闇の中より2
再び、深い闇の中。
無数に蠢く光は、以前より少し増えている。
重苦しい音が響く。
『――襲撃者…“我が君”らしき者の居場所は分かったのか?』
『…申し訳ありません。いまだ、確認できず』
『ほう』
僅かな沈黙ののち、嘲るような音が鳴る。
『無能だね』
『まだ見つからないなんて、おかしくないですか?』
『そうだね。使いが消滅した場所は分かっているのでしょ?そこから追跡することは簡単じゃないのかね』
周囲の雑談を機にすることもなく、二つの音は鳴り響く。
『途中までの足取りは分かっています。しかし…』
『…ふむ。確か、社のすぐ側には“緑新”の縄張りがあっただろう。アレが襲撃者を匿っているかもしれん』
周囲に音が連鎖する。
『緑新…?』
『誰です?』
『人に感化されて、我らの本質を見失った哀れな奴だ』
『どうせ脆弱な奴なんだろう?そういう奴らはこぞって人の考えに同調して、我らの本質を否定する』
『その通り』
『哀れな奴らだよね』
『自らを人と思いこむことで、助かろうとしている。その行いが最も恥ずべき行為だと何故分からないのか、理解に苦しむ』
『でも、緑新は“転変”できるだけの力は持っているよ』
『へぇ?そりゃおもしろい。じゃあ、上月を殺したのはそいつかい?』
『緑新が?』
『殺したのは“我が君”では…?』
『まだ決まったわけじゃないだろう。軽率な考えはよせ』
『そうだ』
『雨月は、金色の眼を見たと言っていたぞ』
『しょせん仮初の命を与えられた形代の言うことだ、見間違いということもあり得る』
『見間違い…そんなことがあるだろうか』
『我が君”以外に金の眼を持つ同胞がいるとは思えない』
『絶対にいないとは言い切れんぞ』
『緑新の眼は金色なのですか?』
『いや、確か緑だったはずだ』
『ではやはり“我が君”が』
『だから軽率だと言っている』
『――まどろっこしいな。俺が緑新を叩き伏せてくる』
『何だと?』
『それが一番早くて確かな解決方法だと思うのだが?どう思いますか、リオ様』
『……』
リオと呼ばれた音は答えない。
他の音も、いっこうに響こうとはしなかった。
静寂にじれたのか、再びリオに進言した音が鳴る。
『仮に何の関係がなくとも、人間に与する奴らは我らの同胞とは言えません。あとあと何をしでかすかもわかりませんし、今のうちに排除しておいてもいいのでは?』
『…では、ディフロス。お前が行って確かめてこい。緑新のことも、“我が君”のことも』
『ありがとうございます』
不気味な赤い光がひときわ輝いて見えた。
次回はディーさんが大活躍するかもしれない。