① あつし、異世界へ旅立つ・・・
真田あつしは、とても泣き虫な男である。
ころんだら、すぐに泣き始める。その、泣き始めの速さと言ったら新幹線のスピードよりも速い。
また、真田あつしは、臆病である。
どんなささいな事にもすぐにビックとなり、震え始めてしまう。その震えの振動は、携帯電話のバイブ機能よりも激しい。
ある日のことである。
あつしは、いつも通りの公園で、いつも通りに苛めっ子グループにいじめられ、いつも通りに大泣きをしていた。周りには誰もいなく、あつしの泣き声だけが公園に響いていた。
(うおおおん、あああああああん、おおおおおおおおおお!)
その時突然、いつもとは違う気持ち悪い風が公園に吹いたのであった。
(ざわっざわっざわざわーざわ………)
あつしは、そのいつもとは違う気持ち悪い風を感じ泣き止んだ。しかし、体はマッサージ機の振動のように激しく震えていた。
(ざっくさっくざっくさっく…さくっ)
霜柱を踏むような足音が聞こえてきた。そして、その足音はあつしまで残り数センチというところで、消えた。怖くてうつむいていたあつしは、顔を約120°ぐらいあげた。
(カクッ…!!)
あつしの目の前には、フライパンがいた。いや、正確にはフライパンのような形の顔をした大男が立っていた。
大男「君、ここら辺でフライ返しを見なかったか?」
あつし「フライ返し?そんなもの見てないよ…というかなんでフライ返し…?」
あつしは、震えながら、いかにも泣いているかのような声で返した。
大男「まじか…どうしてもそれがなければ俺は、俺は…」
あつし「フライ返しなんてスーパに売っていますよ…」
大男「ほほう。スーパーとやらに行けばあるのか!どうもな、少年!」
あつし「というかあなた誰ですか…?そしてなんでフライ返し…?」
大男「少年!君はさっき泣いていたな。そんな少年君に良い言葉を教えよう!」
あつし「良い言葉…?というかなんで泣いていたことを…。」
大男「その言葉というのは……だ!元気でな、少年!」
あつし「何ですか、その言葉…。というか、待ってください!!!」
そして、あつしとの会話の流れと、あつしの渾身の叫びを無視した大男はどこかに行ってしまった。
あつしは、とりあえずその教えてもらった良い言葉というものをいってみることにした。
「パイ―ン!パイ―ン!のパンパンパンッ!」
(なんかエロいな…)
そう思ったあつしは、次の瞬間白い光に包み込まれた。
あつしがふと目を開けるとそこは、緑がきれいな大草原だった。
あつしは、混乱してしまった。
数分後、落ち着いたあつしは、また例の言葉を叫んだ。
「パイ―ン!パイ―ン!のパンパンパンッ!」
しかし、何も起きなかった。
あつしはやけになりその言葉を連呼した。
「パイ―ン!パイ―ン!のパンパンパンッ!」
「パイ―ン!パイ―ン!のパンパンパンッ!」
「パイ―ン!パイ―ン!のパンパンパンッ!」
やはり、何も起きなかった。
そして、あつしは再び震え始め、泣き始めてしまった。
(うおおおん、あああああああん、おおおおおおおおおお!)