02 召喚された 2
王子はわたしのもとへ毎晩やって来た。それでいい。子供を生めばそれでいいのだ。
ある日呼び鈴を鳴らすのが面倒になったわたしは、こっそり手に入れていたメイド服を着て部屋から出た。
誰かがお茶の準備室で話していた。こういう時は噂話だ。わたしは好奇心で耳を澄ました。
「お茶にこれを混ぜているな」
「もちろんです。ずっと飲ませてます」
「ならいい。王子は?」
「はい、熱心に・・・その明け方まで」
この声はわたしの侍女のハンナだ。
「そうか」
「まぁこれを飲ませていれば懐妊はないから、安心だ」
「追加を渡しておくから」
「はい・・・あの懐妊出来ない体になるのでは?」
「そういうこともあるらしいね」
「聖女様ですのに」
「今はただの小娘だ」
「・・・」
「間違っても自室に保管しないように」
「もちろんです」
血の気が引くって本当だ。目のまえが白くなったが、ここで倒れてはまずい。わたしはなんとか庭に出た。
そうか、もう帰れないのか・・・
植え込みの影で呼吸を整えていると、ハンナが噴水のそばに行くのが見えた。
噴水のレンガが緩んでいて、それを持ち上げると小さなガラス瓶があった。
わたしに飲ませているのがこれか・・・
部屋に戻るとわたしは考えた。
いくら聖女と言っても異国の何の後ろ盾のない小娘。へたに子孫を残されても困るだろう。
浄化が済んでいるし、もう聖女に気を使うことはない。彼ら……わが夫も含めて貴族はそう考えたのだろう。理解できる。
しばらくすると第二妃を迎える話が出た。
わたしはそれをベッドで聞かされた。
「たしかに世継ぎが必要ですね。養子ではだめなんですか?親戚にたくさんいたようですが……世継ぎは男子限定ですか?」
「あぁ世継ぎはどちらでも良い。だが、貴族のうるさいのを黙らせるには後ろ盾も必要だ。聖女のユラリを守るにも力がいる。だから認めて欲しい。愛しているのはユラリだけだ」
「迎えるのはどんな方ですか?」
「公爵家のものだ。子供の頃からの付き合いだ」
「なるほど」『第二妃を迎える六点』
「わかってくれる?」
「もちろんです」
すぐに公爵令嬢のバーバラを第二妃に迎えることが発表された。
もともと幼馴染で何事もなければ彼女が結婚相手になるだろうと国民も思っていた令嬢だ。
上から下まで二人を祝った。
わたしの努力は、何だったのだろう。
七本の聖樹を浄化した苦しみも、命を削った祈りも、すべては彼らにとって当たり前の奉仕でしかなかったのだ。
だが、わたしも二人を祝福した。この祝福から復讐が始まるのだ。
わたしは神殿に行って女神に会った。
女神は渋ったし、嘆いたが、わたしの願いを聞いた。
その瞬間、目には見えぬ鎖が絡みつき、未来が閉ざされた。
わたしは王子の胸で泣いて頼んだ。
「早く世継ぎを作って早く戻って来て」
王子は嬉々として第二妃のもとへ熱心に通った。
彼女はすぐに懐妊したが、子は生まれなかった。
彼女が必死に薬草を飲み、祈りを捧げても、何も変わらない。
わたしはもう帰れない。
彼らはわたしの家族を奪った。だからわたしも奪った。
弟の笑い声を思い出すたび、胸が裂けそうになる。
庭の噴水に手を漬けると、水は冷たかった。
故郷の川も、こんなふうに澄んでいただろうか。
その記憶を胸の奥に沈め、わたしは歩き出した。
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