DVD
それは、たった1枚のDVDから始まったとされる。
そのDVDがいつ、誰が、どうして作ったかはわからない。
ただ、それによって、どのような結果になったかだけは、はっきりとわかっている。
歴史家に曰く、たった一つの物体が歴史を変えたことなぞ、いくらでもある。問題は、それがどう変わったかである。
まさしくその通りで、このDVDの頒布が始まったのは、すでに失われているものの、数年前だと言われている。
DVDは、全世界で1万枚が製造され、1枚あたり数百円で売られていた。そこまでは分かっている。
その映像は、極めて攻撃性を誘うために、サブリミナルが組み込まれていた。
1万枚は、1万人がそれを見て、さらに彼らの家族が見た。
それから、破滅が始まった。
破局戦争と呼ばれたこの無秩序な暴動は、警察で抑えられる能力をはるかに超えた勢いで膨らんでいった。
DVD以外にも、どうやら動画投稿サイトにも投稿されていたようなのだが、それらはすべてサービスを中止している。
そもそも電気もちゃんと通らない状態で、インターネットなぞ出来るわけがない。
破局戦争によって引き起こされた暴動の数々は、互いの国境すら越えて広がっていった。
そして、国民に対して武器を行使し、他国の介入を招き、世界は加速度的に戦争へと進んでいった。
その結果、破局戦争は1年にもおよび、世界はほろんだ。
残された人類は、荒廃した世界の中で、寂しく、ゆっくりと死んでいくだけだ。
それがこのDVDの作者の意図なのか、それは分からない。