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詩*日常から*

鮭の切り身

作者: a i o

鮭の切り身を焼く

グリルに並ぶ二切れ

君の分

わたしの分


こんがりと焼けた

皮が好きな君のために

じっと青白い炎を眺めながら


身が薄く色を変える

焼き目が静々と刻印されていく


菜箸で持ち上げれば

ほろりと崩れてしまったのが

わたしの分

見目が良いのが

君の分


食卓に楚々と並べられた

二人分の

白米

味噌汁

一切れずつの鮭


君の寄越した視線と同時に

私は鮭の骨を取る


どんな細やかな骨も残さぬよう

骨を取る


君は綺麗に骨を抜き取った鮭を食べる

一口

二口


私は皿の端に寄せられた小骨を数える

一本

二本


君はこの鮭に骨があることを知っている

わたしはこの鮭の骨の数を知っている


君の上下する喉仏を

見つめながら


わたしは薄く透きとおった小骨が

君の柔らかな部分に

突き刺さることを夢想する


わたしには

到底行き着くことのできない

深い深い場所へ潜り込み

いつか君の一部になるような

そんな小骨を


君はわたしといる限り

骨のない鮭を食べるだろう

わたしは君といる限り

鮭の骨を取るのだろう


君のどこにも

突き刺さることのない

透きとおった小骨


そうしてまた


わたしは君のために鮭を焼く








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― 新着の感想 ―
[一言] 愛を感じます(*^。^*) 深い~
[良い点] 雰囲気があっていいです。骨を取るという行為にある種の契約のような、決して奉仕ではなくもっと奥深い情念を感じて、読み返しました。秀作だと思います。
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