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裁判

作者: 神田 遊

•シダ:黄色いレインコートを着た16歳の少年。教会でメイドをしていた。リリアを崇拝しながらも、近くて遠い存在に胸を濁らせる。

•リリア:教会の教祖。優しく包むようでありながら、教祖裁判によってシダを魔法使いに仕立て上げる。

•執事A/B/C:協会に仕える者たち。噂や恐れを広め、裁判を盛り上げる。

•男:街を警護する者。シダに銀貨を渡し、リリアの裁判の火種となる。



教会で仕える少年シダは、教祖リリアを慕いながらも「近いはずなのに遠い」彼女に胸を濁らせていた。

しかしある日、リリアはシダを魔法使いとして告発し、教会から追放する。

絶望と裏切りに満ちたシダは、愛を憎しみに変え、「教祖裁判」を扇動。

やがて処刑台に立たされたのは、かつて愛したリリアだった。

雨と炎と踊りの中、二人の愛は「憎しみ」と呼ばれるものへと姿を変えていく――。


シダ「さようなら」


N 黄色いレインコートをきた私は処刑台にいる彼を見つめて呟いた。


N ある協会でメイドをやっている16歳の少年が居た。

シダ「今日もつまらない。ずっと言えないまま過ごすのかな」

N ため息をついて掃除をしていた。

リリア「いつもあなたはつまらないと思いながら、過ごしているわ、シダ」

N ひょっこり後ろから、現れた教祖リリアに

シダ「り、リリア様…申し訳ございません…」

シダ(ドキッとした……私が言ったことが聞こえてないといいけど……でもなんでここに……)



N 女性と踊っているリリア様。

それを見て違うと感じる私。

(あの場所にいるのは私ではない?)

どうした?何が違うのだろう?

と疑問に抱き、落ち込んでしまった。



リリア「なぜ、シダはつまらないと思うの?」

シダ「なぜと言われると、なんと言えば良いか…大変難しい事なのですが…」

リリア「言葉にできる範囲で結構。」

シダ「その、胸が…胸の中が澱のように濁るような気分になるのです…」

リリア「それはどういう時にその気分になるの?」

シダ「リリア様が…近いはずなのに遠く感じるのです…」

シダ(教会で慕われているリリア様が何故か疎ましく感じてしまう。)

リリア「シダ…私が遠く感じることが酷く悲しく思うのね」

シダ「分かっているのです。リリア様はこの協会を支えている教祖様だと」

シダ「でも…この言葉にできない気持ちが苦しいのです。」

リリア「それはあなたが人一倍私を大事にしている証拠よ。」

シダ「大事にしている…」

シダ(なんだろう……リリア様が理解できるようでできない)


シダ「でもリリア様がそう言われるのであればそうなのだろう。」

N 何時まで、何処までリリア様の元にいられるか分からないのだ。

N言われたことが私が思っていた事だ。そう思うしかない……

シダ「でも分からない…」

下を向いて泣きそうな私をみたリリア様は

リリア「私たちが離れるなら私たちが迷うなら」

リリア「何度も繋がれるように、はいればいいの。」

私に言ったのだ。

Nリリア様の体温に抱きしめられながら、いえなかった気持ちが涙となって溢れていた。



N どうしようもない濁り。仮称【気持ち】

この気持ちとやらを証明してみた。

私はリリア様を人一倍大事にしており、近いのに遠くに感じることがある。

(抱きしめられた時に溢れた涙は……)

リリア様の体温を感じた時、私の体温が温かくなる。

メイドたちとも確かめてみたが、リリア様の温かさとは段違いだった。

この温かい気持ち、これが俗に言う【愛】と呼ぶらしい。

愛というものは全く分からないが、ふわふわした気持ちになる。

(この気持ちを大事にするんだ……)

私は抱いた気持ちを忘れずに過ごすんだとこの時は思っていた。



リリア「でも長くは続かないようね……」

リリア様が遠くを見ながら呟いた。

N 私にはグリモワールを撫でることしか出来なかった

N 始まった教祖裁判はところ構わず、男を捕まえては、裁判を起こし。

N 協会の中でも教祖裁判の話で盛り上がり始めた。

執事A「この協会にもいるんじゃない?」

執事B「縁起でもないこと言うんじゃないよ!まぁあの子を見ていればわかるか……」



N 平穏とは、

シダ「望んだは実際誰かによる命や心を消耗した。」

リリア「変わったように見せて、実際は変わっていなかったのよ」

N 享楽とは、

シダ「偽りだということに。」

N 夢の中で

リリア「綻ぶ前にここを出ていこうか」と

都合のいい願いを何度も願う……

N 表面だけ綺麗に見えている世界で

いつまでもどこまでも繋がっていられる世界で

シダ「私はそれでいいのか?」

N 心がすり減りながら周りが傘をさしている中、感じてしまった。

執事A「土砂降りだ」

執事B「急いで帰りましょう」

執事C「雨なんて嫌だ!」

N 教会のメイドや執事たちがそう呟きながら掛けて行く。

シダ「本当にこれでいいの…?」

N 雨に打れた私は声に出した

リリア「シダ?」

シダ「リリア様…また胸が濁った気持ちになるのです。」

リリア「あの時と同じ気持ちになるの?」

シダ「はい、近くて遠いです。」

リリア「気持ちとやらが関係しているの?」

シダ「愛が……愛が濁ってしまいます」

リリア「そう…ならわたしもシダと一緒に雨にうたれるわ」

シダ「リリア様…」

N さしていた傘を閉じて一緒に雨に濡れるリリア様が居た。

N しばらく雨に打たれた私達はすっかり元気になっていた。

シダ「さあ、手を繋いで帰りましょう!」

さっき思っていた、願いが叶ったように濁りが少しずつ消えていくように思った。


N 濡れたまま教会に着いた頃には、宴が始まっていた。

リリア「シダ……私と踊ってくれませんか?」

手を差し伸べたリリア様、その温かさに触れた私は

シダ「ええ、喜んで」

にこやかに周りの目もくれず

リリア「そう魔法使いとして追放するまでは…」

N この一言は私には届いていなかった、そう。

N もう私にはリリア様の言葉は私の全てなのだ

シダ「リリア様以外何もいらない!」

シダ(少しずつ溜まっていった、濁りも

この気持ちは全てあなたを愛する感情だ!)

リリア様と踊り明かしたのだ。



リリア「この教会に魔法使いが居ます。シダ、貴方です。」

シダ「な、なぜ…リリア様…、そう仰るのですか…?」

リリア「グリモワールの研究をしているでしょう?」

シダ「書物として読んでいるだけで、実際に使えるのでは無いのです…私は魔法使いではありません…!」

リリア「皆、見ていなさい。あの本が赤く燃えるよ。」

シダ「そ、そんなことは…!」

N その瞬間、いつもリリア様をそばに感じられるように持ち歩いていたグリモワールが赤く燃え出した。

シダ「な、なんで…も、燃えるの…?」

執事A「燃えだした!魔法使いだ!」

執事B「魔法使いだ!」

シダ「ち、違う…!違うの…!」

シダ「リリア様、違うのです。なぜそのようなことが言えるのです」

N 燃えだした事実を受け入れなかった

リリア「なんで燃えた?それはね、貴方が魔法使いだからよ」

リリア「やっと追い出せたわ!やったのよ!」

シダ(なんで……そう突き放すの?……違うと言って!お願い!)

N 私は教会から逃げ出した。


N 森の中を必死で走った

シダ(なんで…!なんでこうなるの…!)

N いつもリリア様、あなたと

泣いて、笑って、怒って、歌って、踊って、話していたかっただけなのに。

なんでそれが許されないの。

なんでどうして…



N

仮称【気持ち】とは、

澱のように沈んだ気持ちも、ふわふわと温かくなる物だ。この気持ちを持つ私は、リリアを愛すべきだ!

温かい気持ちが次第に、足元の血とおなじ体温に変わっていった。



N

許さない…。ずっと貴方といるのは私だ。

これがまさに愛なのだ。

それを妨げようとするものは例えリリア様でも許さない。

ユダとして



N 街を警護している男に話しかけた。

シダ「あの教会に本物の魔法使いが存在します。」

男「それは本物か?」

シダ「はい、私は彼を中を知るため様々なことを聞きました。誠でございます。」

男「信じ難いのだが」

シダ「あの教会で実際に本を燃やしたのは教祖でございます。」

シダ「私を魔法使いに仕立て上げ、追放したのでございます。」

男「ほう…確かでは無いが情報として受け取る」

目の前に銀貨30枚を入れた袋を渡してきた。

シダ「ありがとうございます。」

シダ「魔法使いがいかに悪であるか、裁判をし裁いて欲しいのです。」

男「確かに魔法使いは裁かれるべきだな」

と男は呟いた。


シダ「そこのお方?教祖裁判の情報はいりませんか?」

こうして売り続けたことにより今か今かとその時は近づいた。

シダ「あぁ、やっとあなたは私によって裁かれるのだ。愛おしい、リリア」

N 黄色いレインコートをきて処刑台を眺めた。

十字架に括り付けられ、


N【教祖】リリアは

業火に包まれた。


N 民衆の暴言にふれもせずただ手を前に出して彼は呟いた。

リリア「シダ…最後まで見ているかな」

Nなんと哀れだろう。最後の最後まで私のことを騙し続けたリリアが言う。

N その言葉を聞いてフードを脱いで

私は教会で踊った踊りを始めた。

シダ「♪~」

N 裁判中に踊り出した。

何か言っているが私には届かない。

踊り終えるまで足を停めずにいた。

シダ「この誰も知りえなかった感覚を、

教えてくれてありがとう。」

シダ(この憎しみが愛なのね。)

N【教祖】リリア。

私にこの気持ちを

この感覚を…生きている全てを

正しくしている。

リリア「憎しみを愛と思うあなたに」

リリア「さようなら」


(炎がリリアを包む。群衆の叫び声。鐘の音。)


シダ「……リリア。」

(静かに踊りを終える。涙は出ない。)

シダ「私を突き放したのも、抱きしめてくれたのも、全部……あなた。」

(フードを深く被り直し、群衆に背を向ける。)

シダ「この感覚を愛と呼ぶのなら――」

(雨が再び降り出す。)

シダ「……私の愛は、永遠にあなたと共に燃えている。」


N 黄色いレインコートは血と雨に濡れ、街の闇へ消えていった。


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