第3話 もうひとりの自分
前回からかなり間が空いてしまいましたが、地道にコツコツかんばります!
瞼の奥で光が収まるのを感じた私は静かに目を開いた。
するとそこは、西洋の街並みを模したような重厚感漂う世界が広がっており、それと同時に自身のログインが問題なく完了したことを確認する。
「よ〜し!今日も目一杯楽しむぞ〜!!」
現れたのは、雪のような白い肌、長いプラチナピンクの髪と大きいブルーグレーの瞳が印象的な美少女アバターだ。
全体的に可愛い系なのに、少し厚めの唇が艶やかさを加えて綺麗系にも見える。
そして、その唇から聞こえてくる声音は、高すぎず少し低めの部類でとても心地良い。
そんな彼女の名は、アーシャ シュトライン。リアルネームは宮本 亜紗美である。
なぜ彼女の年齢がリアルとゲームで食い違っているのかといえば…。
年を取るにつれて時間を巻き戻したい願望が強くなったこと、また、冒険者として戦闘をしていかなければならないことのふたつを考えた時、やはり身体能力の優れている20歳前後の肉体がベストであるという結論に辿り着くこととなったからだ。
さすがにアラサー女子が10代になるのは自分的にキツイので、かろうじてギリギリセーフなラインだと思われる20代に設定変更することに決めたんだよね。
まあ、お酒を楽しめる年齢ってのも決め手のひとつだったんだけど。
ちなみに余談だが、未成年が18歳以上に年齢を偽って設定変更することは仕様上禁止されている。
万が一にもそんなことをしている人が見つかった場合は、即アカウント抹消、それも永久的にというとても厳しい罰が与えられるそうだ。
そんな処罰を思えば、誰も過ちを犯すことはないだろう、というのが私を含めた世間一般の見解である。
とにもかくにもそんなわけで、アバターの年齢を20歳に設定変更し、若返った亜紗美ことアーシャは再び青春時代を謳歌していた。
「しっかし、何度見ても凄いよなぁ。バーチャルワールドとは思えないよぉ」
今まで1度も海外旅行に行ったことがない私だからこそ、得られる感動も大きく、また喜びもひとしおだ。
でも、そんなお上りさんのように周りの景色に見惚れているのは、決して私だけではないと言っておこう。
証拠に、初期装備を着けた男女がチラホラと姿を現し、総じてみんな口を開けて驚愕の表情を浮かべている。
「今だと第何陣目のプレイヤーになるんだっけ?」
常に品切れ状態で生産が追い付かず、1年間で第5陣目をまでのプレイヤーしか参加出来ていないのが現状であった。
確か、日本だけでおよそ180万人、全世界を合わせるとおよそ3億人にも満たなかったはず…。
開発会社が日本企業の為、他国に比べると出荷数も多く確保できている、なので日本人率はかなり高いとのこと。
ちなみに英語が苦手な私は日本人専用サーバーに所属している。
「まあでも、第6陣に向けての予約販売がもう終了しているはずだから、3日後の午前0時から合流予定のはず。私的には、同時刻にダウンロード開始、1周年記念日に行われる大型アップデート“バージョン1”のほうが大事件なんだけどね!」
周りに怪しまれないようボリュームを下げながら独り言を呟く。
ちょっと悲しくなった…。
「さてと、まずはステータスでもチェックしてみるかな」
噴水広場に移動し、誰も座っていないベンチを見つけるとそこに腰を下ろす。
ちなみに、ステータスを閲覧するだけならば、システム画面に一切触れずに、音声のみで操作することが可能になっている。
「ステータスオープン」
皆様ご存知、定番のアレである。
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名前:アーシャ シュトライン レベル:99
年齢:20歳 性別:女 種族:人間
職業:召喚士
サブ職業:料理人 鍛治師 裁縫師 細工師 薬師
称号:四大精霊の契約者 新たなる武器の創造者 ドラゴンスレイヤー
契約召喚獣:サラマンダー ウンディーネ シルフ ノーム
契約従魔:ベビースライム
HP=生命力:521/521(+20)
MP=魔力:736/736(+20)
HUN=満腹度:100/100
STR=物理攻撃力:277(+50×2)
VIT=物理防御力:191(+50)
INT=魔法攻撃力:95
MIN=魔法防御力:206(+50)
AGI=素早さ:248(+50)
DEX=器用さ:249(+50)
LUK=幸運:184(+20)
アビリティポイント:0
セットスキル:召喚術(中級)Lv91 調教(初級)Lv88 言語(中級)Lv64 知識(中級)Lv34 鑑定(中級)Lv49 料理(上級)Lv51 調合(中級)Lv22 鍛治(中級)Lv82 裁縫(中級)Lv79 時間促進(初級)Lv15
控えスキル:剣術(中級)Lv100(MAX) 銃術(中級)Lv100(MAX) 銃剣術(上級)Lv5 駿足(上級)Lv11 気配察知(中級)Lv76 隠密(中級)Lv74 解体(上級)Lv33 採取(上級)Lv24 採掘(上級)Lv13 調薬(上級)Lv100(MAX) 細工(初級)Lv86 釣り(初級)Lv60 水泳(初級)Lv48
スキルポイント:24
【装備】
武器:銃剣
流水爪牙[水属性](A級):斬撃に特化し、銃撃は小ダメージだが補填できる銃弾数が30発。水竜の爪と牙・ミスリルを素材にしたユニーク武器で物理ダメージ+50up(製作者:アーシャ)
爆炎咆哮[火属性](A級):斬撃より銃撃に特化し、補填できる銃弾数は7発と少ないが大ダメージを与えられる。火竜の爪と牙・ミスリルを素材にしたユニーク武器で物理ダメージ+50up(製作者:アーシャ)
頭:女神の髪飾り(S級)
好感度UP(召喚や調教の契約が成立しやすくなる)
体:大地の衣服(A級)
地竜の革製ジャケット・ホットパンツで物理防御力・魔法防御力+50up (製作者:アーシャ)
腕:助力のレザーグローブ(A級)
風竜の革製グローブで器用さ+50up (製作者:アーシャ)
脚:疾風のレザーブーツ(A級)
風竜の革製ブーツで素早さ+50up (製作者:アーシャ)
アクセサリー
元素のペンダント(SS級):四大精霊との絆の証で親愛度up・属性加護50%up+通訳機能付き
純真のピアス(S級):従魔ベビースライム“コウ”との絆の証で親愛度up+通訳機能付き
生命の指輪(D級):ヘマタイト製でHP・MP・運が+20up(製作者:アーシャ)
所持金:10032076G
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「あらためて見ると、自画自賛じゃないけどまあまあいい感じじゃない?レベル上げ、1年間がんばったもんね〜」
仕事の日は睡眠時間を削ってログインしていたので、勤務中は常に睡魔が襲って来てつらかった…。
休みの日はあまり予定を入れないように心がけて、強制ログアウト回避のための休憩時間を挟みつつも、ひきこもりよろしくとばかりに1日中ログインし続けていた。
ゲーム時間の体感速度は現実時間の6倍速、リアルタイム4時間でゲーム世界の1日となる。
だから休みの日は、7時間ごとに1時間の休憩を挟んでも、約4日間もゲーム世界に滞在することができるのである。
もはや廃人!?
とまあ、日夜ゲーム漬けの日々を送った結果がこのステータスなのだ。
あれもこれもと、戦闘だけじゃなくいろいろな生産にも手を出して、目指せ!自給自足プレイ!!とばかりに邁進してきた次第だが、決して後悔などしていない。
だって、やることなすこと、新鮮で楽しくてしょうがないのだから。
「今日はもう夜遅いから3時間だけプレイすることにして、そんで、明日からの連休を万全の状態で遊べるように早く寝ると。
とりあえず今日は、イベントを想定した消費物の生産作業でもしよっかな〜。精霊のみんなや従魔のコウを呼び出して、お手伝いを頼みつつもっと親睦を深めればいいよね」
この後の予定を決めると、小規模ではあるが立派な工房付きのマイホームに意気揚々向かうアーシャであった___。
架空の名を付けるのが難しい…。
キャラクターの名、装備品の名、そしてこれから登場する予定の国の名や技の名etc…。
いろいろ考えた結果、厨二病を拗らせたような名に…。
センスのなさが浮き彫りになってしまい、お恥ずかしい限りです。