6話 オジョウサマ
着々と増えていく(?)文字数、しかし進まないお話。
文字数を増やしてら増やしたで物語よりも描写に重きを置いてしまいます。
全部スマホから打ち込んでるせいかPCからだと文章の区切りなどで読みづらい可能性がありますが、ご指摘等ございましたら感想欄の方に宜しくお願い致します。
3,511字(改行・空白含まない)
2017/05/30 改行を修正しました。
「名前が無い? どういう事だい?」
俺はドヤ顔でふんぞり返って神様を称する銀髪碧眼の少女を訝しんだ様子で眺める。猫なら分かるが文明の発達した世界で個人名が無いというのは不便ではなかろうか。
「ふっふーん、神様を人間と一緒にされては困るのだよ…ぶぺっ!?」
車のドアで瘤作ってるやつが言っても説得力は無い。何か調子に乗ってそうなので額の瘤に近いところに一発デコピンをしておく。女の子らしからぬ声が出た気がする。
「ちょ、ちょっと! 会心の一撃は駄目だって! 防御力無視の攻撃反対!!」
「いいからどういう事か説明」
中指を丸めてその爪を親指の腹で抑え込み追撃のポーズを取って額の前に浮かべておく。デコピンが怖くて慌てて目をぎゅっと閉じる美少女というのはなかなかに悪戯心を擽られるが、知り合ったばかりの異性にこれ以上の事をするつもりはない。
「あんなにたくさん神様がいるのに誰か呼ぶ時はどうするん?」
知り合ったばかりでも相手が気安く接してきている以上はこちらも気安い態度で対応すべきだろう。お客様でも無いしね。
少女はちらりと薄目を開けて安全を確認した為か、防御態勢を解いて額を擦りながら俺の質問に答える。
「声掛ける時に意識を向けたら分かるから必要ないんだよ。人出身の神様には名前あるから呼ぶ事もあるけどそんなに数いる訳じゃないし」
便利なのか不便をなのか分からんな。神様同士で「よお神様、元気かい?」とか言ってるのか?
「いや人相手でもなければ神様って単語自体使わないよ。そもそも自分らで様付けとかあり得ないでしょ」
それもそうか。でもこんなにビルが建ち並んでるのは会社みたいな組織があって、そこに所属して仕事してるって事だよね? 役職名とかは無いの?
「役職はあるし役職名で呼ぶ事はあるね。社長とか専務とか」
「役職名同じかよ!」
「そりゃ人間の真似事だからね。神様はみーんな個人主義だから人間みたいに権力みたいのは無いけど」
それでよく会社が成り立つな……あ、でも食いっぱぐれて死ぬなんて事が無いなら必要無いのか。
「そうだね、食べるのも働くのも娯楽だから。自分の担当する世界を維持するのだって娯楽の一部だしね。あ、人出身の神様は食べなきゃ死んじゃうから必死に仕事してるかな」
世知辛ぇ……てか神様も死ぬのか。
「飽きたら滅びる」
「え?」
「飽きたら勝手に消える」
訳が分からないよ。
どうやら神様方は基本的に遊ぶ事しか考えていないらしい。というか生きる事=遊ぶ事なので生物に於ける永遠のテーマである種の保存という概念が無いそうだ。よく滅ばなかったな、神様。
そういえば人口…神口と言うべきか。減る要因が少なそうだけれど増え過ぎて困ったりはしないのだろうか。
「んー、新しい子供は大体その神様の世界で生活し始めるし、ここ最近、数千年の間では【降臨】したまま夫婦で添い遂げるのがブームになっててむしろ減ってきてるかも?」
数千年続くブームって時間のスケールが違いすぎるな。さっきも、ちょっと話をしましょうと言って千年くらいとか言われたし。この娘何歳なんだろう。ロリBBAなんてジャンルが日本にはあるけど女神様は幼いとはいえ見た目二十歳手前くらいだしセーフだろうか。ちょっと聞いてみようか。
「数千年が最近って事は神様はいく『あ゛あ゛ン?』ゴメンナサイ」
人間デモ神様デモ女性ニ年齢ヲ聞クノハ失礼デスヨネ。ここは上手く話を逸らさねば。
「それにしても、たくさん神様を見ちゃうと神様の事を神様って呼びにくいのだけど」
字面も非常に判りにくい事この上ないね。
「ん。私の事をイメージしてくれればどんな呼び方でも反応は出来るのだけど…人間はそういうとこが不便ねぇ。他の生物だって名前なんて呼ばないのにね」
「理解はするだろ? 犬でも猫でも」
「そりゃ自分がポチとかタマとか呼ばれ続けたらそれが自分だって思うでしょ」
納得してしまうのが悔しい。でもほら、特別感が欲しいじゃない? せっかく他の量産型神様達とは一線を画している容姿なのだし皆一様に同じ呼び方では勿体無い。
そう言うと少女姿の神様は少し得意そうに、そして照れくさそうに顔を赤らめた。褒められ慣れていないのだろうか? こんなに可愛いのに。日本人とは美的感覚が違うのかもしれないな。
何だか身体をくねらせてもじもじしているのがとてもグッとくる。そして身長差からくる上目遣いは破壊力が凄まじい。彼女がチラチラと俺を伺いながら恥ずかしそうに告げた。
「……それじゃ、アマノさんが名前付けて?」
さてどうしたものか。
目の前に佇むのは銀髪碧眼の美少女であり神様である。そして神様には必要が無かった故に名前が無いらしい。それを不便だと指摘したら名前を付けてくれときた。
俺は二十七歳独身、親戚や友人の子供の名付け親になった事も無いしデザイナーでもなければプランナーでもない。ゲームの主人公の名前を付けるなんて事なら幾らでも経験はあるのだが……。
人…ではないが、女の子の名前の付け方ってどうすればいいんだろう? しかも見た目からして日本人ではない。カナ名でいいのか? 姓名診断は必要なのだろうか? 画数は?
命名法なんぞ調べた事が無いから混乱してしまう。とりあえず音が綺麗で且つDQNネームでは無いものならいいか? 海外のDQNネームってどういうのか分からないけど。あと、神様の名前なので既存の神様からっていうのは無しだ。あぁ、悩む。
――――いつもそうだ。大事な事を決められない。
俺がうんうんと唸っていると彼女は困った様な顔で微笑んでいる。早く決めなきゃ。でも俺が決めていいのだろうか? 俺なんかが?
「悩むねぇ。私はこのまま二、三十年くらいは待っててもいいんだけど、テルはそういう訳にはいかないから先にとーろくしに行こっか。このビルに役所が入ってるからさっ」
「え? 登録??」
「あいでぃーとーろく!」
【ID登録】? 何のIDだ??
彼女は混乱している俺の手を取ると、「えへへ〜」と笑いながら俺に抱き……突進してきた。急すぎて処理が追いつかない。バランスを失った俺は踏ん張る事も出来ずにその場に倒れ込む。床に激突する瞬間に身体全体が熱くなるのを感じた。思わず目を閉じる。
床が抜けた。
感じたのはそれまで踏んでいた硝子の様に透明な床にめり込む感触。勢いよく打ち付けた筈だが痛みが無い。ランディングマットに倒れ込んだ感触と言えば分かりやすいだろうか。小学校や中学校の体力測定、走り高跳びなんかの授業で使った覚えがある。
気がつくと俺は固い床の上に立っていた。はて? 倒れ込んだ筈なのに。この地を足で踏みつけ、頭から足の裏へと重力に晒されている感触は確かに立っていると言っていい。同時に胸や背中に軽い圧迫感と熱を感じる。思わず頬が緩んでしまう良い香りが鼻腔を擽る。
目を開けた時にはそれらの感覚は既になくなっており、目の前の少女が何やらカウンターで受付嬢と話をしていた。
「おかえりなさい、お嬢様。こちらの方が?」
「ただいまーっ! そうだよ〜、早くとーろくとーろくぅ!」
「周りの方々の迷惑になるのであまり騒がないで下さいね。それと転移して来るにしてもちゃんと入口をご利用下さい」
「相変わらず固いなー。今回はテルの初体験だから見逃してあげて?」
「無理矢理に転移させたのはお嬢様でしょう? 驚かせすぎて御二方共の【魔力線】がごちゃごちゃに『ワー!ワーッッ!!』…何ですか急に」
急に耳打ちを始めた二神を訝しく思いながら、今起きた事を整理する。
先程聞こえてきた話からすると、どうやら俺は屋上から【転移】して来たようだ。壁に張り付けられたフロア案内を見ると現在位置は六十階となっていた。最上階は七十階らしい。横浜のランドマークタワーがちょうどそのくらいだったと思う。日本で二番目に高い超高層ビルだけど名前だけなら一番高いあべのハルカスよりも有名だよね。魔法商店街が残っていれば――っと話が逸れた。
魔力が云々聞こえてきたけどヨクワカラナイ。一瞬、車内で眉間の火傷を治してくれた時みたいな暖かさを感じたからその事だろう。で――――
「オジョウサマ?」
確かにそう聞こえたが。遊びしか無いらしい神様の世界に階級とかあるのか知らないけど、会社があって役職があるなら社長令嬢とかそんな感じか? 何でそんなヒトに目を付けられたんだ俺。
ようやく俺が落ち着いてきたと診たのか、受付嬢をしている神様がお声を掛けてくださった。
「はい、こちらの方は当協会【社団法人 異世界ネットワーク総合法人協会】副会長の御令嬢で御座います」
会社じゃなくて協会だった!
六話にしてようやく異世界モノらしくなるかと思いきや……orz
考えすぎて決められない主人公の図。
決して作者の中でヒロインの名前が決まっていない訳ではありません。
輝の性格は今後次第に変わっていく予定ですが、現状では少々イラッとくる性格かもしれませんね。
阿部野橋にはかつて魔法商店があったらしいです。詳しくは『アベノ橋魔法☆商店街』をご参照下さいませっ!
安倍晴明神社はもちろんの事、フランス一品料理グリル・ペリカンの元になったお店もあるそうです。
会社と協会の違いは一言で言えば運転資金をどうやって入手するかの違いです。
サービスを通して顧客から資金を得るのが会社、協会は主に会費がメインの収入となります。
社団法人は「理念・目的の為に人を集めた団体」です。よく聞く財団法人は「財産を預けた団体」と考えると分かりやすいですね。
次回、ヒロインの名前がやっと登場するよ!