LOG.11 |生きる| JUST LIVING
俺は、
地元にも帰る気は無かったので、
いや…正確には、
"まだ帰れない" ので…
地元とは
反対方向の街へ一時的に避難した。
俺の片足は、
神経がやられたらしく、
これからはずっと引きずるらしい。
だから……
体を使う仕事は出来なくなっていた。
ーーー
知らない街で生きるのは得意だ。
でも今回は別。
足も動かないし、
新しい仕事は手取り15万もいかない。
正直、
俺には初めて経験だった。
なんだかんだ、
職人は給料が良いからだ。
アパートも狭く、
何を生きがいにしていいか
全然分からなかった。
仕事は単調作業。
レールにダンボールが流れてくる、
それを真っ直ぐに直す。
…以上だ。
今の俺には
それでも精一杯だった。
次第に
心は削られていった。
社員
「あー…シンさん。」
新卒の若い社員が
ダルそうに近寄ってくる。
シン
「はい」
社員
「もっと綺麗にやって欲しいです」
「少し曲がってます」
「…これ何回目ですか?」
シン
「すみません」
年下の社員にも
偉そうに怒られる始末。
社員
「頼んますよ、ホント」
派遣
「またアイツすか?」
社員
「うん、いつものことだ」
「マジ あんな大人になりたくねー」
全部聞こえてる……
でも、
もう…頭にもこない。
イラつく、
負けたくねぇ、
俺が1番だ、
アイツを口説きてぇ、
全部、思わなくなった。
俺は、もう何も望まない。
でも、それは別に悪いことじゃない。
だって、誰も傷つけてないし。
ーーー
ダンボールを
真っ直ぐに直すだけなのに
俺は毎日ヘトヘトで帰宅していた。
雑に塗られて、
ダレたペンキのドアを開ける。
ギィとドアが鳴く。
これが、今の俺の家。
団地なのか、
アパートなのか、
施設なのか、
全然見分けがつかない…。
ただの、
"寝るだけの空間"
荷物を置き、
片足を引きずりながら
弁当箱をシンクにぶち込む。
ため息、ひとつ。
次は風呂を洗う。
しかし、うまくいかず転倒。
シン
「クソが……。」
もどかしい。
なんで俺ばっかり、
こんな目に……。
本気で、そう、思った。
ーーー
そんな、
"生きるだけの生活"。
アキレス腱に
全く力が入らないだけで
人間、こんなにも弱体化するとは。
ただ…一つだけ、
どんな思いをしても、
これだけは。と、
心に誓っていることがある。
"あん時は良かった"
それだけは、考えないこと。
思ったら、そん時は
俺の、終わりだ。
そう、毎日、言い聞かせていた。




