第13話 妖精(珍種)、オークの巣を殲滅する
次なる獲物を探してフヨフヨ飛んでいると、二足歩行の豚の魔物の集団を発見した。
うん、ありゃどっからどう見てもオークだな。
一応、鑑定。
【 オーク 】
【 魔物ランク : E 】
やっぱりオークだね。
ん?先頭のオークだけなんか鎧を着てるな。
鑑定。
【 オークリーダー 】
【 魔物ランク : D 】
オークリーダーって平オークより1つランクが上だな。
あれ?オークリーダーが何か持ってるみたい。
その後に続く平オークもよく見れば何か担いでるし。
まだ少しオークまで距離があったので、慎重に近付いていって目を凝らすと……。
ゲェェェェェッ!
先頭を歩いてるオークリーダーが持ってるの、人間の頭だ。
それに後に続く平オーク共が担いでるのは血だらけの鎧やら剣やらだ。
あれは冒険者と戦って奪い取った戦利品か?
オークリーダーの持つ人間の頭は、差し詰め勝利のトロフィーということか。
魔物との戦いに負ければあんな風にされるとは、冒険者ってのも因果な職業だよなぁ。
そうは言っても、オレもその冒険者になろうとはしているんだけど。
あれを見ると、正にここは弱肉強食の世界なんだなと思い知らされるね。
オレはチートではあるけども、それでも油断しないようにしなきゃいけないな。
それにしてもあのオーク共、あんなものを持ち帰ってるってことはこの辺に巣でもあるんだろうか?
ゴブリンと同じでこりゃ殲滅しといた方がいいだろうなぁ。
どれ、後をついていってみるか。
オークの後をついていくと、開けた場所に出た。
oh……。
あったよ、オークの巣。
オークがうじゃうじゃといる。
自分たちで建てたのだろう、粗末な小屋もいくつか建っている。
ざっとだけど、見た感じ100匹は下らないな。
これだけいるとブヒブヒうるさい。
さっき見たとおり冒険者にも被害が出ているようだし、昨日のゴブリンの巣に続いてこいつらも殲滅した方がよさそうだな。
でも、数が数だしどうしたもんか。
こういう場合だとやっぱり広範囲魔法でとりあえず数を減らすのが有効かな。
だとすると、アースニードルかライトニングニードルか?
あ……、そういやラノベとかネット小説だと、オーク肉が食肉として売られてる場合がけっこうあったけど、どうなんだろ?
まぁ、見た目が豚だからありえそうっちゃありえそうだけど。
一応食肉用として売れることを想定して、ここはライトニングニードルを広範囲でいっとこう。
「ライトニングニードルッ(広範囲)」
開けた場所全てにライトニングニードルが降り注ぐイメージで魔法を発動する。
シュンシュンと唸りをあげながら無数のライトニングニードルがオーク共の上に降り注ぐ。
「プギャッ?!」
「プギィィィィッ!」
「ピギィッ!!」
ライトニングニードルを食らったオークがバタバタ倒れていく。
よし、今ので4分の1くらいまで減ったな。
では残りを倒しますかって、残ってんの強そうなのばっかだな。
鎧を着て斧を持ってるのがけっこういる。
こういうときは鑑定だよな。
【 オークジェネラル 】
【 魔物ランク : C 】
おっと、Cランクだ。
ってことは、オークジェネラルに守られるように真ん中に立ってるデカいのはもっとランクが上ってことか?
これも鑑定。
【 オークキング 】
【 魔物ランク : B 】
おぉっ、Bランクだ。
なんかエラそうにしてやがるなと思ったら、オークキングか。
キングなんてついちゃって強そうだけど、オレは負けないからな。
なんてたってオレの方が強いし。
ちゃっちゃと殲滅しちゃうぜ。
ランクも高くなってきたから、確実に仕留めた方がいいな。
アースニードルで串刺しにするのが確実か?
なんて考えていると……。
「プギィィィィィィイッ!」
ゲッ、見つかった。
オークキングがこっちを指差して叫んでいた。
残ったオーク共が斧を振りかざしてオレをめがけて押し寄せてきた。
ギャーーースッ!
「アースニードルッ!!!」
素早く魔法を発動すると、ニョキニョキっと地面から生えたアースニードルでオーク共が串刺しになる。
しかし、討ち漏らしたオークが更にオレに迫る。
「ストーンバレットッ、ストーンバレットッ、ストーンバレットッ!」
オレはさらにストーンバレットを飛ばした。
猛スピードで飛んでいく数多の石礫に全身に風穴を開けられ、オークはオレにあと1歩届かずにすべて倒れていった。
ふー、焦ったー。
けど、バッチリ。
初手のライトニングニードルで討ち漏らしたのはほぼ殺ったぜ。
残るはオークキングのみ。
「プギッ、プギィィィィィッ!!!」
仲間が倒されたことに怒り狂ったオークキングが歯を剥き出しにして大斧を振り上げてこちらに向かってきた。
「ライトニングニードルッ!」
ライトニングニードルを発動したが、より強力なものをと考えて前と違い30センチの長さで太さも1センチのものをイメージ。
針というよりも矢に近いライトニングニードルが何本もオークキングに突き刺さる。
「プギャァァァァッ」
オークキングはオレに届くことなくドスンッと倒れて息絶えた。
「よし、終わった」
ふぅ、オークの巣殲滅完了だな。
一仕事終えたオレは辺りを見回した。
「うへぇ……」
100を超すオークの亡骸で一面が埋め尽くされていた。
「これはアイテムボックスに収納するのにも一苦労だなぁ」
まぁ、アイテムボックスに収納したい場合はそのものに触れて『収納』と念じればいいだけなんだけども。
ちなみに魔法発動のときに魔法の名前を言っているのは、その方がよりイメージしやすいってのと発動のタイミングがとりやすいってのがあるからだ。
多分、言葉に出さなくても発動はすると思う。
なんちゃらかんちゃらって長い詠唱はちょっとというかかなり恥ずかしいが、魔法名を言うのはオレの中ではアリなのだ。
アリったらアリなのだ。
魔法と言えば、練習がてらいろんな魔法をイメージして一度は発動しておいた方がいいな。
焦ると使ったことのない魔法だとすぐにイメージできないしね。
だからどうしても発動したことのある魔法に偏りがちになってしまう。
せっかくの魔法チートなんだから、その辺は要練習だ。
そんなことを考えながら、オレは次々とオークを収納していった。
平オークが86、オークリーダーが12、オークジェネラルが5、オークキングが1の〆て合計104匹。
フヒヒ、大漁、大漁。
キュルルルル―――。
オレの腹が鳴いた。
うん、腹減ったな。
獲物もたくさん獲ったし、そろそろ帰ろうかな。