5話 いいセンスだ
第三者視点との複合となります。
そして相変わらず話が進まない!
2,828字(改行・空白含まない)
2017/05/30 改行を修正しました。
創造神――万物を創造せし神
最高神――数多の神々の頂点且つ全知全能の神
天空神――天空を司る神
その他にも雷神、邪神、軍神など。なるほど、我々人間の間では古来より神には様々な区分けがなされている。そして多くの神話が語り継がれており、それぞれに地域毎の名称が設けられる。
しかしそれらは本来神々によって直に伝えられたものではなく、人間による壮大な創作物に過ぎない。宗教家から「罰当たりだ!」と罵られようとも科学の世界である地球、いや我々の棲まう銀河系に於いてこれは最早揺るぎ様の無い事実である。
確かに世の中には科学だけでは説明がしづらい現象も存在している。
ポルターガイストやラップ現象、予知夢や念能力、霊媒といった超能力と呼ばれる力を持った人々。幽霊、ゴーストの存在。神隠し。土と水だけを食して数十年間生き永らえている老人等も科学で解明されていない。もっとも、悪戯やヤラセ、トリックとされるものも少なくは無いが。
さて、神々の話に戻そう。
神話とは所詮は人間のイメージ力の産物である。が、【神】という単語は実はそうでは無い。人間が自分達を【人間】と称したのは果たしていつからだろうか? 不思議な事にその起源は明らかとされていない。
結論だけを言うと、神もまた【ヒト】であった。但し、人型の何かであって【人】そのものではない。神々もまた進化し続けている。人が元々は猿であり、鼠であり、海を漂う原生生物であったように。自らの世界に生息する生物の中で最も進歩し、最も愉しむ事ができる姿へと。
天野輝は人間である。
人間とは科学の世界において文明人であり、道具を有し、不便を解消し続ける事で発展してきた生き物だ。恒温動物で個体の能力は汎用だが特化した能力や【特別な力】を持たない故に【機械】という道具によってその種を繁栄させてきた。
輝もまた文明人であり、科学の世界の住民だ。だから目の前の景色がとても科学的であり、非科学的である事を咄嗟に理解した。
建ち並ぶ高層ビル。その周囲に浮かぶ森林。大きなスタジアムの上空にある雲からはナイアガラの様に美しい滝が流れている。【人】が生身で空中を飛び回っているかと思えばデルタ翼の航空機が飛んでいるのも見える。
一区画と少し離れた位置には広々とした公園。その奥には住宅地だろうか、西洋風の街並みが佇む。遠くに霞んで見えるのは海だろうか。振り返ってみれば何とも神秘的で壮麗な山が聳えているが、その麓には平和な田園風景を望む事が出来る。
輝が立っているのは超高層ビル、謂わば摩天楼の屋上。床が硝子張りなのか材質は不明だが透明度が高く、中心部にいるにも関わらず階下の景色を鋭角に見る事が出来る。不思議な事に自分の足元だけは半径三十センチ程の円形に白く濁っており、彼が移動すると濁りも遅延を生じる事なく同じ様に移動して真下は見えないようになっていた。
「アマノさん」
輝を呼ぶ声が傍らに立つ銀髪の少女から発せられたが、景色を眺めるのに夢中になっているせいか輝が気がつく様子はない。少女がさも面白いものを見るようにクスクスと笑う。
「アマノさんってば!」
「うわっ!?」
少女が待ちきれないとばかりに輝の腕を引っ張ると、完全に一人の世界に入り込んでいたのか輝は驚きの声を上げた。それでもなお素晴らしい玩具を見つけた少年の様に目が輝いている。
「か、神様……樹が!浮かんでる!! 飛んでるっっ!! 人…いやあれ人なのか?! 生身でっ!」
「落ち着いてください、アマノさんっ」
ここに居るヒトは皆 神様ですよ、と少女が指摘すると輝の顔は驚愕というに相応しい、正に開いた口が塞がらないといった表情で銀髪碧眼の、リクルートスーツを身に着けた少女を見た。
輝の視線が再び階下を舞う(ビルの屋上の輝から見ると下を飛んでいる方が多い)神々へと向かう。彼等の服装は割とカジュアルだ。日本でそのまま町中を歩いていても全く違和感はないだろう。というより彼等そのものが人と何ら変わらなかった。空を飛んでいることを除けば。
路を歩いている神々もいる。むしろそちらの方が多い。ビルの上からでは豆粒の様にしか見えない…と思うのは不敬だろうか。ふと疑問が生じて隣の少女を振り返る。
「ここにいるヒト、って言った?」
「今は人型を取ってますからね。純粋な人の神様も居ますけど」
「人型? 犬型とか猫型なんかの神様もいるの?」
「好きな姿になれますから。ただ仕事する時には人型が最適ですしね。そこは全世界共通ですよっ」
何それ羨ましい。見える範囲のヒト達が皆して美男美女なのはそのせいか。これは神のセンスが問われるな…あ、神のセンスってパワーワードっぽい。
そんな事を考えながら改めて目の前の少女の全身に視線を動かす。まじまじと、舐める様に見るなんて勇気は無いのでちらっとだけ。
小さ過ぎず大き過ぎず、膝丈のスカートの下に見える程好い肉付きの脚。小振りながらも服の下から強調しているSiriから腰のラインは少々子供っぽい。スーツの前ボタンを開けているせいか括れは不明だが視線を少し上にずらすと見える慎ましい隆起は彼女の体格に良く似合っている。
銀の髪が薄く乗った撫で肩。ブラウスの第一ボタンが外れている為に輝の角度から見ると綺麗な鎖骨を覗かせており絶妙な色気を感じさせる。ほっそりとした首元にも目が吸い寄せられるが、少女独特の輪郭にぷっくりとした薄紅色の口唇はとても可愛らしい。
今は何故か少し空気を入れて膨らませている頬も普段は透き通るような白い肌に僅かに乗ったチークがほんのりとナチュラルな赤みを出していて思わず指でぷにぷにとしたくなる。目元は……おや、なぜジト目をしているんだろう。空色の瞳でジッとこちらを睨みつけている。相変わらず左右でちょっと違うけどよく分からない。
艶のある銀の髪は長く腰の辺りまである。手入れはかなり大変だろうが全体のバランスがとても良く、少女の愛らしさをこれでもかと言うくらいに惹き立てている。事前に神様と教えられていなければ、女神というより天使と感じたかもしれない。
「……いいセンスだ」
「スケベオヤジかっ!!」
思わずサムズアップしたら頭を思い切り殴られた。褒めたのに。解せぬ。
「いやでもさ! 好きな様に見た目を変えられる中で神様の……女神様の容姿って凄く特徴的だよね? ほら周りのヒト達も綺麗だけどなんかその、量産型みたいな」
「何で言い直したのっ」
外見を褒められた事は嬉しいようで少し顔を赤らめながら気になった点を指摘する。
「んー、ここに居るのは皆が皆 神様なんだよね? 凄く今更なんだけど俺は女神様の名前知らないし」
あぁ、と納得したように少女が頷いて天使の微笑みを浮かべながら応える。
「吾輩は神である。名前はまだ無いっ!」
「えっ」
えっへん!と腰に手を当てている姿はやはりどう見ても神様には見えなかった。
女神から天使って格が下がってる気がします(笑
でも厳かだけど優しい大人な微笑みを浮かべるより愛らしく子供っぽい無邪気な笑顔の娘の方がヒロインとしては適切かなと。
女神様の外見のイメージは艦これの響を成長させたような感じですが、性格はだいぶ違います。
神界の風景、イメージ出来ましたでしょうか?
心理描写よりも風景描写が難しいです…語彙力ぇ
皆大好き「いいセンスだ」はメタルギアソリッドから。本来はもっとハードボイルドなかっこいい台詞なのですが、今回はネタに使わせていただきました。
スネーク役である大塚さんの渋いボイスも良いですがオセロット役の山崎さん(青年期)や戸谷さんの、「いいセンスだ!」も素敵。
女神様の世界に行くのは何話先になるのやら。
全然神様はじまってないよ!