第一話 修正版
第一話 修正版です。
全然違くなってビックリしました。
やはり成長って素晴らしい。
退化でないことを祈りますが。
修正版 第一話
エピローグ
〜第一話〜
-過去の始まり-
もし、日常が、本当にただなんの変哲もない日々の積み重ねだけだったのなら、その人生は途轍もなく退屈だと思う。些細な生活の中に偶然起こったことがあるからこそ、日常というものは成り立つのである。しかし、そうだな、わたしが考えるに人生は日常という名の偶然で構成されていると思う。方程式では表せないけど、証明なんてできないけれど、1人の人間として、1人の人間が描いた経験則として、1人の天才科学者として、私はそう思うよ。
いつもと同じ時間の、いつもと同じ味気のない公園。僕はそんな公園の端っこにポツンと置かれた、誰もいない砂場でいつもと同じ様に、少しだけ湿った砂でただ意味もなく砂山を作っていた。『君は、何か普通の人間とはちょっと違うね』『?、ん?それって僕のこと?』僕が砂山を作り終えて満足している時に、僕の後ろから彼女は唐突に言った。『そうよ、君のことよ』『そうかな?それなら僕は君の方がおかしいと思うよ?』『君、将来苦労すると思うよ?そんな感じするし』『え?そうなの?なんでわかるの?いやだなぁ』『でもそれ以上に楽しい人生かもしれないよ』『?、君、何言ってるの?』『そうね、君にはまだ難しい話だったかもね』僕らの会話を蝉の鳴き声が遮ってゆく。ミーンミンという喧しい声がつくつくほーしつくつくほーしという鳴き声に変わっているのに気がついた。この鳴き声に変わったら夏ももう終わりなのだとお母さんから聞いた。夏ももう終わるんだなと、心の隅で思った。『ところで君は誰なの?さっきからなんか偉そうだけど』『わたし?わたしはただ通りすがりの一般人だよ』『ほら、何か偉そうじゃん。』『ふふっ、そうかもね、あまり喋らないし』『友達いないの?』『別に…』顔色を変えず、ただ少しだけ声を小さくして、誰だか分からない君はそう答えた。『じゃあ友達になろうよ君の名前はなんて言うの?』『名前?そんなことより、わたしはあなたに伝えておかないといけないことがあるの』『名前を言うのよりも大事なことなの?』『そうよ』『ふーん、で、なんなの?』『もし、この世の人の生が偶然という名の日常で構成されているのなら、君は必然と奇蹟で構成されているの、分かる?』『全然意味が分からないよ。』『そうね、これを君に伝えるのはまだ早すぎたわね、でも今のことだけはずっと記憶の片隅に置いておいてね』『かた、すみ?うん、うん、分かったよ、だから名前教えてよ。』『わたしの名前なんてどうでもいいのだけど、、わたしの名前は 夢花 遺 (ゆめげ ゆい)よ、宜しく。…君の名前は?』『僕?僕の名前は離島 郷 (りとう こう)だよ、よろしくね』『そうね、よろしく。でもきっと君はわたしと友達になったことを後悔すると思うけど』『後悔?するわけないじゃん君と出会えたのことに感謝してるよ』『そう、偉いのね』『僕も一つ聞いていいかな?変だと思うかもしれないけど』夏だと言うのに冷たい風が吹き抜けた。やっぱりもう夏は終わるようだ。『なに?』『こんなことを疑問に思うのは変だと思うけどさ、、、』
カーテンが翻る、それと同時にカーテンの隙間から眩しい光と俺の知らない花の香りが視覚と嗅覚を刺激する。目を閉じていても眩しいものは眩しいし、ましてや香りなどはどうしようもないのである。『昨夜、窓を開けて寝るんじゃなかった…』手で目を覆い隠しながら、目を半分開け、言い訳混じりに独り言を呟いた。毎夏恒例、俺の『夏休み朝寝坊連続記録』は7:57という歴史的な新記録とともに、例年類を見ない初日で幕を閉じるのであった。
蝉の鳴き声となんとも言えぬ蒸し暑さが寝起きの体に憂鬱感を与える。このままただ寝ころんでいても二度寝は出来なさそうなので、俺は右足で布団を蹴るといる何とも雑な方法で布団を畳んだ、いや畳んだというよりは半分だけひっくり返したと言った方が妥当か。夏休み初日の今日、特にこれと言ってすることのない俺は、とりあえず階段を降りて、一階へ行くと、大理石で作られた(と父親から自慢げに聞かされた)机の上に、不恰好に置いてあるリモコンを二つ両手にとってまるで拳銃でも扱うようにカッコつけてテレビとエアコン、それぞれに電源をつける。そして流石とも言える夏休みのつまらない朝番組を尻目に冷蔵庫の中に山ほど入っている缶の野菜ジュースを一本取り出すとソファーに寝転び、スマートフォンの電源をつけた。
小一時間ぐらいは経っただろうか?テレビの左上には9:32と表示されていた。俺は、そろそろ朝飯でも食べようかと体勢を直した。その時、ふとピンポーンという、不快な機械音が聞こえてきた。俺はこの音が大っ嫌いだ。自分の時間を他人に阻害される気がして、良い気がしないからだ。しかも大抵その扉越しの相手はセールスやら勧誘だというのだからたちが悪い。そういう時、俺は決まって客人?を無視する。いつもは妹が出るのだが生憎、今、我が家には俺を除いて誰も居ない。妹は部活、母は毎度のことだがどっかに行っている。そんでもって父は海外で仕事をしている。こうしてみると俺だけ家族の中でダメ人間みたいだが別に違う…うちの人間はアウトドア派が多すぎるのだ。何かあるたび、すぐに何処かへ行こうとする。俺にはその発想が理解できない。ちなみに俺は根っからのホームシック。外とか怖い。外は危険がいっぱいである、家こそが自分を守る最大の防御。完全なるホームシック思考ここに参上である。将来は自宅警備員に就職しようかとすら考えたこともあるぐらいだ。この思考、一体誰に似たんだろうか?すくなくとも両親ではないだろう。なんてそんな下らない事を考えている間にもピンポーンピンポーンと客人が何回も鐘を鳴らしてくる、大体この時点でこの来客者には目星がついている。久しぶりに鬱陶しい客人が来たものだ。これではどのみち俺の寝坊記録は初日で終わっていたじゃないかと思いながら、急ぐそぶりも見せずにトボトボと歩いてゆく。そして如何にも頑丈そうな、鍵の二個ついてる扉の鍵を外すと玄関の扉を開けた。クーラーのついた部屋に入ってくるクラッとするような蒸し蒸しとした暑さ、その中で一人、少しばかり汗をかきながらも涼しい顔をして佇んでる長髪の女性、ワンピースに麦わらの帽子が似合う女性というのも今時そうはいないだろう。小柄なくせに胸は人並みにデカイ『それ』がそこにいた。『よぉ、夏。』若干の嫌味を音にのせつつ、俺は確認するように言葉を放った。八俣 夏。腐れ縁にして俺が一生勝てないであろう相手。例えるならば恒星、太陽のような奴だ、太陽と言うのは決して褒め言葉ではないが。そして差し詰め俺は俺は太陽の周りに漂っているなんの変哲もない小粒のような石といったところだろう。それぐらいに俺とこいつには『圧倒的な差』があるのだ。運動神経抜群、成績優秀、おまけに容姿も良いときた。こんな奴と昔から付き合っていれば僻むことだってある。ふと夏を今一度見てみる。そして気付いた。あの五月蠅い夏が一言も喋ってないことに。いつもなら二階で寝てる俺にも聞こえる、近所迷惑な馬鹿でかい挨拶をブチかましてくるところなのに……。
-始まりの始まり-