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第15話 妖精(珍種)、冒険者ギルドに居座ることに成功する

今日はここまで。

 懐も暖まったことだし、メシだなメシ。

 美味そうな匂いを漂わせてくる冒険者ギルド併設のカウンターに移動した。

「ここのおすすめって何ですか?」

 カウンターの中にいる冒険者上がりっぽいスキンヘッドの厳ついおっさんに聞いてみた。

「ワイルドボアのステーキセットだな」

 じゃそれ下さ~い。

 あ、ステーキは食べやすいように切ってね。

 それと酒じゃない飲み物が欲しいな。

 スキンヘッドのおっさんが「なら果実水だな」って出してくれた。

 飲んでみたら、爽やかな酸っぱさが口に広がる。

 こりゃ飲んだ感じはレモン水だな。

 口の中がさっぱりしていいね。

 ワイルドボアのステーキセットが目の前に置かれた。

 ワイルドボアのステーキにスープ、あとは茶色いパン。

 ステーキはちゃんと切ってくれてるね。

 どれどれ、いただきまーす。

 ステーキの切り身にかぶりついた。

 うんうん、美味いよコレ。

 基本肉体労働な冒険者相手だし酒も出すからだろうけど、味が濃い目になっている。

 宿屋の食事も不味くはなかったけど味が薄めだなって感じてたから、濃い目の味がより美味く感じる。

 何だよ、ここけっこう美味いじゃん。

 これからは度々利用させてもらおう。

 ゲプッ。

 魔法もいろいろ使って腹が減ってたから全部食べちゃったよ。

 この体ではさすがに食い過ぎたかな。

 腹いっぱいになったら、今度は眠くなってきたな。

 しかしだ、その前にちょっとやっておくことが。

 とりあえずここの御代を払ってから、ギルドマスターのおっさんとお話だ。





□■□




「すいませーん、ギルドマスター呼んでもらえますか?」

 受付窓口のおばちゃんにいお願いする。

「あら妖精さん。ギルドマスターを? 何か用なの?」

 ちょっと話したいことがあるんだって言うと、買取の件等でギルドマスターの意思を仰がないといけないときは来てもらうけど、話したいってだけじゃなんて言って最初は渋ってた。

 でも、オレが話があるって言ってもらえれば来てくれると思うからと言ってなんとか呼び出してもらうことに。

 おっさんはオレのステータスばっちり見てチートっぷりも確認済みだから無視することはないだろう。

 思ったとおりおっさんが来てくれた。

「話があるってことだが、何だ?」

「えーとー、オレって妖精じゃん?」

 おっさんが何見て分かるような当然なことを言っているんだって訝しげな顔をしている。

「いやね、シェーラとミリアムに聞いたんだけど、妖精であるオレ1人では宿屋に泊まれないだろうってさ。そうなると、オレ泊まるところないわけだよ。それで、相談なんだけど……、ここに泊めてくんない?」

 オレの話を聞いていたおっさんが首を振る。

「ダメだ、ダメだ。うちは宿屋じゃない。しかも、ギルド職員でも冒険者でもないお前を泊めるなんてできるわけないだろう」

 そこをギルドマスター権限でなんとかしてほしい。

「でも、オレ1人では泊めてくれるとこないって言うんだからしょうがないじゃん。オレちっちゃいし、迷惑かけないから泊めてくれよ~」

 そうお願いしてもやっぱり首を振るおっさん。

 なんだよ、ケチ。

「そもそも冒険者になりたいって言ってるオレを登録してくれないのが悪いんじゃんか。ギルドカードが身分証替わりになるんだったら、ギルドカード持ってればオレ1人でも宿に泊まるのも可能なんだろ?」

 街中でも皆何かあればギルドカード提示して身分確認してるのオレ知ってるんだからな。

「まぁ、そりゃあな。ギルドカード持ってるってことは、そのギルドがお墨付きを与えたってことだからな」

 やっぱりな。

 ギルドカード持ってれば、オレ1人でも泊まれるってことだろ。

「だろ。それなのに、本部に問い合わせるから1週間待てって言ったのおっさんじゃないか」

 おっさんはオレのこと鑑定してそのチートっぷりが分かってるんだから、いちいち本部に問い合わせなんてしないでちゃっちゃと登録してくれればよかったんだよ。

「それはしょうがないだろう。初めてのことなんだから組織としては上にお伺いを立てないとだな……、その、まぁいろいろ事情があるんだよ」

 冒険者ギルドの内部事情なんて知ったこっちゃないわい。

「1週間待てって言ったのはそっちなんだから、その間の生活保障を要求する」

 何のかんの言ってないでギルドに泊めてくれよー。

「無茶苦茶だな、お前。とにかくお前だけ特別扱いはするわけにはいかん。帰った帰った。」

 おっさんは全然とりあってくれない。

 だが、オレは諦めんぞ。

「はぁ、こうなったら野宿するしかないかもな。でも、野宿なんて危険なんだろうなぁ」

 チラッ。

「もしかしたら、襲われて殺されるなんてこともあるかもしれないし……」

 チラッ。

「心配するな。お前は殺そうと思って殺せる輩ではない。逆に返り討ちにする口だろう」

 ぐぬぬぬぬぬ。

 コレがダメなら次なる手だ。

「あんまりつれないこと言うと、オレ暴れたくなっちゃうかもしれないなぁ」

 チラッ。

 脅しという名の最終兵器だぜ。

「おいおいおいおい、物騒なこと言うなよ。お前が言うと冗談にならん」

 オレも必死なんだよ、野宿は嫌だ。

「だって、おっさんが冷たいこと言うからさぁ」

 チラッ。

「オレだってけっこう必死なんだよ。野宿なんて嫌だし」

 チラッ。

「あーもう分かった分かった。ここに居ていい。ただし、1週間いや本部から連絡が来てお主の処遇が決まるまでの間だけだからな。分かってるな!」

 イエスッ、イエスイエスイエスッ。

 やったぜ!冒険者ギルド居座り決定っ!

 なんとか押し通したった。

 やればできるもんだな。

 これで、しばらく宿の心配しなくていいぜ。






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衣食住の確保完了おめでとうございます
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