表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/37

第35話

 引かれた椅子に座ったは良いが、この後の展開はどうしようかと私は悩む。


 取り合えず敵意は無いと示す為に剣は預けたが、しかしその後に何故か私を置き去りにして何やら周囲がドヤドヤとし始めて困ってしまった。


 対面した少女がこの中では一番立場が上なのだと理解してよくその身なりを観察していたが、どうにも向こうは勝手に何かしらを私へと話しかけて来るのでソレを手を前に出し制止したのだが。


(結局は言葉の壁が厚過ぎて交流が止まるな。積極的にもっと私から動いた方が良いか?しかし、剣を預ける以外に何をすれば良いだろうか)


 何せここは私の祖国とは何もかもが違う。そう、常識が大いにズレている可能性が高いのだ。


(誠意を見せる、友好の証を立てる、贈り物をする、誠実に対応する、これらは意思を相手に示せる共通した価値観があるから成立する。先ずはこの場で相手の文化や礼儀を知る所から始めなくてはならないが、ソコもやはり言葉の壁が大きいな)


 行動で示すにしても相互理解が出来ていなくては誤解しか生まないだろう。


 人は思い込むと言った傾向が大きいものだ。自らが「こうだ」と思ったら視野狭窄が始まり別の可能性などを思いつき難い状態になる。


 そうすると間違っていても「合っている」と、相手に確認も取らずに勝手な解釈で物事を進めて決定的なすれ違いを起こす。


(騎士団に居た頃はそう言った事が茶飯事だったな。貴族出身の騎士たちは自分勝手な者が多かった。団長の地位に立った時にはソレを必死に纏め様としても私の居ない所では陰口を叩かれ続けていたからなあ)


 昔の事を思い出して少しだけウンザリした気分が滲む。


 しかしソレを直ぐに引く。今はそれ所では無いから。


(しかし、この冒険者、本当に私にずっとくっ付き続けて来るのは何故だ?ふむ、ここで何時までも言葉が通じないと悩んでいる時間が馬鹿らしくなるな)


 その冒険者の少女?と言って良いのか、見た目が幼いので今何歳なのかが判らないが。


 ニコニコと嬉しそうに私に抱き着いて来ていてどうにも私は妙な心持になる。


 まるで小さい子供を持った父親の様な気分だ。


(私は結婚もした事が無いし、しかし子供は嫌いでは無い。扱いに困るが、まあ、この場に居続けるのもこれ以上はどうやら時間の無駄の様だ)


 幾ら向かいの相手から語り掛けられ様とも私にはその言語が理解できない。


 そして私も祖国語を話そうにも「うがぁ」とか「がぁ」とか「うおぉ」とか唸るしかできず。


(仕方が無い。ダンジョンに行こう。そこでまたあの青く煌めく小石を得てこちらに持って来れば一定の信頼は得られよう)


 結局は辿り着く結論がそこ。行動で示す。言葉が通じ無ければ会話は成立させられない。


(さて、お暇するとしよう。ああ、警戒されてしまったな。それはしょうがないか)


 生者から忌避されるアンデッドであるからして、私のホンの些細な行動一つにも警戒されるのは仕方の無い事だと納得しかない。


 席を立った私は周囲のそんな反応を無視して立派な髭を生やした人物に渡した剣に手を伸ばし掴む。


 相手はその時に一瞬だけ警戒を滲ませたのだが素直に剣を手放してくれた。


(さて、私の出来る事は一つ。人助け、ソレと石集めか)


 地味な事でもこれを繰り返せばきっと私へと向けられる敵意は減少させられるだろう。


 完全に無くす事は不可能なのは承知している。しかしこの様な面接紛いの事態になっているのだから、向こうは少しでも私の事を知ろうとしてくれているのは理解した。


 ならば後はもうこちらが行動で示し続けるだけで向こうも解ってくれるだろう。


 まあそれは勘違いをされていたとしても否定も修正もし難いのだが。


(それと、このダンジョンの最下層の攻略も視野に入れておいても良いか。まあどれだけの深さが有るかも分からんし、魔物の強さも知らんのだがな。どうせ睡眠も食事も不要になってしまったこの身体だ。どうにでもなるのだろう)


 余りにも未来の事を楽観している事に今更に自分自身でも少々驚く。


 昔の自分であったならばこの様な無計画な事を思いもしなかったハズなのだ。


 しかし恐らくはこの様な考えになる原因は分かっている。


(解放感、か。私の事を誰一人として知らない地で、この様に人も已めてしまったこの身だ。騎士団の団長と言った立場もこうなってしまってはな。何もかもが「無い」、肩の荷を下ろした感じで気持ちが軽くなっているのだろうな)


 そんな考え事をしながら部屋を出る。誰にも止められられたりはしなかった。だがしかし。


(で、君ら四人は付いて来るのか。まあ、拒絶はしないが。何処まで付いて来る気だ?はぁ、コレもしょうがない、と言って良いモノか)


「おいいい?私はもうアンデッドナイトと行動を共にしたく無いって言ってんのに何でアンタらは私の意見をガン無視して付いて行ってんのよおおおお!?ぐおおおお・・・もう自棄よ!何処まででも付いて行ってやるわよ!何なの!?何なのよ!」


 一人だけ喚いているのだが、ソレを私は極力気にしない事にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ