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第2話 忙しなくも変わらない日常

初投稿作品となります。

不定期更新になりますが、がんばりますのでどうぞよろしくお願いいたします。

 宮本 亜紗美は、何とかノルマ以上の業務量を終わらせることに成功していた。

 本日も残業なしが確定し、ことなきを得た瞬間である。

 達成感もそこそこに、切りのいいところで仕事を片付けるとほぼ同時刻、定時の18時を知らせる時計の音が職場に鳴り響いた。

 ざわつき始める周囲を横目に、いつもどおりすぐさま帰宅準備を整えた亜紗美は、同僚たちの誘いには目もくれず、一目散にひとり暮らしをしている自宅アパートに向かった。

 職場から自宅までの距離時間はおよそ30分程度、今更ながら恵まれた住宅環境に軽く感謝だ。

 しかし、いくら近くとも電車の利用は避けられず、帰宅ラッシュを迎えたぎゅうぎゅう詰めの車内に思わず顔が引き攣る。

 毎度のことながら気が滅入る。テンションはだだ下がりだ。

 そんな自分を叱咤激励して、いざ!尋常に勝負!!とばかりに混雑した車内に向かって突撃を開始する。

 案の定、一切の身動きが取れないほどの酷い混み具合である。

 何とか潰されないよう耐え続けること約15分。

 やっとこさ最寄り駅に到着し、降り逃さないためにも必死で人混みを掻き分けて電車から飛び降りる。


「今日も私は戦い抜いた…」


 自分の健闘を讃えるアラサー女子がひとり、通勤時の満員電車の苦行はどうにかならないものかと愚痴りつつ、足早に家路を急ぐ。

 外はもう日暮れており、何気なく空を見上げてみると欠けた月が浮かんでいる。

 夜の匂いを心地良く感じながら、もうひとりの自分が存在する幻想世界に心惹かれていた___。





 そんなこんなであまり時間をかけずに無事帰宅した亜紗美は、まず最初に家事全般(掃除、洗濯、皿洗いetc)をやっつけるように片付け始める。

 時間がもったいないと自分的には精一杯急いでいるものの、やはり手を抜くことなどできるはずもなく、丁寧にやらないと気が済まない性分がいつだって邪魔をするのだ。


「お腹空いた…」


 ついつい独り言が漏れ出てしまった…。

 ひとり暮らしの人間は、どうしてだか独り言が多くなる気がしない?とみんなにどうでもいいような質問を投げかけ、そして同意を得たいと思う今日この頃である。

 その後はひたすら黙々と雑用をこなし、すべてを片付けたら今度は食事の準備へ。

 本日のメニューはホワイトシチュー(サラダ付き)だ。

 なぜならば、多めに作って置いておけば数日間は日持ちするので、連休中の食事の手間が省けるといった小狡い計算があったのは否めない事実である。


「とりあえず、今夜から3日間、またゲーム三昧だ〜」


 料理の下拵えをしながら、明日からの3連休に想いを馳せる。

 かなりのオタクであることは自覚済みで、子供の頃からRPG系のゲームが大好きだった。

 昔は、コントローラーで主人公を動かし冒険した気になっていた。

 でも今は、VR世界にフルダイブして自身で冒険することが可能になった。

 すなわち、よりリアルに近い感覚でファンタジー世界を体感できるということである。

 この夢のようなゲームの発売が発表された時には、自分も含め、全世界の人々が狂喜乱舞したものだ。

 そんな神ゲーだからこそ、手に入れることができてしまった自分は、一生分の運を使い果たしてしまったんじゃなかろうか…。

 いや、悔いはない!!いやいや、そんなん嘘だけどね(笑)

 しかし、スタートダッシュを切ってから約1年、連休最終日がファンタジーワールドオンライン1周年記念日に該当するなんて…。

 なんという神の思し召し!

 当然、記念日には何かしらのイベントがあるのではないかと踏んでおり、今からテンションあげあげモードで絶賛待機中である。

 胸アツだ!ワクワクが止まらない〜!!

 そうこうしているうちに下拵えが完了したので、後は煮込むだけの状態にしてからお風呂場へ移動する。

 さきほどお風呂掃除も終わらせておいたので、後は湯船にお湯を溜めるだけだ。

 ゆっくり湯船に浸かりたい派の自分は、最低でも約1時間(シャワーのみの場合は約30分)は入浴時間に当てている。


「お風呂のお湯が溜まるまでに夕飯済ませなきゃ」


 高揚した気分を隠しもせず、軽快な足取りでキッチンへ戻る亜紗美であった___。





 その後直ぐに入浴し、愛用のパジャマに着替え肌を整え髪を乾かし、すべてが終わる頃には既に22時を回っていた。

 ゲームプレイするために必要なゴーグル型VRマシン“I.P.”(インフィニット ポシビリティー)をスタンバイすると、部屋の明かりを薄暗い状態にしてベッドに潜り込む。

 ゴーグルに付いている電源ボタンをONに、そして目を閉じると亜紗美は静かに呟いた。


「コネクト」


 眩い光を瞼越しに感じながら次第に薄れてゆく意識が、あの焦がれるほどに憧れた電脳世界へと旅立とうとしていた___。

誤字脱字には気をつけておりますが、もし見つけた際にはご報告いただけましたなら幸いでございます。

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