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M-015 レイデン村

 


 ヤケットさんに連れられてレイデン村に入る。

 俺達が入ったのは西の門だ。当然門番さんへの挨拶は忘れない。

 「今日は!」

 と槍を持つ門番さんに挨拶する。

 「おぅ!…元気が良いな。ヤケット、何処で拾ってきた嬢ちゃんだ?」

 「こう見えても、ハンターだ。カナトールから来たらしい。」


 カナトールという言葉を聞いて門番さんは驚いてる。 

 「確か、関所は閉鎖と聞いたぞ。」

 「川を渡って来ました。」 

 門番さんの呟きにそう応えると、もっと驚いてる。…あの川を渡ったのか…。何て言葉が聞えて来た。確かに流れは速いがそれ程驚く事なのだろうか?


 「行くぞ!」

 俺の肩をポンと叩いてヤケットさんが促がす。

 俺達は村の通りを真直ぐ東に歩いて行く。遠くに反対側の東の門が見える。前の村と一緒で丸太の柵が村を取り囲んでいるが、その大きさは前の村より少し大きい位の規模だ。西の門から東の門まで500mは無いだろう。

 しばらく歩いていくと大きな十字路があった。北と南にそれぞれ通りが延びて門が見えている。

 丁度、ここが村の中心になるようだ。


 「ここだ。ここがレイデンのギルドになる。」

 十字路を横切った角にある大きな石作りの2階建てをヤケットさんは指差すと、その扉を開けて俺達を連れて中に入った。

 1階の作りは木と石の違いはあるが配置に違いは無い。

 正面にカウンターその片側に依頼掲示板。そしてもう片方にはテーブルが並んでいる。


 「ほら、カウンターで到着報告をするんだ。」

 ヤケットさんに言われてカウンターのお姉さんの前に、ユングと2人で行く。

 「あら、始めてみる顔ね。…では、ギルドカードを出してくれない。」


 俺とユングは言われるままにカードをお姉さんに渡す。

 受取ったカードをしげしげと見ていたが、急に俺達の方に顔を向ける。

 「2つ、教えて頂戴。このカードを発行したのはカナトールのサレスト村だけど、現在国境の関所は封鎖されているわ。どうやって関所を越えたの?…それと、このカードは赤の5つに見えるけど、3つあるべき穴が省略されてるわ。この理由が聞きたいんだけど。」


 なるほど、不審者と言う訳だな。ここは正直に答えた方が良さそうだ。

 「最初の質問ですが川を越えてきました。越える方法は教えられません。次の質問ですが、俺達は幾ら獣を狩ってもレベルが上がりません。赤1つでイネガル、ガトル、リスティンを狩りました。村のギルド長の判断で暫定措置として赤5つにしてもらったんですが、あくまで暫定という事で、途中の穴が無いと言っていました。」


 「なるほどね。そんな人がたまにいるらしいわ。ここから1日歩けば王都に着くから暇な時に行って来ると良いわ。

 暫定5つは、例外措置だけど5個目の穴位置は間違いなくギルドによるものだから、この村でも有効です。

 あの川を渡る人がいるとは驚いたわ。あの川のナマズは人を襲うの。毒ヒゲを刺して動きが取れなくなったところで川に引き摺り込むと聞いてるわ。毎年何人かが死んでるのよ。良く無事に渡れたものだと感心するしかないわね。」


 「それじゃぁ、俺達がこの村で活動しても問題ない訳ですね?」

 「問題ないわ。イネガルが狩れるなら十分よ。…ところで、貴方達は魔道師なの?武器も持っていないようだけど?」

 

 「俺達は魔法が使えません。そしてイネガルはこれで叩き殺しました。」

 そう言って杖を持ち上げて、その場を立ち去りテーブルの席に着く。

 俺達がカウンターを離れると、直ぐにヤケットさんがカウンターに行って依頼の完了報告をしていた。


 さてどうしようかな。もう大分秋が深まって来た感じだ。薬草採取は終わりだろう。となれば狩が残っているが、どんな獲物がいるか少し楽しみだな。


 「待たせたな。」

 そう言ってヤケットさん達が俺達のテーブルにやって来た。

 早速テーブルに着くと少し遅れてノエルが人数分のお茶を持ってくる。


 「さっきのお返しだ。…ところで本当にイネガルを叩き殺したのか?」

 「頂きます。…この杖ではありませんが確かに撲殺しました。」

そう言って俺達はお茶を飲む。うん、良い味だ。


 「素早くて、力持ちか…。羨ましい体質だな。俺達は引き上げるが、何か分らないことはないか?」

 「出来たら宿と雑貨屋を教えてください。ブーツがボロボロなので…。」


 「宿はこのギルドの向かい側だ。1階が酒場だから少しうるさいがな。雑貨屋はこのギルドの隣になる。じゃぁな、頑張れよ。」

 「有難うございます。ではお元気で!」


 3人が去るのを見送ると、早速掲示板の依頼書を調べる。

 平地の森だから余り危険性のあるものはいないだろう。

 

 獣の名前から姿が想像出来ないので、フラウと一緒に図鑑を見ながら確認だ。

 村の西に広がる森は結構奥が深いらしい。色んな獣がいるのだが、大きさは小さいようだ。そして肉食獣はガトル位である。


 ん…。何でこれは1枚だけ残ってるんだ?

 依頼掲示板の中に中級レベルの依頼書がポツンと1枚張り出されている。周囲にも依頼書はあったと思うが、余程条件かもしくは報酬が悪かったんだろうな。

 どれどれ、と読んでみる。


 …クルキュル。1匹100L。羽根は雑貨屋で別途売却可能。狩りの期限は設けない…。


 クルキュルってカルキュルの大型だよな。それ程危険な奴には思えなかったが、誰も受けないというのも変な話だ。

 レベルは黒1つか。ちょっと交渉してみるか。

 

 フラウと共にカウンターに行くと、お姉さんに依頼書の話をしてみる。

 「掲示板にクルキュルの依頼書が残ってますが、もし誰もいないのなら俺達が依頼を受けても良いですか?」


 「う~ん。…確か貴方達のカードは暫定だったよね。実際のレベルではないことは確かなんだけど、ちょっと待ってね。」

 お姉さんは事務所に入っていった。何やら上司と相談してるみたいだな。

 しばらくして俺達の前にやってきた。


 「この依頼書の狩りを認めましょう。本来は黒3つ程度は欲しいのですが…。」

 「そんなに危険なんですか?これに良く似たカルキュルは一度に4匹を倒してますが?」

  

 黒3つと聞いて、その理由を知りたかった。

 「かなり凶暴です。そして、長剣でさえ羽根の弾力で弾きます。」

 

 聞くだけなら、カルキュルの強化版って感じだな。なら首を取れば良い筈だ。

 それでダメなら、ベレッタで狙撃すれば倒せるはず。


 「…鳥ですよね。内臓は捨てても良いですか?」

 「良いですよ。大型ですからなるべく軽くしたいでしょうし…。」


 ということで依頼書は必要無しという、ギルドとしては変わった措置で俺達はその依頼を請け負った。

 

 ギルドを出て隣の雑貨屋に入る。カウンターにいたのは中年のオジサンだった。

 「今日は。携帯食料に銅製品が欲しいんですが…。」

 「携帯食料は1食3Lだ。銅製品と言うとこんなのはどうだ?」

 

 オジサンが取り出したのは、青銅製の鏡だった。フラウが受取ると重さを確認しているようだ。そして俺を見て頷いた。使えるって事だな。


 「食料は6食分下さい。タバコの小袋も1つ。それにこの鏡はお幾らですか?」

 「それは、100Lになる。買うんだな?」

 一方的に決められたが、気にせずに支払いを済ませる。123Lはちょっと痛いが、銅を集めておかないと弾丸が作れない。


 「ところで、ブーツを売っている所を教えて貰えませんか?」

 「それなら、俺んとこの隣だ。…じゃぁな。頑張れよ。」


 雑貨屋を出て次の店に入る。

 カウンターにいたのは若い女性だ。

 「今日は!」と俺達が挨拶するより先に挨拶されたが、俺達も「今日は。」と返した。

 「実は、ブーツがボロボロで…。」

 と言いながら俺達のブーツを指差す。

 「あらら…。大分痛んでますね。でも、革はそれ程傷んでいませんね。下取りも出来ますよ。」

 そう言って新しいブーツを棚から出してきた。

 「ところでブーツの値段はお幾らですか?」

 「2人ですから、140Lになります。でも、今履いているブーツを2人分で30Lで引き取りますから、110Lになりますね。」

 

 ちょっと嬉しい下取りだな。早速購入する事にした。

 「踵と鋲はどうしますか?」

 「う~ん、銅貨5枚分高くしてくれないかな。鋲はこんな感じで…。」

 鋲を爪先と踵にそれぞれ3個追加する。


 新しいブーツを奥に持っていくとトントンと鋲を打つ音がする。

 「はい。出来ましたよ。」

 そう言って俺達の前に新しいブーツが出された。早速履き換えると、今までのブーツをカウンターの下に置いておく。

 「冬用のブーツも来月には入りますからね。」

 俺達が帰ろうとする時にお姉さんが教えてくれた。

 ブーツって4季に対応してるんじゃないんだ。そう知ったのはこの時だ。


 次に向ったのが宿になる。確か1階は酒場って言ってたな。

 まだ、夕暮れには間がある。

 そんな時間に2人で宿に入ると、カウンターにはお爺さんが1人で座っていた。

 

 「2人頼む。夕飯と明日の弁当を2つ。朝食はいらない。」

 「1人30Lそれに食事代が弁当込みで8Lじゃな。」

 

 フラウが76Lを支払い、俺達は鍵を受取った。お爺さんが奥の階段を指差す。どうやら階段の上が部屋のようだ。

 

 鍵の番号と同じ番号の書かれた部屋の扉を開けると中に入った。

 部屋は8畳位だな。ベッドが2つと奥のカーテンで仕切られた所には木の桶がある。風呂なんだろうが、どこにも蛇口が無いんだよな。前の宿もそうだったけど、謎は深まるばかりだ。

 しばらくすると、トントンと扉を叩く音がする。

 「何でしょう?」と聞くと、「食事です。」と声が返ってきた。

 

 まだ、夕方には早いような気がするが、食事と言うからにはここではそんなものなんだろう。

 階段を下りると、数人がテーブルに着いている。俺達もそんなテーブルの1つに着くと、小さな女の子が食事を運んできた。

 野菜スープかと思いきや大きな肉団子が沈んでいた。大きな丸いパンは柔らかいけど、小麦だけじゃなくて雑穀が混じっている。

 それでも味付けは良い方だと思う。俺達には必要ない食べ物でも、味と舌触りそれに歯応えは楽しめる。


 部屋に戻ると鍵を掛ける。

 フラウがつかつかと奥のカーテンを開けるとそこにはお湯の入った湯船があった。

 何とも不思議な気分で風呂に入って、その後はベッドで横になる。


 相変わらずのRPGは中盤を迎えたのだが、生憎と魔法の特性が良くない。別な魔法使いをトレードしようかなって思いながら朝を迎えてしまった。


 ギョエーって例の鳥も鳴いている。そろそろ起きて行動を開始するか。

 ベッドに腰を掛けて素早く装備を整える。

 今日は狩りだから長剣を袋から取り出して背中に背負った。レッグホルスターの調整をして、腰のナイフの具合も確認した。

 「マスター。準備完了です。」

 俺の前に完全装備のフラウが立つ。

 「行くぞ!」

 俺が立ち上がりながら言うとフラウが頷く。


 階段を下りていくと、「ほらよ!」っと2個の弁当をお爺さんが差し出したのを受取ると、颯爽と宿を出る。

 真直ぐに西の門を目指すと、門番さんに軽く挨拶をして西に広がる森林地帯に俺達は向かった。

 

 

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