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第36話

 何でアンデッドナイト何かと一緒にダンジョンに潜らねばならないのか?


 その疑問が常に私に纏わり付く。


「ねえ、私たちって要らないんじゃない?何の意味があるの?」


 私たちは二階層目に入ってコボルトと遭遇、コレを殲滅した。数は十体。


 だけど私たちは僅かですら手を出しちゃいない。全てはアンデッドナイトが片づけた。一瞬で。


 どうやって倒したのかも意味不明な程の高速で戦闘は終了している。見ていたはずなのに、見えていないとはこの事だ。


 目にも留まらぬ速さと言うモノをこんな所で体験するとはこれまで思いもしてこなかった。


「えー?良いじゃん良いじゃん。別に危なくないって分かった事だしー?このまま魔石を拾う係で良くね?」


 楽な仕事だと口に出すマリエはアンデッドナイトに対してもう警戒など一切していない。


 昔から馬が合ったメンバーでこうして冒険者になり、これまで上手くやって来れたけど。


「危なくない、何て事は誰が保証したってのよ?もしかしたらそいつが暴走でも起こせば私たち、きっと命が無いわよ?」


 私は仲間の言う「安全」を否定する。けれども。


「えー?アンちゃんは大丈夫だよー?心配し過ぎイチカってばさー。」


 何時も能天気なヒジリはこういう時の勘に限って当たる。本当に、嫌だ。


 それと、アンデッドナイトだからと言ってそのあだ名を「アンちゃん」などと付けるネーミングセンスの無さに気が抜ける。


「私は確かに自棄になって何処までだって付いて行ってやると啖呵を切ったわよ?けど、命が危うくなればあんた等の事を見捨ててでも自分だけは生き残らせて貰うからね!」


 ここで最低限の所はハッキリさせておきたい、そう思ってちゃんとその点を言葉として吐き出して伝えるけれど。


「ふふふ、イチカはウチ等を見捨てる宣言、本気籠もってるわね。」


 私の言葉をしっかりと本気だと理解はしてくれたであろうエミコは、しかしその言葉の調子は軽い。笑っている。


(これまでやって来て奇跡的に表面に現れてこなかっただけで、私と三人の相性は良かったかもしれないけど、根底の部分でこれ程までに致命的に合ってない、熱量も違った。もっと早く気づけていたら今みたいな状況にはなって無かったはずなんだよなぁ)


 常識、その点においてここで浮き彫りになった形だ。


 アンデッドナイトなんてバケモノが出て来ても、それを他人事として遠目で見ているだけならここまでにはならなかったと思う。


 だけどもヒジリが気に入ってしまって、それだけだったならまだ問題は無かった。


 そこから踏み込んでアンデッドナイトと接触してしまって、そこでもう詰んだ。


 あれよあれよと言う間に今だ。本当に「何でこうなった?」と、答えの出ない問いを脳内で繰り返す羽目になっている。


「ねえ、またコボルト出てきているけど、アンデッドナイトに任せて良いのよね?」


 またもや出て来たその数を見て不安に駆られる。だって多少広い小部屋に入り込んだと思えば、そこに密集しているコボルトが視界に入るのだからしょうがない。数はパッと見で30を超えるか。


 アンデッドナイトがこの世のモノとは思えない程に強いのは理解している。


 けれども万が一にもこの数のコボルトに私たちが囲まれて襲い掛かられたら、大怪我を負わされる危険性があるのだから心配しない訳に行かない。


 でもその心配も瞬時に杞憂に終わる光景が目に入って来るのだから嫌なモノだ。


 アンデッドナイトが極々自然に一歩を踏み出したと思えば、滑らかに腰の剣を抜き放って横一文字、それだけで終了だ。終了してしまった。


 何が起きたのか何て分かりはしない。分る訳が無い。


 恐らく三十体ちょっと居たハズの密集していたコボルトが全て、一匹残らずに体が上下に分かれてその後に消滅するのだから理解の範疇外。


 綺麗サッパリコボルトが消えた後には魔石が美しい甲高い音を立てて地面に落ち転がるのだから、背中が薄ら寒くなる。


(完全にどう見ても剣刃が届いていなかった!届いて無かったでしょうが!・・・あーあ、コレが理不尽、不条理ってヤツなのね・・・ハハハ・・・笑いも乾くわ、こんなん)


 アンデッドナイトのその一振りは完璧に空を切っただけだ。


 なのにその結果が余りにも怖ろし過ぎて私はもうこれ以上常識やら何やらを破壊されたくはないと心の中で盛大に叫ぶ。


 けれども他の三人がスゲーだの、ヤバイだの、つよつよだのとはしゃぐので逆にソレで私の心は冷静になっていく。


(こんな一撃をもし大勢の冒険者に対して放たれていたら?)


 私はそれ以上想像するのを停止した。だって。


(そんなの結果が分かり切っちゃってるからね!リアルスプラッタなんて勘弁してよ!)


 アンデッドナイトのどう受け入れようとしても「馬鹿」みたいな強さに私は再び冷静さを崩して心の叫びが漏れ出そうになった。

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