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第26話 妖精(珍種)、至高の食べ物『から揚げ』を食す

 マスターにコカトリスを2羽捌いてもらう。

 血抜きもばっちりだし、さすがに上手いもんだ。

 から揚げに使う部分はもちろんモモ肉。

 それとさっぱりした味わいのムネ肉と骨があるが旨味が広がる手羽先。

 それ以外は鶏がらスープ用だ。

 まずは鶏がらスープをマスターに作ってもらう。

 コカトリスの肉を一度湯がいて血合い等を奇麗に洗ってから水、タマネギ、ニンニク、ショウガと一緒に鍋に投入。

 マスターは「何でこんな面倒な事するんだ? 一緒に煮るなら最初から煮りまえばいいだろ」とボヤいていたが、オレは「この手間が美味い物を作るには必要なんだ」と力説しておいた。

 本当は鶏がらスープの素があればこんな手間はかからないんだがな。

 ここからはオレの魔法の出番だな。

 普通はコトコト煮込むところを時短するとなると、加熱しながら時間経過の魔法か。

 でも一気にそれすると灰汁がだらけになりそうだな。

 よし、灰汁をとりながらこまめに加熱しながら時間経過の魔法をかけていくぜ。

 マスターに灰汁をとってもらいながら何度か魔法をかけていくと10分くらいでいい感じの鶏がらスープが出来上がった。

「よし、いい感じ。」

 その鶏がらスープを使って塩ダレを作っていく。

 鶏がらスープに塩、すりおろしたタマネギとニンニクとショウガそれとコショウ少々。

 コショウを出すとマスターが「こ、これ使っていいのか?」とちょいビビってた。

 コショウ、高いからね。

 でも至高の食べ物『から揚げ』には必要なんだ。

 ためらいなく使っちゃってくだせい。

 出来上がった塩ダレにコカトリスの肉を投入。

 モミモミしてから時間を置いて味をしみ込ませる。

 その間にフライドポテトの用意だな。

 ジャガイモを出すと、マスターが「それ毒があるから食べる部分そんなにないが食うのか?」と言ってきた。

 最初は「は?」と思ったけど、よくよく聞いてみると、なんと異世界人はジャガイモの皮に毒があると思っていたようだ。

 ジャガイモを食べるときには、実際に毒がある芽の部分を含めて皮を分厚くむいて中心部分だけを食べるのだそうだ。

 何やってんだよ、もったいない。

 オレはマスターに毒があるのは芽の部分で、そこをくり抜けば大丈夫だと教えた。

 ただ緑色っぽくなってるヤツだけは皮の部分も厚めに切った方がいいがな。

 最初は「本当なのか?」って半信半疑だったけど、絶対に大丈夫だし何かあればオレが責任をもって回復魔法で治してやるから心配するなって言ったらなんとか納得してくれた。

 芽をくり抜いて薄く皮をむいたジャガイモを細切りにしてもらう。

 オレはフライドポテトは細切り派なんだよね。

 コカトリスの肉の塩ダレのしみ込み具合が少し足りないような気がしたので、時間経過の魔法をかける。

 よし、これで最終段階の揚げに入るぞ。

 塩ダレのしみ込んだコカトリスの肉に小麦粉をまぶし余計な粉を落として熱した油に投入。

 油はたっぷり購入したから、もう一つの鍋でフライドポテトも揚げてもらう。

 こんがりきつね色に揚がった『から揚げ』と『フライドポテト』。

「うまそ~」

 では、いざ実食。

 サクッ。

「あつつ……、でも、美味い。美味すぎる。やっぱりから揚げは最高だ!」

 揚げたてだから衣が小麦粉だけでもサクッとして、コカトリスの肉は柔らかくてジューシー。

 味もいい感じだ。

 これはいくらでもいけるな。

「フライドポテトもカリっとしてうまぁ~い」

 細切りのポテトも塩味が効いてカリッとして美味い。

「マスターも食べてみなよ」

 この至高の食べ物を作成した功労者であるマスターにも勧める。

「おっ、美味いな。油で揚げるなんて料理は聞いたことがなかったが、こりゃ美味いわ」

 マスターも認める味のようだ。

「おい、この料理をここのメニューに加えてもいいか?」

 オレは手羽先にかぶり付きながら「いいよ」と返事した。

「あーだが、コショウを使っていたからこっちの『から揚げ』ってのはちょっと高い値段になるか……」

 コショウを使うとどうしても高くなってしまうのを気にしているようだ。

「コショウは好みだから、別に使わなくても大丈夫だぞ」

 塩から揚げの塩ダレにコショウを使うかどうかは好みだからな。

 オレは使った方が味が引き締まる気がするから入れてるだけだ。

「そうなのか? ならいけるか」

 ギルド内の飲み屋兼食事処のメニューに『から揚げ』と『フライドポテト』が加わった瞬間だった。

「あーから揚げウマ~」

 今度はレモンをかけたから揚げにかぶり付きながら幸せを噛み締めていると、熱い視線を感じる。

「「「「「ゴクリ」」」」」

 振り返ると、昼間だから少ないがその場に居合わせた冒険者たちがオレの方を凝視して喉を鳴らしていた。

(若干名は涎もたらしていた。)

 あー、この匂いには勝てんよねぇ。

 揚げ物料理の伝道師として『から揚げ』と『フライドポテト』を広めますか。

「食うか?」

 そう言うと冒険者がわらわら寄ってきた。

「いいのか? 悪いな」と言いながら我も我もとから揚げを取っていく。

「ウ、ウメーーーッ!」

「な、何だこれッ美味すぎるッ!」

「ウメェ、ウメェよコレ!!!」

「こんな美味いもの初めて食った……うぅっ……」

「………………(無言でひたすら食っている)」

 おい、泣いてる奴いるじゃん。

 泣くなよ。

 しかし、やっぱり至高の食べ物『から揚げ』は異世界でも無敵だったな。

「ってか、おいっ、その手羽先はオレのだぞっ! 1羽から2つしか取れないんだからなっ。食うなってっ!」

 手羽先に手を出した冒険者を見てそう言ったが遅かった。

 しかも、それ聞いた他の冒険者が我先にと手羽先持っていきやがるし。

 まったくこいつ等ときたらどんだけ飢えてんだよ。

「この『から揚げ』と『フライドポテト』っつうのは、エールに合いそうだな」

 マスターがぽつりとそう言った。

 冒険者たちが『から揚げ』と『フライドポテト』をジッと見る。

「「「「「ゴクリ」」」」」

「「「「「エールをくれっ!」」」」」

 それからはもう何と言ったらいいやら。

 冒険者たちもだんだん帰ってきて人数が増えて飲めや歌えの大騒ぎが始まった。

 お前ら騒ぎすぎ。

 このままだと怒られそうだから、根回しにまだまだ仕事中の日ごろお世話になっている受付のお嬢様方と買取の兄ちゃんたちへの差し入れをしておいた。

 結局この日狩ったコカトリスと購入したジャガイモは全部放出する羽目になったぜ。

 揚げ物料理の伝道師は辛いね。






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