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第7話

 一人は必死になって魔力を込めて結界を保っている冒険者。


 その左右にはその手に武器を構えて油断無く前を見据える冒険者二名。


 計三名が壁際にて絶体絶命の状況に居た。


 その周囲を隙間無く埋めて包囲をしているのは通称「ゴブリン」と呼ばれるモンスター。


 その顔は目の前の獲物を笑う表情だ。それは醜く歪んで邪悪さを隠そうともしていない。


「魔力、後どれ位、持ちそうだ?」

「分からん。精々が30分くらいじゃ無いか?」

「応援が来てくれりゃ助かる。そうじゃ無けりゃ、ゴブリンに弄り殺される未来だ。」


 彼らは今の危機的状況を一周回って二周目に突入しようとした所で冷静さを取り戻していた。


 足の速い仲間を一人ここから脱出させてから籠城する事を選んだのだ。


「なあ?ゴブリンの巣だったとは言えだ。こいつ等、罠を張っていたよな?」

「そうだな。俺たちがここに入り込むのを何処かしらで観察していて、いざ罠に掛かったら四方八方からワラワラと集まり出しやがったからな。」

「だとすればだぞ?そんな知恵を持つゴブリンが発生してるって事だろ?俺たちが解決できる問題を超えてるな。」


 諦めの含まれた会話、もう彼らには長い時間は残されていなかった。


 一人は盾持ち、一人は弓と短剣で、一人は杖持ち。逃がした者はオーソドックスな剣と。


 戦力バランスとしてはそこそこな、元はと言えば四人組のパーティだった。


 しかし駆け出しであり、この様な事態に対応できる程の実力を持っていなかったのが運の尽きだった。


 これがもし長年実力を積み重ねて来たベテランだったのならば、この様な事も軽く乗り越える事が出来たに違いない。


「どうする?五十以上だぞ数は。結界解除したら正面突破してみるか?」

「馬鹿を言うなよ。俺の足が一番遅いんだから、俺が殿やれって?冗談は止せよ。結界を張って、こうしてお前らを守ってるってのに、最後も俺に死ねって?」

「いや、このまま結界を張り続けていてもジリ貧だ。コレが無くなりゃ魔力スッカラカンだろ?そうなったら全員死ぬのが目に見えてる。なら、コッチのタイミングで結界を解除してお前の魔法で奇襲を掛けて一気に駆け抜けた方が生存率は高い。決めるべきだな、ここで。」


 時間経過に因って助けが来る事に賭けるか、自らで動いて流れを作り道を作り出すか。


 どちらにも相応の「死」と言う最悪が付き纏う。


 そんな決断を迫られて結界を張っている冒険者は「そんなの俺が決めて良いのかよ?」とぼやく。


 だがここで今更に幸運は彼らに味方した。


 しかしその味方と言うのは、その姿が漆黒、まるで死神とも言うべき者であったが。


 ===  ===  ===


(やはりか。コレは巣だな。しかも要救助者確認。勘は当たったな)


 私は無言で踏み込んで剣を振るい続ける。


 どうにもゴブリンはこちらを見ずに壁際に追い込まれて結界を張っている者たちに視線が釘付けだったからだ。


 そんな状態でコチラの存在をゴブリン共に一々知らせる理由は無い。


 一匹、また一匹と私はゴブリン共の首を刎ねて行く。こちらの事など気づかない愚か者共の首を。


(下劣な存在だな本当にこいつらは。そんなに絶望を眺めるのが楽しいか?なら、お前らにはその絶望を与えてやる。見ているだけでなく参加した方が余程に身近に絶望を体感できて、より楽しめる事だろうよ)


 単純な作業を一つ一つ繰り返して行く。遠慮も慈悲もそこには無い。


(今助けてやるぞ少年どもよ。今暫し待って居ると良い。直ぐに終わる)


 私は無言で剣を振る。この程度の事に力など必要は無い。


 音もさせずにゴブリン共の首を断つ事など造作も無い事だからだ。


 ぎゃあぎゃあと喚くゴブリン共の声がうるさいので、床に落ちる「ゴトリ」と言う頭部の音などこいつらには聞こえてはいない。


 時折に「どさり」と言った胴体が倒れる音もするが、それすらもゴブリン共の耳には入っちゃいないのだ。


 壁際に追い込んだ得物をこの後に甚振り、弄り殺す事に意識を向けている馬鹿共だ。


 そこに知恵も周囲への警戒も、へったくれも無い。


(死体が黒い霧と消えた後には、どうやら青い小石が残る様だな。コレは楽で良い)


 足場の邪魔となる物体が自然と消えてくれるのは正直に言って有難い事だ。


 私の知るダンジョンの理と違うが、まあ、そこはどうでも良かった。


 その後に残る青い輝きを放つ小石が不思議だが、それは後回しだ。


 そうして三分の一と言った数が減った時にやっと愚か者どもの一匹が私の存在に気付いた。


(まあ気付いた所で何も変わらんがな。寧ろ反応が遅過ぎて寧ろ逆に呆れる)


 気付かれたとしても私のやる事に変わりはないし、そこで一旦止まると言った事も無い。


 全てのゴブリンがこちらに気付くまでの時間差で、その間にも私は次々に奴等の首を刎ね続けるのだ。


 数はその時点で半数を下回り掛けている。


 コチラに気付いて動き出し始めたとして、しかしその動作は私にとっては制止しているに等しい。ゴブリン共は鈍間だ。


(少々速度を上げるか。彼らの結界が後どれ位で解除されてしまうか分からん。そうなれば彼らを危険に晒す事になる。ソレは避けたい)


 壁際の彼らもここまで来たのだから多少の戦力にはなるかもしれない。


 しかし私にソレは必要無い。寧ろ結界から彼らが出て来てしまうと余計に気を回さねばならない項目が増える。彼らを守ると言った事だ。


 自力で結界を張って身の安全を確保していてくれている方がこちらは寧ろ動き易い。


(遠慮無く暴れられると言うモノだ。さて、残りは二十と少しか?なら、やるか)


 肩慣らしは済んだ。私は剣に魔力を通して行く。残りを一息で処分する為に。


(硬い相手には密度を高めるが、ゴブリン程度ならソレは無駄だからな。伸ばすだけで良い)


 漆黒の刀身から魔力が迸り、放出される。


 ソレを私は水平に振り抜いた。

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