第22話 妖精(珍種)、洋服を手に入れる
昨日、ジャイアントビー討伐の後に飯を食べて、疲れたからそのままおっさんの部屋でダラダラしてたんだけど、そのときに思い出した。
注文してたオレの服が出来上がってることにさ。
注文したときに3日くらいって言ってたから出来てるはずなんだよな。
だけど、もう遅い時間だったから明日でいいやってなったんだ。
ということで今日、朝飯を食ってから早速行こうと思っている。
もちろん朝食は、ギルド内の飲み屋兼食事処でいただく。
朝だからそれほど重くないものをってことで、ハムとチーズのサンドセットを注文した。
オレの前に出されたのは、野菜がゴロゴロ入ったスープ(これはまんまポトフだな)と茶色い丸いパンの間にハムとチーズを挟んだもの。
見た感じちょっとあっさりし過ぎかな。
朝だから卵も食いたいよなぁ。
と思ったら、メニューにあったよ目玉焼き。
オレは早速目玉焼きも頼んだ。
ポトフとハムとチーズのサンドをちびちび食いながら待っていると、それほどかからずに目玉焼きが出来上がった。
その目玉焼きを食べかけのハムとチーズのサンドに挟んでかぶり付く。
「うんまぁ~い」
いい具合に半熟の目玉焼きがハムとチーズの塩気と合わさって美味い。
それにしても、この卵って何の卵なんだろ?
鶏の卵にしては黄身が大きいし、味も濃厚な気がする。
マスターのスキンヘッドのおっさんに何の卵か聞いてみると「コカトリスの卵だ」だそう。
コカトリスはEランクの魔物ながら、卵の採取となると巣が木の上の方にあってけっこう危険を伴うとのことだ。
しかも、毎日卵を産むわけではないので数も少ない。
だからこの店でもけっこう高いと言われた。
え?と思ってメニューの値段をよく見たら、目玉焼き単品でハムとチーズのサンドセットより高かったぜ。
懐が暖かかったらあんまり値段見てなかったよ。
まぁ、でも卵食べたかったしたまにはこういう贅沢もいいか。
それにいいこと聞いちゃったし。
コカトリスと言えば鶏に似た魔物だよなと思って、肉の方はどうなんだって聞いてみたらあっさりしてて美味いとのこと。
やっぱり鶏肉に似ているようだ。
そうなるとオレの大大大好物で愛してやまないアレができる。
あの至高の食べ物『から揚げ』が。
オレは絶対にコカトリスを狩ってくることを誓いながらサンドにかぶり付いた。
「はぁ、やっぱこれ美味いわ~」
コカトリスの卵、絶品である。
コカトリスを狩るついでに卵も絶対獲ってこようと誓うオレであった。
□■□
「こんちは~」
服屋に入ると、服屋の主人が出迎えてくれた。
「注文した服は出来てる?」
服は出来てるとのことで、主人が試着してみるか聞いてきたので試着してみることにした。
「大きさの方はどうでしょうか?」
七分袖の白に近い薄いクリーム色のチュニック。
うん、さすがオーダーメイドだ。
羽の部分もいい感じだし、サイズもぴったりだぜ。
だが、いかんせん生地がなぁ。
ゴワゴワ感の残る生地に残念さが拭えない。
ここの街並みから言って中世ヨーロッパ時代の文明度くらいだし、これもしょうがないのかぁ。
自分で錬金術とか使えたらなんとかなりそうだけど、魔法チートではあってもさすがに錬金術のスキルはなかったし。
あ、レベル上がったら自分の好きなスキルが増やせるとかないのかな?
あったら絶対に錬金術取るんだけど。
とは言ってもオレってば未だにレベル1で上がる気配が全くないんだけどね。
魔物もけっこう狩ったから、そろそろレベルが上がってもよさそうなものなのに。
まぁそんなこと愚痴ってもしょうがないか。
とりあえず服は手に入れた。
「大きさもピッタリだ。コレはこのまま着ていくよ。あ、あと、頼んであったパンツも下さい」
パンツももらって穿いていく。
これでフルチン卒業だぜ。
今まで着てた間に合わせチュニックは、マイ風呂であるタライを洗う時に使えるので持ち帰ることにする。
残りのチュニックとパンツを受け取ってアイテムボックスにしまう。
そして、ちょっと気になっていることを店主に聞いた。
「ここって、洋服じゃなくても布製のものなら注文ってできるの?」
店主によると「服を主に扱っておりますが、布製のものであれば承けたまわっております」とのこと。
それを聞いて安心した。
実を言うと布団が恋しくなっているのだ。
おっさんの部屋のソファーで寝ているのだが、悪くはないけどやっぱり布団のふかふか感が忘れられない。
何より睡眠は大事だからな。
一般庶民が使う寝具と言えば魔物の毛皮とか藁を敷いてその上に使い古したボロい布を被せて使ったりで上に掛けるものも同じようなもののようだ。
綿が入った(この世界にも綿はあるようなのだ)寝具はそれこそ貴族が使うものらしい。
服、それもオレのチュニックとパンツでも金貨1枚と大銀貨5枚もするんだから、オーダーメイドで布団を作ってもらったら相当な金額になる気配がプンプンするのだが、どうしても布団は欲しい。
オレの安眠のためにも絶対必須アイテムなのである。
この世界、オレが欲しいと思うものには割と金がかかるなぁ。
やっぱりがんばって稼ぐしかないな。
よし、今からギルドに行って今度は回復魔法で稼ぎますか。
(ギルド内の飲み屋兼食事処にいた冒険者たちの会話)
珍種妖精 「うんまぁ~い」
冒険者A・B・C 「ゴクリ」
冒険者B 「う、美味そう……」
冒険者A 「俺もアレと同じものを」
マスター 「全部で銀貨1枚と銅貨1枚だ」
冒険者A 「高っ」
(懐を確認するしてから珍種妖精を見る。珍種妖精美味そう
に食べている。)
冒険者A 「頼む」
冒険者C 「ハムとチーズのサンドセット」
(懐を確認するが手持ちが無かったので泣く泣く諦めた。)
冒険者B 「あ、アレと同じのを」
(懐を確認してどうしようか迷いに迷ったが、食欲には勝て
なかった。)
マスター 「(強面の顔でニッコリ)毎度アリ」




