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第4話

 ソレはダンスを踊るが如く。私は全ての攻撃を捌き切る。


(集団練度はそこそこ、連携も、まあ最低限か。そこに良い武具は装備している様だが、その質に対して一人一人の個人的な強さが不十分。何ともちぐはぐだな)


 まるで素人がごっこ遊びをしている様な感覚を私は憶える。


(剣の刃が振りに対して少々斜めだぞ?それでは一番効果的なダメージにはならん。惜しいな。それに魔法を放つタイミングも遅い。と言うか、初歩の魔法しか使ってこないのか?聖なる属性の攻撃魔法なら建物内を破壊する心配も無いだろうに。他の者たち周囲への被害も気にせずに済むのだから、もっと大規模範囲に効果の出るモノを使えば良いだろうに。何故ソレをしない?)


 聖属性の魔法なら、アンデッドの私にしか効果が出ないはずだ。


 他の者たちを巻き込む心配は無いハズ。


 だからこそ、私へと回避不能な範囲で効果の出る魔法を駆使すれば事は簡単に片付く。


 と思ったのだが。


(まあその様な魔法を放たれてもその範囲外にすぐさま逃げさせて貰うが。どうやら死んだこの身となっても意地汚く存在し続ける意思が私の中に残っている様なのでな。観念したい所だが、どうやら無理な様だ)


 向かって来る魔法は「ボール」系統しかなかった。それは一定速度で人の頭部程の大きさの各種の属性球が飛ぶ仕様だ。


 それを私が躱しても外れたその「ボール」系の魔法は建物内を傷つけ無い様にする為に張られた魔力障壁に当たって霧散している。


(しかしまあ、修練が足りておらんな。込められた魔力の量も質も最低限?コレなら軽く腕を振り抜くだけで弾き飛ばせてしまうでは無いか)


 私は先程から飛んで来ていた魔法を避け続けていたのだが。


 ここに来て私は腕に軽く魔力を込め、籠手にもソレを流し込んで無造作に腕を振るった。


 もちろんソレは飛来する魔法を弾くため。それとついでに脅威の検証もするつもりで。


「何だとぉ!?俺の魔法を!?」


「嘘でしょぉ!?私の魔法を防いで来たんですけど!?有り得ない!」


「いやコレ!?搔き消されて消滅してるって!こいつどんだけなんだよ!?」


(何か騒いでいる様だが、この程度で驚愕されてもなぁ?こんな真似、鍛えていれば児戯にも等しいだろうに)


 私は未だに剣など抜いていない。武器が無くても充分以上に彼らをあしらえるから。


 どうにも五十人以上はここに集まって私を囲ってこちらへと攻撃を仕掛けて来ているが。


(突出した実力者・・・は、居ないな。居たとしても、ソレを私相手に誤魔化せる程に強者で器用であれば仕方が無いな。その時は私の目が節穴だっただけ)


 油断はしないが、気は抜く。緊張は解くが、警戒は止めない。


 こうしてこの建物内にて私は「冒険者」らしき者たちとこの後もずっとダンスを踊り続け。


(好い加減にここが何処なのか外に出てみなければ見当も付かない。何か一つでもピンと来るものが有れば推測も予想もし易くなるが)


 このままでは埒が明かないと思って私はこの建物から出て行く気になった。


 外の風景を見て少しでも分かる事が無いかを探る心算で。


 見えたその景色の特徴でこの地が大体どの辺りの国なのかが分かるかもしれない。


(あ、私はアンデッドなのだから、町へと繰り出してしまえば混乱させてしまうのは必須ではないか?騎士としてソレはどうなんだ?)


 忘れていたが今、周囲は明るい。天井に光を出す魔道具が埋設させれているらしく視界が非常に良好なのだ。


 この様な建物は自分の経験の中にも記憶の中にも一切無い。


(これ程に高度な文明国?有り得んな。いや、私が知らないだけか。世界はそもそもに広いのだ。知らぬ事の方が多いのが当たり前だな。ソレはいつも忘れてはならなかった)


 柔軟な思考を持たねば四六時中変化し続ける戦場にて生き続ける事は難しい。


 戦争は二度程経験して来た。ソレも大規模な隣国とのモノだ。


 それ以外では野盗に強盗、盗賊団などなど。そう言った討伐任務やら害獣駆除など数えきれ無い程に熟して来た。


 鍛錬だって怠った事など一日も無い。この場で私が負ける道理が何処にも見当たらない。


(とは言え、別問題だ。そもそもに光の魔道具に照らされているのに、アンデッドの私の動きは一切鈍っていないのだが?なんだ?この違和感は?)


 私の浅い知識の中にアンデッドと言うモノは光に弱いと言う性質がある。


 太陽の光にでも真昼間に照らされればどんなアンデッドであってもその動きは大幅に制限されるのだ。


 でも、今の私は全然その様な事になっていない。その自覚がある。


 この建物内部の明かりはアンデッドの動きを鈍らせるに充分なモノだ。


(確かめねばならん事が一気にあれもこれもと・・・増え過ぎだ!どうしろと言うんだ!)


 今現在進行形で、あれもこれもと疑問に質問、誰かに聞きたい、教えて欲しい事が山ほど増えていっている。


 その事だけで頭の中が一杯になって思考は鈍っていく一方なのだが。


(長年鍛えてきた体捌きや戦闘勘などが自動と言える程の反射で働いてくれるのは有り難い)


 飛来する魔法は最初避けていたが、恐らくは直撃しても別段のダメージにはならない事を悟って今では軽く手で払い落す事態だ。余裕があり過ぎる。


 この様子に暫くして私に対しての攻撃が一切入らない事での危機感から仕切り直しとしたいのか「冒険者」らしき者たちは一気に引いた。


 ここで私は機がやって来たと思った。


(外に出る。・・・あそこか)


 私は一気に走り出した。人が側に近寄るだけで自動で開いたり閉じたりしていた薄いガラスの元に。


 当然にこの突然の私の動きに驚いた者たちが咄嗟に妨害を仕掛けてこようとしてくるけれども。


(私の踏み込みに届くと思ったか?甘いぞ?と言うか、これ程に透明度の高いガラスをしかも魔道具に組み込んで人の出入りに合わせて自動で開閉するなど、どれ程に技術発展した国なのだろうか?)


 一瞬の隙、包囲の隙間、そこを私は突破する。そうして飛び出した先に見たその光景に私は硬直させられた。


 何が今後出て来ようとも驚かんと、そう覚悟を決めていたのに、ソレを打ち壊して来た目に入って来る衝撃の光景、その事実に膝を降りそうになる。


(何だこの色様々な鉄の箱?車輪がついていると言う事は馬車か?いや、引く馬は何処だ?違う!そうじゃ無い!コレが高速で走るのか!と言うか!周囲のこのどれもこれも高い建築物はどう言った事だ!?人の多さもそうだが、着ている服の生地が上等な物ばかりだと?あ、その持っている道具は何だ?光を発する板?誰も彼もがソレを見るのに下を向きながら歩いている?周囲へ何らの興味も無さそうにして?)


 視界に入って来るその何もかも全てが、私の頭をガッツン、ガッコン、バッキバキにぶっ叩いてくる。


(・・・えぇ?何だ、ここぉ・・・もう、いい、誰か、誰でも良い、た、助けてくれぇぇ・・・)


 これでも騎士団では団長を務めていたのだ。自らの精神力、根性は人一倍以上だと自負していた、つもりだった。しかし。


 私が今置かれている現実、現状への情報量の重さにとうとう心が折れた。

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