどの能力者は他ギルドだろうと国であろうと引く手数多だそう。
冒険者ギルドとしては、そんな能力者を他に盗られるくらいなら自分とこのギルドに居てもらった方がまだマシだくらいなことのようだ。
おっさんとお偉いさんには、何度も何度もそれこそしつこいくらいに面倒ごとは起こさないでくれってことと何かあっららとにかく冒険者ギルドに相談するようにって言われたし。
うーん、いろいろと説明聞いてるとブラックカード冒険者ってなんかただのやっかいなヤツみたいなんだけど……。
しかもブラックカード冒険者にはランクは存在しないっていうし。
Gからだんだんランク上げていって最終的にはSSSになんて思ってたのに。
だんだんとランク上げするのも冒険者の醍醐味だと思うんだけどなぁ。
まぁ、もう決まっちゃったから文句言ってもしょうがないんだけどさ。
ブラックカードだろうがなんだろうが冒険者になれたんだから良しとするか。
「くれぐれもよろしく頼むぞ」
そう言ってお偉いさんからブラックカードを渡された。
こりゃ面倒起こすなよって念押しだな。
大丈夫大丈夫、オレそんな問題児じゃないし。
そんな心配ないで欲しいよ。
オレは受け取ったブラックカードを眺めた。
表には名前だけが記載されていた。
裏を見ると……。
ナニコレ?
ブラックカードの裏面にはこんなことが記載されていた。
1.本カード所持者は冒険者ギルドがその身分を保証する。
2.本カード所持者には手出し無用である。もし、警告に従わず損害を被った場合、冒険者ギルドはその責任を負わない。
3.本カード所持者に何か疑問がある場合は必ず冒険者ギルドに問い合わせを願う。
オレがジッとブラックカードの裏面を見ていることに気付いたお偉いさんがバツが悪そうに説明してくれた。
お偉いさんの話では、約500年前の話になるが、そのころのブラックカードにはオレのブラックカードの裏面に書いてあるようなことは一切記載されていなかったそう。
500年前にいたブラックカード冒険者がとある街に入るためにブラックカードを提示したところいちゃもんをつけられたらしく、カッなった冒険者はその街を滅ぼしてしまったそうだ。
しかも件の冒険者と言えば、『ちょろっと力入れただけなんだけど街なくなっちゃた、ごめんごめん(テヘペロ)』てな感じで、テヘペロしたかどうかはわからんがそれくらい軽い感じだったらしい。
そんなことがあって冒険者ギルドでは、ブラックカード冒険者に手出しした場合どうなるか皆に知らしめるためにはどうしたらいいか検討した結果、カードの裏面に記載することにしたそうだ。
ちょっと、500年前のブラックカード冒険者、何やってくれてんの?
更に付け加えるようにお偉いさんがカードの説明をする。
「ブラックカードには特殊加工がしてあって、その所持者がどこにいるかがわかるようになっている」
は?
何ソレ、GPS付いてるようなもんじゃん。
「それって何か監視されてるみたいで気分悪いぞ。ってかまるっきり危険人物扱いじゃないか」
オレが思いっきり不満顔でそう言うと、おっさんが焦った顔で「い、いや、監視とかではなくてな」と思いっきりいい訳じみたことを言っている。
「ランツの言うとおり監視ではない。かつてのブラックカード所持者の中に1年間一切連絡が取れず消息不明になった者がいてな。冒険者ギルドとしては、所属する冒険者しかもブラックカード所持者がそんな状態であるわけだから必死に消息を探した。だが一向に見つからなくてな。冒険者ギルドとしても焦燥を募らせていたところ、その冒険者がひょっこり帰ってきたということがあるのだ。結局その冒険者は1年ほどダンジョンに篭っていただけなのだがな。しかしながら、冒険者ギルドにとってブラックカード所持の冒険者というのは特別な存在なのだ。いざと言うときの切り札でもあり、何かあったときに連絡がつきませんでは困るのだよ。そのための特殊加工なのだ」
要は紐付きにしておきたいってことだろ?
いざというときのためにさ。
まぁ、わからないでもないし、これはしょうがないか。
しかし、特別な存在ねぇ。
ぬふふふふふ、そういうの嫌いじゃないよ。
今まで一切そんなこと言われたことがないから、ちょっと気分イイかも。
それにワクワクするようなキーワードも聞いちゃったしね。
ダンジョンだってよ、ダンジョン。
ファンタジー世界の冒険の王道といえばダンジョンでしょ。
行ってみたいなダンジョン。
というか、オレも冒険者になったんだから絶対行くぜダンジョン!




