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M-087 襲撃者に合わせた武器作り


 フラウがナノマシンを使って核爆弾の制御装置を作っている。フロイは閉鎖区画の中に入って起爆用の炸薬を作っているようだ。化学合成により作るようだが炸薬は雷管を使わない限り爆発しないとフラウが言っていた。

 となると、雷管式の銃が出来そうだな。フラウ達の作業の邪魔にならないようにそっちも検討してみよう。


 焚火を作ってお茶は作るものの、食事を作ることはない。そして俺達には体温はない。

 そんな事からか、この跡地に訪れる獣は殆どいない。たまに、小さなウサギのような草食獣が姿を現すが、俺達を気にする事もなく近くまで来て草を食んでいる。

 

 俺は、跡地をパトロールしながら、焚火の傍で銃床を削っている。今度は長銃だからストックを作らねばならない。ちょっと面倒だが閑潰しには丁度いい。

 

 集落での戦いを振り返ると、彼等の課題も見えてくる。

 少なくとも2種類の敵に対して考える必要があるな。


 悪魔については余り集落に近付かない。ガデム達の使うマスケット銃の射程に近付かナイトいう事だろう。ライフルリングを持たない銃だから有効射程は100m位だ。そしてあまり命中率が良いとは言えない代物だ。

 更に50m以内に近付けば毒矢で対応する事も出来る。広場に毒矢を持った連中がいなかったところを見ると、砂ナマズを捕らえて毒を採取するのは危険な行為なんだろうな。

 となれば、100m付近で悪魔の額の角を正確に狙える銃が必要になるだろう。

 それはライフル銃ということになるな。

 

 ゴリラに対してはあの面を破壊してその下にある顔をつぶせばいい。それ以外だと、連中の体は剛毛に砂を塗り固めているからちょっとした装甲だ。マスケットではちょっと威力が足りないな。

 50m位の距離で厚さ10cm程の板を打ちぬけて、その裏にある顔を破壊できる程の銃が必要だ。弾丸を鉛から轍に変えて、火薬の量を2倍以上にすれば何とか成るかも知れないが、その銃の反動はすごいことになりそうだ。

 あらかじめ使う場所に杭を打って、その杭に銃を載せるか…、それとも、対戦車銃ラティのように銃の重量を重くして、ソリに載せるか…。

 門の上から爆弾を落としても効果がありそうだな。手榴弾は使えたから、同じような物を渡せば門を守る事は容易になるだろう。

 となれば俺がこれから作るのは、ライフル銃とラティそれに手榴弾だな。

 

 製作目標が出来たところでライフル銃から始める。

 マスケット銃のバレルにライフルリングを刻んで、弾丸をミニエーにすれば何とかなるだろう。

 ライフルリングはバレル加工時に工作機械にプログラムすればいいし、ミニエー弾は鉛の鋳型で幾らでも出来るな。

 マスケットに新たに設けるのは照準器位か。照星は固定で、照門を上下左右に動かせるようにして照準調整が出来るようにしておけば良いだろう。

 

 1週間程掛けて銃床を削り出して型を作った。後は、フロイに任せて仕上げて貰う。

 5kg程作ってもらった火薬を使って、試射を繰返して照準調整を行う。簡単なライフル銃だが結構狙いは正確のようだ。

 平衡して作ったライフルリングのないマスケット銃は100mだと結構外れるな。直径50cmの的に当たるのが半分位だぞ。

 

 次は大型の銃だが、上手い具合にユグドラシルのライブラリーにラティの画像があった。その画像を元にフロイが工作機械をプログラムしてくれたから結構簡単に出来てしまった。

 ひょっとして、マスケットの方も昔の画像を参考に作ってもらったほうが早かったかも知れないな。

 試射では15cm程の丸太を打ち抜いたから、十分だろう。

 

 手榴弾の方は少し問題だ。起爆機構自体は単純なのだが、彼等に理解出来るのかが分らない。

 それでも、核爆弾の起爆用炸薬の残りを使って、30個程作ってみた。

 安全ピンを抜いて、起爆用のシャフトを叩くと遅延火薬が発火する。爆発は5秒後だから、発火したら投げればいい。


 銃に使う黒色火薬を50kg作って、ラティ用の轍の弾丸は500個程作った。ライフル用の弾丸とマスケット用の弾丸は、焚火の傍でパイプを楽しみながらのんびりと俺が作り続ける。


 確か、鍬と鎌も欲しがってたな。

 これは鉄板をフロイに加工してもらって、各々50個を作る。

 ついでに、ナイフと槍の穂先も20個程作ってもらった。


 そんな感じで一月が過ぎる。

 フラウの方は核爆弾の起爆制御装置を組み立てている。完成はもう少し先になるらしい。そして、運搬装置の設計を平行して行っているようだ。

 その運搬手段は、反重力制御とイオンクラフトを組み合わせたものらしい。

 修理建屋においてあった多目的車両を改造して作ると言っていたが、どんなものが出来るか想像出来ないな。


 二月程過ぎたある日、何時ものように焚火で鉛を熔かして弾丸を作っていると、俺達の所に近付いて来る者達をヘッドディスプレイの警報が知らせてくれた。

 方向は南西方向、個体数は25だな。その内の1つが青く輝いているから、集落から来たガデム達だろう。

 ポットに水を継ぎ足してお茶を用意しておく。


 やがて、周囲を警戒しながら男達が現れた。俺のいる焚火の所へと歩いてくる。


 「しばらくだ。銃を取りに来たのだが…。」

 「出来てるぞ。だが、その人数で運べるかが問題だな。お茶が沸いている。適当に飲んで、待っていてくれ。今、用意してくる。」


 そう告げると修理建屋の中に入って、あらかじめ用意しておいた3種類の銃を一輪車に乗せて焚火の所まで運んできた。


 「3種類作ってみた。これがガデム達が使っている物と同じ銃だ。そしてこれがライフル銃、命中率がさっきの銃より格段に高い。専用の弾丸を使う事になるのだが、これがその弾丸だ。

 そして、このおおきな奴はゴリアテの仮面を打ちぬけるぞ。但し使う火薬は通常の2倍で弾丸は鉛ではなく鉄になる。」


 2丁ずつ運んできた銃をガデムが早速試射してみる。

 ライフル銃の命中率に驚いていたが、ラティを発射したときはその反動に顔を顰めていたぞ。


 「これは助かる。だが、この銃は重いな。」

 「重くないと、反動がもっときついぞ。その重さだから、先程の反動で済んでるんだ。」


 「確かに…。で、数は?」

 「通常の銃が20。ライフルが20。それに最後に撃ったラティが10だ。弾は各銃に50個用意した。専用の鋳型が2個に鉛の板は20kgある。そして火薬は50kgあるぞ。それと、これはおまけだ。門から投げれば爆発する。…このピンを抜いて、煙が出たことを確認して投げる…。」

 俺の投げた手榴弾は50m以上飛んで行った。そしてドォン!と炸裂する。


 「このピンを抜いて煙が出たら5つ数える時間が過ぎれば炸裂する。」

 

 そう言ってガデムに手榴弾を手渡した。


 「結構重いな。これをさっきあの距離まで投げたのか?」

 「まぁな。力はあるぞ。…だが、門の上の櫓からなら10mも投げれば十分だ。そして炸裂するから、それを見ようとはしないことだ。この周りは鉄板だ。千切れ飛んでくるぞ。」

 

 「投げた後は後ろに下がれば良いだろう。有難く使わせてもらうぞ。」

 「それ以外には鍬と鎌それにナイフと槍の穂先を用意した。結構な重さだがお前達で運べるか?」


 「一度に運べなければ、何度でもやって来る。とりあえず籠を背負ってきたが、運べるだけ入れてみよう。村に運び終えて直に戻ってくる。」


 俺が修理建屋から運んでくる銃を男達が次々に籠に入れて行く。それでも運べる量は用意した半分程だ。

 ガデム達はお茶を飲むと南西方向に帰って行った。30km程あるから、村に着くのは明後日だな。そして再び戻るとすれば、ここに来るのは4日後になるだろう。


 フロイに鉛を追加して貰う。元々が核の研究所だから遮蔽用の鉛ブロックが閉鎖区画には大量に置いてあるようだ。

 そして、俺は水汲みに出掛ける。フロイが見つけてきたステンレスの燃料容器も使って一度に50ℓ程を運んでくる。ついでに火打ち石を採取してきた。


 ガデムが再び現れたのは5日後だった。今度は30人程でやってきた。

 そして残りの銃と農具、それに鉛ブロックを運んでいった。


 ここまで協力してやれば良いだろう。集落の規模は500人程度。果たして今後どうなるかは誰にも分らない。

 人口を増やしてこの地に再び国家を作るのか…、それとも100年程度で消滅するのか。

 再びこの地を訪れる時があれば、その時尋ねてみるのもおもしろい。


 フラウの方は、核爆弾の方を一段落させて、目下多目的車両をフロイと共にバラしている。

 元に戻るのか不安に思える程徹底的に分解しているようだ。

 まぁ、地上を走る事はないんだが、乗るところがあるのかちょっと不安になってきた。ここにぶら下がって下さい。なんて言い出しそうだからな。


 分解された姿をみると、6輪の多目的車両はゴツイフレームで形作られていたようだ。そのフレームを利用して荷台をフロイが作り始めた。


 作業をフロイに任せてフラウと焚火を囲む。俺達には定期的な水分補給が必要だから、たまに

焚火を前にしてお茶を飲む。


 「動力が問題ですね。ここから目的地まで直線にして6,000km程。燃料電池を考えましたが出力が足りません。水素タービンエンジンで発電機を回して電力を作ります。補助に燃料電池を使えば制御は楽でしょう。」

 「どちらにしても水素が必要だな。確保の目処は?」


 「水を電気分解します。高圧水素をスポンジ状の触媒に吸収させて過熱により取出せば何とかなります。」

 「となると保管容器が沢山必要だな。小型の水素発生装置を作れば途中の水場でも燃料補給が出来ますよ。そして、最初に充填する容器は閉鎖区画にあったボンベを利用します。触媒も合成出来ると思います。」


 「反重力制御装置と推進装置の方は?」

 「メビウスコイルの製作に時間が掛かりますが不可能ではありません。装置を多重化すれば信頼性も向上します。イオンクラフトはイオン噴流の噴出孔を制御出来るようにします。それで速度、方向を制御します。これは最終戦争末期には実用化されつつあった技術ですからこの跡地に使える部品が揃っています。」


 時間は掛かるが大きな問題はないという事か…。

 まだしばらくこの地に滞在する事になりそうだな。


 フロイの部品探しに同行して閉鎖区画を家捜ししてみると、自動小銃を見つける事が出来た。銃弾も30発のカートリッジが10本以上ある。

口径はロシアで見つけた奴よりも小さいけど、何かの役に立つだろう。

 何と言っても、銃弾をばら撒けるのがいい。

 近くにあったコンテナに押し込んでフラウのところに戻る。外見的には使えそうだが、年数が経っているからな。銃弾にしても似たような物だしね。


 フロイの目的は部品探しではなく、何かの装置の組立てのようだ。

 細い配管が複雑に絡んでいるようにも見える装置だが、俺には目的も理解出来ないな。

 

 更に倉庫を探していると、戦闘服を見つけた。装備一式が揃っている。

 手に取って調べて見ると劣化している様子はない。

 俺達の革の上下はかなり痛んできたからこれはありがたい。

 フラウの分も合わせて2セットをバッグの魔法に袋に押し込んだ。

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