第24話 妖精(珍種)、オーク肉を食らう
回復魔法屋の営業を終えたオレ。
あと今日やらねばならないのはジャイアントビーの買取代金を回収だな。
オレは早速買取窓口に向かった。
いつもの兄ちゃんが奥で作業しているのが見えた。
「こんちは~。昨日のジャイアントビーの買取代金受け取りに来ました~」
兄ちゃんが作業の手を止めてこちらに来る。
「査定は終わってるよ。全部状態は良かったから同じ単価で査定させてもらったよ。だけど、昨日も言ったとおりジャイアントビーはもともと単価が安いからね」
そう言いながら兄ちゃんが査定したジャイアントビーの買取金額を提示した。
ジャイアントビー(女王) 1匹……大銀貨4枚
ジャイアントビー(成虫)1457匹……金貨4枚と大銀貨3と銀貨7枚と銅貨1枚
ジャイアントビー(幼虫) 882匹……大銀貨8枚と銀貨8枚と銅貨2枚
合計 金貨5枚と大銀貨6枚と銀貨5枚と銅貨3枚(日本円で565,300円)
兄ちゃんが言うほど悪くないと思うんだけど、数を考えると安いのか?
全部合わせると2000匹以上になるもんな。
えーっと、単価にすると……。
(計算中、計算中)
げっ、安っ。
ジャイアントビー(成虫)は単価銅貨3枚(300円)でジャイアントビー(幼虫)に至っては単価銅貨1枚(100円)だ。
兄ちゃんの言ってる意味が良く分かったよ。
こりゃ大量に持ってこなきゃまとまった金額にならんわ。
この金額じゃ冒険者がジャイアントビーを嫌うのも頷けるよなぁ。
オレは買取代金を受け取ってギルド内の飲み屋兼食事処に移動した。
□■□
「あー、腹減ったぁ」
何だかんだで客も途切れなく来て昼も抜いたから、さすがに腹が減った。
昼抜いた分、夕飯はちょっと豪華にしてもいいかも。
回復魔法屋とジャイアントビーの買取代金でそれなりに潤ってるし。
何にしよっかな~。
夕飯に何を食べようかとメニューを見ていて、それに目が止まった。
“オークのステーキセット”
この前オークの買取してもらったときに兄ちゃんが言ってたのを思い出した。
オークの肉はそこそこ高値だけど人気があるって言ってた。
高いけど人気があるってことは美味いってころだろ?
あの風体を見るとゲッと思っちゃうけど、一度味を確かめてみるのはいいかも。
何せあの時多すぎて売れなかった平オークがアイテムボックスに入ったままになってるからな。
美味ければ肉屋に捌いてもらって、ここで調理してもらうっていうのもアリだし。
出来上がった料理はアイテムボックスに保存しておけば、いつでも出来立てが食べられるって寸法だ。
うん、これかなりいい考えだと思うな。
よし、オークの味見としてこのステーキセットを頼もう。
マスターのスキンヘッドのおっさんに注文する。
もちろんステーキは食べやすいように切ってもらうことも忘れない。
少ししてオレの前にオークのステーキセットが並んだ。
オークのステーキにスープ、茶色いパンだ。
見た目は前に食べたことがあるワイルドボアのステーキセットにそっくりだ。
値段はまったく違うけど。
ワイルドボアのステーキセットが銅貨6枚だったのに対して、オークのステーキセットはなんとその倍の銀貨1枚と銅貨2枚もするのだ。
オーク肉がそこそこ高価ってのは本当のことみたいだな。
豚顔でブッサイクな癖に。
一度味を確認してみるのはいいかもとは思ったけど、あのオークの姿を思い浮かべると食べるのに尻込みしちゃうぜ。
匂いは良いけどどんな味がするのやら……。
南無産っ。
思い切ってオーク肉を口に入れた。
モグモグ、モグモグ、ゴクン。
………………おろ?
美味いじゃないの。
これ、豚肉だよ。
しかも臭みもぜんぜんなくて、ほどよく脂ものってる良質な豚肉。
あの姿からは想像もつかない美味しさだな、こりゃ。
モグモグ、モグモグ。
モグモグ、モグモグ。
はー美味かった。
また全部食べ切っちまったよ。
なんか魔法使うと腹減るんだよね。
この身体だから人間基準のセットだと多すぎると思ってたけど、魔法使った後だとこの量でも残さず食べられる。
それにしてもオークがこんなに美味いとは思いもしなかった。
これだけ美味い肉ならトンカツとか生姜焼きにしても美味そうだ。
あと豚汁なんかもいいな。
あぁ、でもこの世界にはさすがに醤油や味噌はないか……。
非常に残念。
でも、トンカツなら塩で食べるってのもアリかも。
トンカツか……、サクッとした衣をまとった分厚い豚肉……。
ゴクリ。
思い出したらトンカツ食べたくなった。
もちろんオレが愛してやまないから揚げも。
揚げ物ばかりで健康に悪いって?
分かっちゃいるがオレは揚げ物料理が大好きなんだよ。
だから揚げ物料理があれば食べたいところなんだけど、不思議なことにここのメニューには揚げ物料理が一個もないんだよな。
美味いのに。
あっ!
もしかして揚げるって料理法がここにはないのか?
メニューを見てもみんな焼くか煮るかの料理ばっかりではあるけど、いやいやまさかねぇ……。
そう思いつつここのスキンヘッドのマスターに「揚げ物料理ってある?」って聞いてみた。
そうしたら「何だそりゃ。料理は煮るか焼くかに決まってるだろ。」と言われてしまった。
異世界には揚げ物料理が無いんだね……。
いかん、これはいかんぞっ。
オレの大好きな揚げ物料理がないなんて許せない話だ。
これは揚げ物料理を異世界に広めねばならんぞ。
オレはこの世界で揚げ物料理の伝道師になってやるぜ!
まずはオレが愛してやまないから揚げからだ。
「マスター、材料を用意して作り方も教えるから料理してもらえる? 手間賃も払うからさ」
マスターはちょっと考えて「暇な時間ならいいぞ」と言った。
朝と夕方から夜にかけては忙しいから、昼間なら大丈夫とのことだ。
「コカトリスの肉を使った料理なんだけど、そのまま持ってきて大丈夫?」
オレは解体とかできないぞ。
「ああ解体ならしてやるからそのまま持ってこい」
交渉成立。
ヤッホーイ!
これでから揚げが食べられるぜーっ。
醤油はないだろうから塩から揚げだな。
オレは塩から揚げも好きだから全く問題ない。
よっしゃ明日は朝飯食ったら早速コカトリス狩りだ。
そんで明日の昼はから揚げ祭りじゃーっ!
今日はここまで。




