勘違いと勘違い
-勘違いと勘違い-
さて、この見知らぬこの女性、どう対処するべきだろう。何処で聞いたか知らないが俺、正確に言えば俺たちがキャンプに行くことを知っているとみた。そこで俺はまずバド部の情報流出係を見つけ出すことにした。『それはどこで聞いたの?』よし、この一言がベストだろう、犯人の名前も分かるし、若干の否定もできる、最強の答えである。しかし彼女は『え?別に誰にも聞いてないけど?』『………』この答えは正直いって全くの想定外だった。この人、誰にも聞いてないってなにーこの人、人の心が読めるのー?とか思っていると、『ね、ねぇ、改めて聞くけどさ、今度うちの妹とキャンプ行くんだけど一緒に行かない?い、いや嫌なら別に構わないんだけどさ!よかったらどうかなーって』と改めて聞いてきた、いや…だからね…それを何処で聞いた…ん?これ、俺が誘われてるの?何であいつがいつの間にか主催者になってるの?どんだけ自己中なの?それともこの企画をまるまる乗っ取るつもりなの?とか思ったがどうやら違うらしく、あっちもキャンプに行くらしい。それで俺が誘われたと言うわけだ。全くそう言ってもらわないと理解に苦しむよ…いや、まぁ普通、自分がキャンプの誘いを他人に話してるのに相手もキャンプに他人を誘っていたとは思わないでしょ?なんとも紛らわしい。
さて、誘われた以上、答えを出さなければならない。本当はこの見ず知らずの彼女と一緒にキャンプへは行きたくないのだが彼女は心配そうな顔で俺を見ているし女子からの誘いをキッパリと断れるほど俺は図太い性格をしていない。まぁキャンプ場で俺を嵌めるとも思えないが俺は重度な程凝り性なのだ。そこで俺は『まぁ予定が空いてたらね』と取り敢えず曖昧な答えを返し、駐輪場へと踵を返した。結局、俺は最後まで彼女の目を直接見ることは出来なかった。