今日 作者: 青埜 漠 掲載日:2017/07/13 『今日』 宿り木になって 流れる雲を見ていた 雲はめくれたり伸びたり 千切れたりして そのたびに 横を向いた空が 透けて見えた 川端に植わった 樹に寄生(つ)いて 今日 風に吹かれていた 足元で タチアオイの花が 白く輝き 踊るように揺れていた 楠(くすのき)の枝に 眠らずにいた したいこともなく すべきこともなく 腹も減らず 心配もなく ただ 息をしていた 長閑な町の 川の傍の 大きな楠の枝の上で 宿り木は目を開けて 端から少しずつ 暮れていく空を 眺めていた